ベテランゴルファーなら、よく耳にしたクラブの「バランス」。現代のクラブは、バランスをそろえるのか、そろえなくてもいいのか、ギアオタクでクラブフィッターの小倉勇人が改めて教えてくれた。

クラブフィッターの小倉です。今回は、お客様からよくいただくご質問を題材にしたいと思います。それはバランスです。D1とかD2とかいうあれです。

クラブの長さ、総重量に対して、どれだけヘッドが効いているかを表したもので、スウィングした時の振り心地に影響を及ぼします。A0が計測できる値で最も軽く、A1、A2と数値が大きくなればなるほど、ヘッドが効いている、つまりヘッドが重いことを表します。A9の次がB0になり、それを繰り返していきます。一般的な男性モデルのドライバーだとD0からD4ぐらいの間に収まるモデルが多いですね。

このバランスに対して、お客様から、「ドライバーからウェッジまでそろえたほうが良いの?」というご質問をよくされます。バランスを気にする方は、ゴルフ歴の長い方に特に多く、バランスを振りやすさのひとつの基準としてみているようですね。結論を申しますと、「多少は気にしたほうが良いけど、そんなに重視することでもない」といった感じです。

バランスの重要性は、クラブが進化するほど下がっていると言って良いでしょう。昔は、ヘッド、シャフトとも技術的に極端な差をつけることが難しく、振り心地に対するバランスの重要性の割合は大きかったのですが、最近のクラブは、重量差やヘッドの重心位置、シャフトの剛性感の違いなどで、クラブごとの振り心地の多様性というか、差が大きくなっています。

つまりバランスの重要性が下がったわけではないのですが、バランスよりも重要視しなければならないポイントが増えてきているのです。特にシャフトは、モデルの選択はもちろん、同じモデルでも重量、キックポイント、フレックスと選択の自由が一気に広がりました。シャフトはクラブの振り心地に大きく影響する、総重量、キックポイント、フレックスを調整できる重要なパーツ。これらの項目を無視してバランスだけを合わせても他の要素によって起こる影響のほうがはるかに大きいでしょう。

私は、クラブセッティングの基本として、総重量のフロー、シャフトの特性のマッチング、そしてバランスといった優先順位で考えています。ヘッドの特性などは、使い手の意見を聞いてケースバイケースで変わってきますね。

ただあまりにかけ離れたバランスはさすがにだめですよ。何か大きな意図があって軽くしたり、重くしたりするのはよいですが、特に意図がないのに、アイアンやFWがD1~D2なのにドライバーだけD8とかになっていると、他のクラブとの振り心地に大きな差が生まれ、ミスの原因になります。中古モデルは、前のオーナーががっつりチューニングしていることも多いので、中古で買った場合は、他のクラブとバランスがかけ離れていないかチェックすることをおすすめします。

画像: 「総重量のフロー、シャフトの特性のマッチング、そしてバランスといった優先順位でセッティングの基本を考えています」(小倉)

「総重量のフロー、シャフトの特性のマッチング、そしてバランスといった優先順位でセッティングの基本を考えています」(小倉)

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