ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、3月のアーノルド・パーマー招待で優勝した日系アメリカ人選手、カート・キタヤマに注目した。
画像: PGA、欧州ツアー、アジアンツアー、下部ツアーなど11のツアーを渡り歩いてきた30歳のカート・キタヤマ(Photo/Getty Images)

PGA、欧州ツアー、アジアンツアー、下部ツアーなど11のツアーを渡り歩いてきた30歳のカート・キタヤマ(Photo/Getty Images)

11のツアーを渡り歩いた末、PGAツアーで初優勝!

ラーズ・ヌートバー選手の活躍もあって大いに盛り上がったWBC。ゴルフ界でも日系アメリカ人選手が活躍しています。3月のアーノルド・パーマー招待で、PGAツアー初優勝を果たしたのがカート・キタヤマ。

これまでにPGAや欧州、アジアンツアーなど、下部ツアーも含めて11のツアーを渡り歩いた末につかんだ初優勝でした。

最終日の9番でOBからのトリプルボギーを叩き逆転されたものの我慢強いゴルフで優勝。プレッシャーのかかる状況に強いのは昔からですが、3日目同組だったJ・スピースも「ハートが強い」とホールアウト後に言ったり、着々と戦績を重ねていることも含めて、日本人っぽい部分を感じます。

父が日系のアメリカ人で、母は和歌山出身の日本人。18年のダイヤモンドカップで、ボクは最終日最終組のラウンドレポーターを担当。試合は池田勇太の圧勝でしたが、このとき圧倒されたのがキタヤマ選手の飛距離です。身長は170㎝と小柄ですが、太い下半身が驚異的飛距離を生むのでしょう。

性格も“いいやつ”で、試合後、風呂場で話しかけてきて、この試合で受けたドライビングディスタンス賞に、「日本ではラフに行ってもいいんだね! この賞もらってもいいの?」と驚き、すごく喜んでいました。

日本語は話せませんが、見た目からも親しみを感じます。「日本のクラブハウスはこの格好で大丈夫?」とTシャツ姿で聞いてきたので、「見た目が日本人だから襟のついたシャツを着たほうがいいかもね」とアドバイス(?)しました。

当時はコーンフェリーツアーで2年戦ったもののPGAには昇格できず、アジアンツアーに流れてきた状況でした。その後、欧州ツアーのQTに成功、2戦目のモーリシャスで優勝、翌19年のオマーンであっという間に2勝目を挙げ、世界ランクをアップさせます。

コロナ禍を経て一昨年の入れ替え戦で初のPGA昇格、そして今年、初優勝。親しみから彼の成績には気を配っていましたが、PGAのこんな大きな大会で優勝するとは正直思っていませんでした。

ニックネームには「大腿四頭筋」の意味も!

彼にはネバダ大ラスベガス校時代につけられ、今も使われる「ザ・プロジェクト」というニックネームがあり、彼の人柄を物語っています。入学当時、調子が悪かった彼をコーチらスタッフ、選手たちが「いい子だから、手を貸して皆で助けよう」と“プロジェクト”を組んだそうです。

ちなみに13年の全米学生で、キタヤマは208ヤードを直接入れるイーグルで同校をマッチプレーに進出させました。今も語り草になっている、ザ・プロジェクトの成功だそう。

今、カリフォルニア出身の日系選手、X・シャウフェレやCC・モリカワらの活躍が目立っていますが、仲のよい彼らが使うキタヤマのニックネームは「クアジラ」。

4を意味する「クアッド」は、「大腿四頭筋」を指す言葉でもあり、そこに「ゴジラ」をつけて生まれたそう。親しみとゴルフの強みが出ている呼び名です。

そのポテンシャルの高さと、球とハートの強さで、まだまだ伸びそうな30歳です。

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