昨今、ドライバーのテクノロジーはさらなる進化を遂げておりアマチュアゴルファーの平均飛距離を確実に押し上げている。それに追随するように、アイアンにも「飛び系」が登場した。やさしくて飛ぶことでパー3のティーショットがいくらかやさしくなったのは間違いない。
しかし、そこで新たな問題となるのがウェッジ選びである。アイアンが飛ぶようになったことで生まれたウェッジとのギャップを埋めるべく、これまでとは違った組み合わせも必要になってきそうだ。
その昔は、ピッチングウェッジのロフトが47度や48度というものが多かったので、AWとして別売りの52度を組み合わせることが多かった。ところが、現在はセミアスリートモデルのアイアンセットでもピッチングのロフトが46度前後、そうなるとピッチングの次が52度では空きすぎるし、50度だと詰まりすぎる。そこで、筆者のわたしは50度のウェッジを工房でロフト調整して51度に変更して長いこと使ってきたのだ。
しかしそんなユーザーの声を汲んでか、別売りの「セットのAW」がなんと51度で売られているではないか。これは実際に使って比較してみるしかないということで、今回は同じロフトの「セットのAW(スリクソンZX7)」と「別売りウェッジ(クリーブランドRTX4)」を比較・検証してみた。
最大の違いは2点! 「飛距離」とグリーン周りの「対応力」
一般的なレンジボールで5球ずつショットしたデータが表Aになる(明らかにエラーと見て取れるデータ数値のものは例外処理)
このデータからわかるのはセットのAW(ZX7)のほうがスピンが少なくてやや距離が出たということだ。別売り(RTX4)の51度はもともと50度だったので、若干飛距離が出てしまうかと思っていたがそうでもないようだ。
次に、グリーンサイドでのアプローチショットだがこちらについてはヘッドスピードが遅いせいか、スピン性能や打ち出し角度に大きな差は感じず正直なところ「どちらでも良さそう」だったので割愛。
特に差を感じたのはフェースを開いた時の打ちやすさだった。まだまだ芝生の薄い季節、リーディングエッジが刺さらないようにわずかでもフェースを開いておくとバウンスを当てやすいのだが、これがセットのAWでは何度やってもうまくいかなかった。それでは、これらの検証結果を考察していくとする。
ロフトが同じでも生まれる飛距離の違い
実はこのデータを取得したあと、念のため工房でロフトを計測したところやはり51度で揃っていたし、もちろんシャフトの長さも全く同じ。ではなぜ飛距離に差が出たのか? ここからは筆者なりの考察となる。
今回検証に使用したクラブ、スリクソンZX7のAWはその他の番手同様にソールが三角形の山なりになっている。実際、メーカーのカタログ値でもわざわざバウンス角に「フェース側」と「バック側」というふうに分けて表記がされている。
よく見てみると、ZX7のAWのフェース側バウンス角は20度とある。別売りウェッジはロフト調整を加味しても9度だ。アイアンというのはロフトだけでなく、ソール形状によってプル角の付き方が異なるため実際に構えときのロフトはかなり変化する。
つまり、単純に考えると別売りウェッジはソールが地面にぺったり付くようにセットした場合プル角が9度付くので「51-9=42」であったのに対し、セットのAWは「51-20=31」だったというわけだ。これを知ったうえでもう一度データを見ると打ち出し角度が安定しているのも合点がいく。
ウェッジ形状のわずかな違いが生む大きな差
次になぜセットのAWが、フェースを開きづらいのかを考えていきたい。これはソール、とくにヒール側を観察すると理由がわかった。別売りの51度(RTX4)はソールからネックにかけてキレイなカーブを描いているのに対し、セットのAW(ZX7)はやや角張っている。この角の頂点が地面についてしまうので、リーディングエッジが浮いてしまうのだ。
結果的に、プレーヤーとしては打ち込みたくなるイメージが出るので強いボールが出てしまうのではないだろうか。また、リーディングエッジが別売りウェッジは丸みを帯びているのに対しセットのAWはより直線的なため、フェースを開いたときに「右に向いている感」が強烈で慣れるのは難しいように感じた。
で、結局セットのAWはアリ?ナシ?
どちらのクラブを採用するかについては使い手のプレースタイルに拠るところが大きいでしょう。たとえばAWでフルショットしかしないのであれば、距離が出しやすく安定する「セットのAW」が良いだろう。
一方、グリーン周りでAWを使い、なおかつ様々な状況に合わせてフェースを操作する場合は「別売りウェッジ」に軍配がありそうである。ちなみに私はしばらくセットのAWを採用してみたいと思う。
え、理由? カッコいいんだもん!