「G430」シリーズの純正シャフトは充実のラインナップで多くのプレーヤーをカバーしていることはすでに検証させて頂きました。とくに「TOUR 2.0 CHROME」と「TOUR 2.0 BLACK」の2モデルはプロ・アスリートゴルファーまで対応できるシャフトとして評価も高いですが、さらにプラスαのパフォーマンスを求めるアスリートゴルファーに向けてカスタムシャフトを選んでみました。
前回同様、シャフトを選ぶ前にヘッドの性能を十分に理解する必要があります。「G430 LST」はヘッド体積440ccと「G430」シリーズでもっともコンパクトなヘッドです。クラウン部分にカーボン素材を採用して重心を低くしバックスピン量を低減できる設計を採用しています。
左右方向やネック軸周りの慣性モーメントは「G430 MAX」よりは小さいですが、他社のプロ・アスリートモデルのヘッドに比べるとその数値は十分に大きく、深めの重心深度とともにピンのヘッドらしく安定性も重視して設計されているのがわかります。
今回も多くの選択肢がある中でアスリートゴルファーがシャフトチューニングを体感しやすいモデルを選ばせて頂きました。
左を気にせず叩きたい人はフジクラ「VENTUS BLACK 60S」
先日リリースされ3月に発売を控えている「TR BLACK」も興味深いですが、今回は現在発売されて「VENTUS BLACK」をピックアップしました。
「VENTUS」シリーズは独自の「VELOCORE」テクノロジーにより、プロのハードなインパクトでも対応できる、当たり負けのないブレに強い設計のシャフトです。
その中でも「VENTUS BLACK」は手元側から先端部分にかけて全体が硬く、ツアープロの使用率がいちばん高いモデルです。そんなプロ用でハードな印象の「VENTUS BLACK」を「G430 LST」とのシャフトマッチングで選んだ理由は何か。
もちろんハードなシャフトなのですが、「G430LST」がもつ42ミリを超える長めの重心距離と、44ミリ以上ある深めの重心深度がもたらすシャフトに対しての影響です。
ヘッド後方に搭載してある重めのウェイトの効果もあり、硬いシャフトでも体感的に意外と硬く感じずに気持ちよく振ることができるのです。
前作の「G425LST」と「VENTUS BLACK」との組み合わせでボールのつかまりが悪かったという方でも「G430LST」ならつかまり感が出て、気持ちよく操作することができ、ドローやフェードの打ちわけも可能です。他のヘッドで感じた「VENTUS BLACK」のハードなシャフトの印象が少しマイルドに感じられると思います。ボールの吹け上がり等もまったく問題ありません。
前提としてある程度のヘッドスピードやスウィングパワーが必要ですが、「 TOUR 2.0 BLACK」でも物足りないという方や、バックスピン量を更に低減したいという方、自分のスウィングで左を気にせずにしっかりと振りたい方等は試してみる価値があると思います。
スムーズな切り返しを生む、三菱ケミカル「TENSEI PRO Orange 1k 60S」
海外の多くのトッププレーヤーに支持されているシャフト、「TENSEI」。「TENSEI」とのマッチングといえば、かつて人気だったピン「G410 LST」と「TENSEI CK PRO Orange」シリーズとの組み合わせはなかなかのものでした。
カウンターバランスの「TENSEI CK PRO Orange」で、重いヘッドの「G410 LST」をフィニッシュまで一気に振り抜けるということで人気のマッチングとなりました。
「G430 LST」のヘッドは「G410 LST」よりも標準的でやや軽めの重量ですが、高いモーメントを持っているのでカウンターバランス設計のシャフトとはマッチングが良いと思います。
2022年3月に発売された「TENSEI PRO Orange 1k」は「CK PRO Orange」をベースに先端剛性を高めたシャフトです。手元調子系のシャフトを特集した時にシャフトについては検証させて頂きましたが、今回は60Sのシャフトとのマッチングはどうかを検証してみたいと思います。
「G430LST」と組み合わせると「VENTUS BLACK」とのマッチングと同様にマイルドな印象ですね。他のヘッドに装着して打った時の印象よりもほんの少し軟らかく感じられます。
手元調子らしく、切り返しのタイミングが取りやすくスムーズにインパクトエリアにヘッドを導いてくれます。カウンターバランス設計の効果で「G430LST」のヘッドでも意外とスピード感のある振り心地でフィニッシュまで振り抜いていけます。
インパクトではフェースをスクエアに当てやすく、先端部分の高い剛性で、打点ブレを感じずに厚く当てていけます。ボールの吹け上がりもなくヘッドの持つポテンシャルをさらに高めてくれる非常にいいマッチングだと思います。
スピンが減って強い球、EDGE WORKS「 EG630 MK」
定番のシャフト以外のマッチングも検証してみました。
いくつかの候補の中から今回選んだのはEDGE WORKS(エッジワークス)「 EG 630 MK」です。
エッジワークスは設立が2020年のカスタムシャフトメーカーです。いわゆるシャフトフィッティングがメインの「ゴルフ工房」を中心にファンが増えています。
2022年に販売されたモデルがこの「EG 630 MK」。60グラム台のシャフトでS、SX、X、 XXの4フレックスが用意されている中調子のシャフトです。
最近はカスタム系のシャフトメーカーもナショナルブランドのスリーブ装着式大型ヘッドへの装着も考慮した新製品のリリースが目立ってきていますが「EG 630 MK」もそのひとつ。
エッジワークスのシャフトの特長は高い推進力。バックスピン量を低減してブレの少ない強弾道を実現してくれます。重さは66グラム、シャフト振動数は266cpm前後でしっかりとした印象ですが、手元側の剛性も高すぎることなく、アスリートゴルファーなら無理なくダウンスウィングに入りやすいシャフトに仕上がっています。
シャフトのどこかが極端に動くようなこともなく、スムーズなしなりでヘッドをインパクトエリアに導いてくれます。先端部分の挙動が安定しているのでインパクトは厚く、エネルギーロスがなくボールにしっかりとパワーを伝えてくれる。
「G430LST」はロースピンヘッドですが、ピンらしい安定した弾道を実現するために適度にスピンが入る設計になっていて、扱いにくさを感じるほどのロースピンではありません。そのため入射角や装着シャフトによってはバックスピン量が多めの方も出てきますので、中にはもっとバックスピン量を低減できたらと思うゴルファーもいるでしょう。
ターゲットに対してブレが少ない、推進力のあるロースピンボールが打てるのでランを加えたトータル飛距離アップも期待できるマッチングになるでしょう。
「G430 LST」は人気ヘッドですので、人と同じシャフトだとつまらないというこだわりのシャフトマッチングを求める方にオススメしたいですね。