2023年のLPGA初戦は約一か月前に過去2シーズンの優勝者30名のみが出場できる「ヒルトン・グランド・バケーションズ・オブ・チャンピオンズ」から始まっています。その初戦を5位で終えた畑岡奈紗は今大会(ホンダLPGAタイランド)の初日を7アンダーの首位タイを筆頭に、気になる日本勢は5アンダー9位タイに笹生優花、3アンダー28位タイにアマチュア馬場咲希、2アンダー38位に渋野日向子、1アンダー48位タイに古江彩佳と岩井明愛、2オーバー70位タイに岩井千怜となっています。
ここで注目するのは、2ヵ月前から青木翔コーチのもとでスウィングを縦振りにし新しくスウィングを作り直しているという渋野日向子選手。中継を見る限り、明らかにスウィングに変化は見られますがショットを大きく曲げ制御不能になるようなことはありませんでした。まだまだ改善途中だと思いますが、昨年11月の「TOTOジャパンクラシック」のスウィングと比べてみました。
スタンスの向きや姿勢も変化が見られますが、何と言ってもトップの形に大きな変化が見て取れます。フラットでターゲットよりも大きく左を向いていたシャフトの向きは、高くなりほぼターゲットと平行に、そして深くなっています(写真A)。
ダウンスウィング(写真B)では、浅い入射角でインサイドから下りて来ていましたが、右前腕とシャフトが重なるニュートラルな角度に変わっていることが見て取れます。
インサイドアウト軌道の強かったフォローはインサイドに抜け、イントゥインの軌道に変化しています。トップを高くし縦振りを意識することで、インサイドアウト軌道からインサイドイン軌道へと文字通り軌道修正(写真C)をしています。
その効果はインパクトゾーンが点から線になることが挙げられますが、ある程度上から入れることができる入射角を確保することで地面にあるボールを打つアイアンショットでのメリットも考えてのことでしょう。
例えば、左足下がりのライやラフからではボールに直接コンタクトしやすくなりますし、スピン量も確保しやすくなります。特にメジャーのセッティングでは、ショットのバリエーションを求められる場面も多くなるはずなので、これまでのドロー一辺倒ではなく将来的にはフェードを打つことも視野に入ってきます。
そのためにも強すぎたインサイドアウト軌道からニュートラルな軌道への変更が青木コーチと渋野選手の目指す方向性として一致したのでしょう。
なにより、フラットなトップに変化した21年の開幕戦のときよりも、23年の新たなスウィングで臨む渋野選手にとっての開幕戦の表情は、同じように不安を抱えているとは思いますが、まったく違って見えます。予選落ちのない4日間大会なので日ごとに手ごたえは増していくことでしょう。
写真/大澤進二・姉崎正