「試合の結果やスウィングを見ていて、本人的に分からなくなっていそうだなと思ってました。それで、そろそろ連絡が来るんじゃないかなという予感はあったところに電話がきました」
「彼女がコーチをつけずに1人でやっていくと決めたとき『何かあったらいつでも連絡しておいで』と送り出していることがあったので驚きはなかったです」
2020年の末、コーチと選手という関係を解消した2人。その後、昨年末まで連絡を取り合うことはなかったそうだが、予感めいたものが当たるあたりつながりの深さを感じる。
「関係解消っていうとバッサリ切れたみたいなニュアンスですが、別にトラブルがあったわけでもないし、2人で積み上げていたものがゼロになるわけでもないですからね。ただコーチとして以前のスウィングに戻すことは考えていません」
「トレーニングで身体が変わり、米女子ツアーでさまざまな経験をして、さらには彼女なりに新しいスウィングへの挑戦もあった。それらを全部なかったことにして昔に戻すのは不可能です。今の彼女の強みを生かして、イチからスウィングを作り直していくイメージです」
注目が集まる「高いトップ」
渋野にとって今年の初戦となったのはホンダLPGAタイランド。昨年までの低いトップが高くなり、その大きな変わりように注目が集まる。
「分かりやすい違いとしてトップの高さに目が向けられますが、カタチありきでスウィングを作っているわけじゃないんです。米ツアーで戦えるバックスピン量の多い高い球を打つ、長所である長い腕や自然と掌屈する特徴を生かすことを考えて話し合い、目指すものが見えてきました」
約2年の間に変化していたのはスウィングだけではなかった。
「以前は、言われたことを実直にやり続けていましたが、今は『どう打ったら変わるか?』、『なぜそうなるのか?』と聞いてくる。この2年で葛藤があって苦しんだことも多いと思いますが、自ら考える力がついているのは成長した部分だと思います」
渋野は初戦が始まるまでの2カ月、青木コーチのもとに週3日のペースで通い、1日4時間ほどボールを打ち続けた。プロテスト合格を目指してスウィング作りをしていた頃と比較すると量も時間も減っている。ただし、コミュニケーションを重ねながら質の高い練習を行い、短期間で戦える形に整えたのは2人だから成しえたのかもしれない。
青木コーチの次なる予感
スウィング改造について「まだまだこれから」と青木コーチ。アリゾナで行われる次戦までの短いオフも、2人でみっちり練習を重ねる予定だ。最後に、ツアーを転戦しながらスウィングを定着させることは可能なのか? と少し意地悪な質問をしてみた。
「難易度は異常に高い。でも、できるかできないかじゃなくてやるしかないんです。世界で戦うというのはそういうこと。さらに言えば、そう遠くないうちに優勝すると思っています。技術の高い選手はたくさんいますが、勝つかどうかは別の話。皆さんご存じようにしぶこは“持っている”選手ですから」
連絡が来るだろうという予感から3カ月余り。青木コーチの予感が当たる日を期待せずにはいられない。
※インタビューのつづき、アドレスからテークバック、トップからダウンスウィングの改造と変化について、いま発売中の週刊ゴルフダイジェスト3月21日号で独占掲載中です。