ヘッドが大型化されスイートエリアが広がったことで、ねじれの少ない先端剛性の高いシャフトが求められるようになり、誕生したのがフジクラ「ベンタス」シリーズ。高初速で低スピンを実現し飛距離を最大に引き上げるとツアーでも大人気となった。
第2世代の「ベンタスTR」シリーズでは3Dモーションキャプチャーの分析と、ツアーからのフィードバックでねじれと曲げ剛性を高めた3モデルをラインナップ。これまでツアープロや欧米でしか手に入れられなかった「TRレッド」「TRブラック」の国内販売がリリースされた。そこで、東京・市ヶ谷にある4プラスフィッティングラボのフィッター吉川仁がテーラーメイド「ステルス2プラス」(10.5度)のヘッドを使って試打し、トラックマンで計測。ヘッドスピードは48m/s前後でシャフトは6Xを使用。
3モデルに共通しているのは全体的に剛性をアップさせていることで、締まりのあるしなり感と打点のバラつきを最小限に抑えてくれる安定性。トルクもベンタスシリーズよりもわずかに少ないので、フレックスは慎重に選びたい。今回は60グラム台のXフレックスで試打したが、しなりを感じるにはヘッドスピード48m/s前後は欲しいところ。45m/sであれば6Sがマッチするくらいの硬さやハリが感じられた。
それぞれ6X、長さ45.5インチで組み上げたスペックは下記の通り
「ベンタスTRブルー」バランスD3.9 振動数269cpm 重量319グラム
「ベンタスTRブラック」バランスD3.2 振動数280cpm 重量317グラム
「ベンタスTRレッド」バランスD2.7 振動数277cpm 重量320グラム
安定性を重視した「ベンタスTRブルー」
「先端から手元まで、それほど極端な剛性の強弱がなく、全体がしなる性格。タイミングがとりやすく中弾道でニュートラルな性格ですが、ベンタスブルーと比べると全体の剛性はアップしています」
シャフトの頼りないしなりは必要ない、自分の力でしっかりと打ちたい、つかまりすぎは嫌がるプレーヤーには相性抜群のシャフトになると吉川フィッターのインプレッションだ。
トラックマンの数値を見てみると、打ち出し角11.5度と3モデルの中で中間の数値を表し、スピン量は3モデルに共通する低スピンも見て取れる。
低弾道で低スピン「ベンタスTRブラック」
「ベンタスブラックと比べて手元の剛性は高く先端から中間は低いので、TRになってつかまりはよくなっています。ハリはあるものの少ししなりを感じやすくなっていて、弾道は低弾道でスピン量も少ないモデルです」
トラックマンの数値を見ても打ち出し角は11.2度、スピン量2210rpmと低弾道であることが見て取れる。入射角のアッパー軌道が強く球が上がりすぎてしまうプレーヤーにはマッチすると吉川フィッター。
「ベンタスTRレッド」
「ベンタスTRレッド」は昨年後半に上田桃子が実戦投入し話題になったモデル。ドローヒッターの上田が選んだ特徴は?
「先端から400ミリの部分の数値が低い、つまり先端は動きやすい。それでいて手元の剛性は3モデルの中で最も硬い。手元と先端で極端な差をつけてあるので先端が走って球をつかまえてくれる、球を上げてくれる性格を持たせています。なのでドローヒッターが安心して右に打ち出せて引っかからない、そういうシャフトに仕上がっています」
打ち出し角は3モデルの中で最も高い12.5度、スピン量1643rpmと低スピン。3モデルの中では一番つかまりがよく高さも出せた。
まとめると、「TRブルー」は全体しなりでニュートラルな性格、ドローやフェードを打ち分けるゴルファーにマッチしそう。「TRブラック」は中間がしなり、ベンタスブラックよりもしなりを感じられ弾道は低い。「TRレッド」は高弾道でつかまりが良く、ドローヒッターが安心して右に打ち出せるモデル。
大型ヘッドの性能を最大限に生かし当たり負けしない剛性を持つ「ベンタスTR」の3モデル。フレックスと重量を合わせればドライバーの方向性に改善がみられるに違いない。
取材協力/4プラスフィッティングラボ&ゴルフサロン