2021年の開幕戦で優勝し夏場までに4勝を挙げ、稲見萌寧選手と賞金女王争いを演じた小祝さくら選手ですが、終盤に失速しシーズンを終えました。そのオフから吉田直樹コーチに師事し、スウィングを大幅にチェンジし22年シーズンは開幕しました。
改造内容は、ドローの曲がり幅や出球が安定していなかった点をコンパクトなトップとフェースの開閉を少なくすることで改善し、ドローからフェードへと持ち球も変えていました。その成果は5月末の「リゾートトラストレディス」で優勝、その足で乗り込んだ「全米女子オープン」で日本勢最上位の20位タイで終えたことでも表れました。その後10月の「スタンレーレディス」で逃げ切って2勝目を挙げました。
スウィングの改善点を見てみると、ダウンスウィングの早い段階でスウィングプレーン(インパクト時のシャフトに合わせて引いた線)にクラブが乗ってきます(画像A左)。画像A右のインパクト後のクラブの抜ける位置を見ても線の近くに抜けていることからインサイドアウト軌道は強くないことが見て取れます。
オフにどんな課題に取り組んでいるのか、吉田直樹コーチに話を聞くと、これまで取り組んできたショットの安定に加えて、飛距離アップも視野に入れているといいます。
「地面反力が使えていないところがあるので、もう少しそこを引き出せたら飛距離アップとスウィングの安定につながると思っています。この後アメリカで10日間の合宿に入るので、試しながら開幕に臨みたいと思います」(吉田直樹コーチ)
正面からスウィングを見てみると、左腕が地面と平行になる位置で回転力のピークを迎え、シャフトが地面と平行になる位置で縦方向(地面反力)のピークを迎えることが世界のトッププレーヤーと共通していますが、小祝選手の場合は、画像Bの真ん中のときにもっと左足を踏み込んで地面からの反力を得て、回転力へと変換することができる、と吉田コーチは分析しているようです。
地面からの反力を得るためには、その手前で沈み込む動作が必要になるので、切り返しから一度沈み込むように前傾角を深くするような練習をすることでしょう。球筋もフェードにこだわるのではなく、ニュートラルなスウィングプレーンであれば、その週の調子に合わせてどちらか打ちやすい球筋を選べるようになると吉田コーチはいいます。
それともう一つ、22年には小祝選手にとって大きな門出がありました。それは、これまで帯同していた母ひとみさんから独り立ちしたことです。ひとみさんは、プロテストに合格したその日も一緒にジョギングをしたほど、長い練習時間やトレーニングにもずっと付きっきりで親子二人三脚でツアーを転戦していました。いつもツアー会場で、ひとみさんとしゃべるのを楽しみにしていた私も寂しい限りですが、誰しも親離れする時期がいつかは訪れるものなのでしょう。自立しようと一歩を踏み出した小祝選手は、成長した姿を家族に見せるシーズンになりそうですね。
黙々と朝から日が暮れるまで練習するという小祝選手。開幕まであと1か月を切りましたが、初戦でどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。
写真/大澤進二