今回は、家の中でメディシンボールやインパクトバッグ(代わりに布団やクッションでもOK)にクラブを当てるドリルだが、誤解してはいけないのは、叩くパワーを鍛える筋トレとは主旨が違う。
「そうなんです。このドリルを繰り返して、スウィング中はクラブを“押す”のではなく“引く”という感覚を身につけましょう。クラブを逆さまにして片手(右手)で持ち、テークバックをして切り返してインパクトを迎える。そのときに、グリップ側をメディシンボールにぶつけます。グリップを引っ張るように始動して、切り返しでもグリップを引っ張る。スウィング中は常に体が先行して、遅れてくるクラブを引っ張り続けるんです。それが重力や慣性といった、クラブの重みを生かしたスウィングと言えます。そのことを意識しながら、メディシンボールを叩くドリルをしましょう。クラブを引き続けて振る感覚をつかむと、スウィングが安定してミート率がアップします」(原田コーチ、以下同)
NGなのは『押し込むインパクト』というイメージにとらわれ過ぎて“押す”と、クラブが蛇行しやすくなってしまうと原田コーチ。
旅行や出張のときに、荷物が入ったキャリーケース(キャスター付きのスーツケース)をコロがす格好をイメージしてもらいたい。片手で握ったハンドルが先行して、重いケースを体よりも遅らせて引っ張るようにコロがすほうが、スムーズに安定して移動できるはず。力を入れるのは動き出しでケースを“引く”ときで、コロがり出したら惰性もあるのでそれほど強い力はいらない。しかし、重いケースを体よりも前にして押しながらコロがすと、方向がブレやすくて動かしづらいし、余分な力が必要になる。
クラブを持ってスウィングするときも同じ原理だ。体のリードでクラブを引っ張るほうが、軌道がアバれにくいし再現性が高くなる。
「テークバックではベルトの位置まで体で引っ張れば、クラブが遅れてきます。そして切り返しでは、逆方向にクラブを引っ張ることによって、勝手に“コック”が生まれます。そのまま体が先行してクラブを引きながら当てれば、いわゆる“レイトヒット”になる。ロフトが立ったハンドファーストのインパクトですね。
さらに大事なことは、このようにクラブを“引っ張る”と、自ずとインサイドから下りてシャロー気味にボールへアタックしやすくなります。これが、クラブを“押す”とリキみやすくて、アーリーリリースになったり、右肩がかぶってアウトサイドから入ってしまう。ミスの元なので、皆さん気をつけましょう」
家の中でボールを打たずに取り組むドリルは、打球の行方に一喜一憂することなく“やりたい動き”“スウィング作り”にじっくりと専念できる。シーズンインになってコースへ出たときに、その成果が実感できるに違いない。