最終日、1打差を追ってスタートした山内は2、3番で連続ボギーと出だしで躓いた。それでも、6番パー4では得意のアプローチでチップインバーディを奪い徐々に挽回。14番パー4で再びチップインバーディを決め、ここでトップをとらえた。
首位タイで迎えた16番パー3では5メートルを沈めてバーディ。ついに単独首位に立つと、残り2ホールはきっちりパーをセーブし、終盤デッドヒートとなった比嘉真美子を振り切った。
山内はQTランク181位、実績十分(ツアー5勝)の比嘉も今季は同82位。ツアー出場もままならない立場の選手同士、珍しい顔合わせの優勝争いだった。
初優勝の重圧の中、山内が最終ホールでも何かを口にしていたのが印象的だったが、これは日本中が沸いたWBCを参考にしたもの。
「ガムを噛んでいる選手がほとんどだったので、口を動かすっていいんだろうなと思って、16番ではおにぎりを口に入れて、もぐもぐしたままティーショットを打ちました」
最終日最終組は今回が初めて。緊張感とうまく付き合いながら、18ホールを戦い抜いた。
背水の陣だった、山内は山梨学院大を中退して臨んだ2016年のプロテストに一発合格。ジュニア時代にナショナルチームの経験もある有望株だったが、プロ入り後はステップアップツアーではまずまずの成績を残すものの、レギュラーツアーでは実力を発揮できないシーズンが続いていた。
そんななか、昨年末のQTではクラブ超過によるペナルティを受けて失敗。
「今まではステップアップツアーには全部出られる順位だったので、ぬるかったというか自分の考えも甘かった。やるしかない状況に自分で追い込んでしまったので、そういった意味で強いメンタルでプレーできたんじゃないかと思います」
苦しい立場になって初めてレギュラーツアーでも本来の力を発揮できた。
大学進学、中退に加えて高校も香妻琴乃や柏原明日架を輩出した強豪校の日章学園から宮崎東高(通信制課程)に編入するなど、順調なキャリアを歩んできた選手が多いツアーの中では異色の経歴の持ち主。
低年齢化が進む近年の女子ツアーで26歳での初優勝は遅い部類に入るが、今後は周囲と一味違う遅咲きプレーヤーとしてさらなる活躍を期待したい。