昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は「片手打ちドリル」がテーマだ。

O編 2月末に行われた、米女子ツアーのホンダLPGAタイランドに、教え子の馬場咲希さん出てたね。アマチュアながら、今季初戦で9アンダー34位タイは、いい成績だったんじゃない? 去年の秋頃に比べたら体も大きくなって、飛距離も出てたみたいだし。

坂詰 そうですね。実は、出発前は上半身と下半身がバラバラで状態がよくなかったんです。それであの結果は大したもんだと思います。

O編 調子崩してたの?

坂詰 いやぁ、このオフは、とにかく体重を増やして体力をつけることがテーマだったんで、ほとんどラウンドもしていないし、球もそれほど打ってなかったんです。だから、球を打つ量を増やして、連動性を出すようにって送り出したんですよ。そういう状態でもスコアをまとめてきたわけですから、やっぱり去年の経験が大きいんだと思います。

O編 全米女子アマにも勝ったし、プロの試合にもたくさん出たしね。ひと皮むけたって感じなのかな。

坂詰 油断はできませんけどね。去年は、試合に出すぎて体重落として調子を崩しちゃいましたから。今年は連戦を避けて、体調をキープして秋のプロテストに臨みたいですね。

O編 そういえば、試合中に馬場さんが練習してるところを見たら、片手打ちをしてたけど、あれはわきゅうの指示なの?

坂詰 いいえ、本人が考えてやってるんだと思います。

O編 そうなのか。片手打ちって、今やツアープロの世界じゃ定番のドリルじゃない。だから、わきゅうも自分の教えてる選手たちに、やらせてるのかと思って。

坂詰 全員に強制的にやらせるということはないですね。片手打ちって、目的によってやり方も変わってきますから。

O編 目的って?

坂詰 たとえば、ショットの質を高めるのが目的なら、クラブのリリースを抑えて、フォローまで手首の角度を変えずに打ちますし、アプローチの質を高めるのが目的なら、クラブをリリースしながら、バウンスを使うような打ち方もするわけです。

 また、左サイドで打つイメージを高めたいなら左手打ちを中心にやるべきだし、右手の使い方を直したいなら右手打ちをやります。そういう目的によって動きが変わることや、意識するポイントが変わることを理解していないと、練習の効果も上がらないんですよ。

O編 闇雲にやっても意味がないということね。ちなみに、アマチュアゴルファーに、片手打ちをやらせることはあるの?

坂詰 う~ん。片手打ちで質のいい動きをするのは結構難しいからなぁ。あ、でも、グリップがあまりにも個性的な人にはやってもらうことがあります。

「変える」のではなく「変わる」ようにする

O編 技術的に難しいのに、グリップの悪い人にやらせるの?

坂詰 片手打ちをすると、グリップが自然にニュートラルになってくるんですよ。極端なグリップをしていると、片手じゃ上手く打てないわけです。それでも、片手で打とうとしていると、自然に打ちやすく感じる握り方を探るようになるんです。

O編 その結果、グリップがよくなるということか。

坂詰 はい。そんなにいい球が打てるようになるまできわめる必要はありません。腰から腰くらいの振り幅で、左手1本、右手1本で打ってみて、打ちやすい握り方を探り、その握り方でグリップする感じです。

グリップって、ちょっと変えるだけでも違和感が強くて、なかなか変えられないじゃないですか。だから、無理に変えるんじゃなくて、自然に変わるようにすることが大切だと思うんですよ。

O編 なるほどね。でも、自分のグリップに問題があるって、気づいていない人も多いよね?

坂詰 そうですね。その場合は、試しに片手打ちをしてみればいいと思います。それで、あまりにも打てなかったら、「あぁ、自分のグリップは、よくないのかもしれないな」と気づくことができるんじゃないでしょうか。

正直に言うと、ボクはグリップなんてなんでもいいと思ってるんです。ストロングだろうが、ウィークだろうが、体を使って打てるのであれば、それで球が曲がるわけじゃないので。だから、プロを教える場合、グリップを直すことはほとんどないんです。でも、手打ちの人(腕を振って打っている人)の場合、グリップが明らかに球筋に影響しちゃう。だから、あまりにもグリップが個性的なときには、慎重に直すようにしてるんです。

画像: 「腰から腰くらいの振り幅で、片手打ちをすると、自然にニュートラルなグリップに近づきます」と坂詰コーチはいう(Photo/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara)

「腰から腰くらいの振り幅で、片手打ちをすると、自然にニュートラルなグリップに近づきます」と坂詰コーチはいう(Photo/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月28日号「ひょっこり わきゅう。第9回」より

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