2年ごとにモデルチェンジを繰り返すタイトリストの「プロV1」、「プロV1X」。新しくなって進化したポイントは距離や左右のバラつきを少なくして、より安定した弾道になった、というアナウンス。早速、インドアの試打計測とコースでのラウンドでその感触を確かめてみた。
その前に「『プロV1』より『プロV1X』のほうが飛ぶんでしょ?」とはよく聞かれるが、答えはインパクト条件によって違うということ。インパクト条件とは、入射角、打点、軌道、フェース向きやインパクト時のロフト角などプレーヤーが持つ傾向のこと。極端ではあるが、ドライバーの入射角がダウンブローでスピン量が多いタイプならスピン量の少ない「プロV1」の方が飛ばせるだろうし、インパクトロフトが立ち気味で高さが出せないプレーヤーなら高さの出る「プロV1X」の方が飛ばせるといった具合だ。
「プロV1」と「プロV1X」を比較して再確認しておくと
スピン量 プロV1<プロV1X
弾道の高さ プロV1<プロV1X
打感の柔らかさ プロV1>プロV1X
勘違いしがちなのは「プロV1」のほうが打感が柔らかいがスピン量は少ないということ。ただそれもロングゲームにおいてであり、グリーン周りなどのヘッドスピードの遅い場面ではその差はほとんどない。勘違いの原因は「プロV1X」が発売された当初は、確かに「プロV1」のほうがスピン量が多く「プロV1X」のほうが飛ぶ、といった傾向があったこと。しかし、2017年モデルからそれぞれのキャラクターが明確になり現在も踏襲している。
飛距離に関してはインパクト条件、つまり人によって違うということであるし、どちらが自分のプレースタイルにマッチするのか、スコアに貢献するのか、という観点から選ぶことが大切であることは言うまでもない。
実際にカメラ式の計測器であるGC4を使って5球打った平均値で比べてみると画像Aのようになった。打ち出し角や最高到達点は「プロV1X」の方が高くスピン量も多いが、飛距離の差はほとんど感じられなかった。球が上がりにくいプレーヤーやスピン量の少ないプレーヤーには「プロV1X」が向いていると言えるだろう。
新しくなった「V1」「V1X」の進化したポイントは、距離や左右のバラつきが少なくなったとはタイトリストからのアナウンス。ただしマシーンではないので、筆者にそこまでの差は感じられなかった。
しかし、21年までは「プロV1X」、21年以降は「プロV1」を使用してきた筆者が、「プロV1」でグリーンエッジまで155ヤード、ピンまで164ヤードを7番で打つと、右からの軽いアゲインストを感じてギリギリバンカーを越えるか入るかという当たりであっても、しっかりグリーンに着弾し、ピン手前につけられた。「V1X」に比べると少ないスピン量、弾道の低さが風に対する強さを感じさせてくれたし、前後左右のバラつきが少なくなったという進化した点も感じられた気がした。
同じ場所から「プロV1X」で打ってみると「プロV1」より一段高い弾道で、落ち際に少し風の影響を受けながら静かにグリーンに着地。その飛び様は、「やっぱりV1X」もいいな、と改めて思わせてくれた。ドライバーでは最近の低スピンヘッド性能の助けもあって、高弾道のいわゆるビッグボールで飛ばせるし、距離も稼げていた。フィニッシュのドヤ顔に同伴プレーヤーから突っ込まれてしまったほどだ。
3層構造の「プロV1」と4層構造の「プロV1X」では中身の構造もディンプルの形状もまったくの別物だが、コアの中心から外にかけて硬さをグラデーションのように変化させている点は共通している。その構造や素材の違いから打感の違いやスピン性能、弾道の高さの違いといったそれぞれのキャラクターが作られている。
ボールにもルールで反発係数の上限は決められているから、スピン量を減らして飛距離的には貢献しながら、ショートゲームではスピン量を確保するという相反する性能を、どのボールメーカーも突き詰めている。
数世代前まではモデルチェンジしたボールと相性が悪く、2世代前のモデルを使用しているプロもいたようだが、最近はそんな話は聞かなくなり、新モデルを投入して優勝するニュースも目にするようになった。それは、クラブの進化とボールの進化の方向性が同じ方向を向いているからだと思う。その意味でも新しくなった「プロV1」「プロV1X」をいち早く試してみることをおススメしておきたい。