プロもアマチュアも昔に比べ、個性的なスウィングをするゴルファーは少なくなった。誰もが教科書通りのスウィングを目指す。だが、世界の最前線を見てきたツアープロコーチ、内藤雄士プロは「個性は殺すのではなく生かすもの」という。その真意を内藤プロが解説する。
画像: 米ツアー通算62勝を挙げたアーノルド・パーマー。個性派スウィングの代名詞的レジェンドだ

米ツアー通算62勝を挙げたアーノルド・パーマー。個性派スウィングの代名詞的レジェンドだ

米ツアー通算62勝を挙げたアーノルド・パーマー。

ハイフィニッシュの独特なスウィングで人気を集めたが、そんな彼が残した名言がある。

「自信ある我流は確信なき正統派に勝る」だ。 

我流(個性)も突き詰めれば、一流の技術ということか。

この意見に太鼓判を押すのが、丸山茂樹をはじめ、多くのプロを指導してきた内藤雄士プロだ。

「そもそもストレートボールを打つ選手はいません。必ず持ち球があり、どちらかに曲げたり、球の高低などでコースを攻略しています。そうなるとスウィングは自ずと個性的になるのが自然です」 

現在のクラブやボールは曲がりづらい。昔ほど個性は出にくく、似たようなスウィングになる傾向はある、という内藤プロだが、

「ゴルファーはそれぞれ骨格や筋力が違います。ですからきれいなスウィングやカッコいい形が、骨格的なメカニズムに合った自然なスウィングになるわけではありません。当時としては珍しいフェードヒッターのリー・トレビノや飛ばし屋のフレッド・カプルスなどは、個性的なスウィングでしたが、クラブもボールも今とは違いましたから、持ち球によって個々のスウィングが形成されただけなのです」 

ゴルフの目的はスウィングではない。形だけにとらわれるのは意味がないのだ。

一時流行したシャローイングについても、

「その形に憧れるアマチュアは多かったですが、それで上手くなった人を見たことがありません。スウィングを変えるのは大変です。であれば、個性を生かすほうが結果も出しやすいはずです。 

クラブ設計家の故・竹林隆光氏の言葉ですが、スウィング理論があってクラブができたわけではない。クラブが先にあったんだ。だからいいスウィングなんてない」 

内藤プロは、これこそが真実だと力説する。 

画像: 強烈なサイドベンドが大西の個性。その個性を生かすことでドライバーイップスを克服した

強烈なサイドベンドが大西の個性。その個性を生かすことでドライバーイップスを克服した

昨季の男子ツアーで急成長したのが、フジサンケイクラシックでツアー初優勝を果たした大西魁斗だ。

現在、内藤プロが指導しているが、その出会いは19年2月。当時、大西はドライバーの右プッシュに悩んでいた。

内藤プロによれば、ドライバーイップスに近い状態だったという。出会った直後にコロナ禍となったことで、内藤プロは大西と毎日、弱点克服に向けて取り組んだという。 

大西のスウィングといえば、ダウンスウィングで右わき腹が縮まる、強烈なサイドベンドが特徴。かなり個性的なスウィングといえるが、内藤プロはスウィングについては一切、言わなかった。

「強いサイドベンドは(大西)魁斗くんの個性です。サイドベンドはスウィングに必要なもので、誰もがしています。ただ、魁斗くんがあれだけ極端に曲がるのは、体が柔らかいからなんです。 魁斗くんの最大の悩みは右プッシュでしたから、その弱点をなくせば、もっともっと強くなれると考えました。そこで重点的に見直したのが始動です。

分析してみるとクラブがややインサイドに上がり、逆ループしながらスティープなダウンスウィングになっていたんです。それが原因で右プッシュが出ていました。ですからヘッドを動かす方向、体でクラブを上げる感覚など、徹底的にドリルを行いました。集中的に取り組めたことでいい結果につながりました」 

20-21年シーズン、大西はアベマツアーに参戦。狭いコースでも果敢にドライバーで攻め続けた。

「試合ごとに成功体験を積み重ねたことで右プッシュの不安は解消されました。今ではドライバーが得意クラブになっていますから」 

弱点を克服した大西は今季、米ツアー2部のコーンフェリーに挑戦する。活躍が楽しみだ。
(後編へ続く)

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/ハイランドセンター

※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月4日号「スウィングは無理に変える必要はない」より

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