コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる。今回は「マスターズ」を制したジョン・ラームと2位のブルックス・ケプカのスウィングをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

みなさんこんにちは。SPORTSBOX AI 3Dスタッフコーチの北野 達郎です。今回は、マスターズチャンピオンのジョン・ラームと、同じく2位に入ったブルックス・ケプカのスウィングをスポーツボックス AIで比較してみました。両者のスウィングは、違いもあれば、共通点もあって実に興味深いです。それでは早速チェックしてみましょう。

グリップの違いと胸の回し方に違いが見える

まずアドレスですが、ここでの共通点は二人とも胸と頭をやや右足寄りにセットするビハイン・ド・ザ・ボールのセットアップです。違いはラームが左右ともややウィークグリップに対して、ケプカは左右ともにややストロンググリップです。両者ともトップから切り返しで左手首を手のひら側に折る”掌屈”をさせてフェースをシャットに使うタイプのプレーヤーですが、グリップが対照的な点は興味深いですね。

続いてトップを見てみましょう。PELVIS TURN(骨盤の回転)はラーム−35.7°、ケプカ−37.8°で骨盤の回転量は両者ともよく似ています。しかしCHEST TURN(胸の回転)がラームは−73°と胸の回転が浅めなのに対して、ケプカは−92.1°とラームより胸がより深く回っています。

画像: トップでの骨盤の回転の角度は似ているが、胸の回転量はケプカの方が大きい

トップでの骨盤の回転の角度は似ているが、胸の回転量はケプカの方が大きい

この胸の回転量に比例してX-FACTOR(胸と骨盤の捻転差)がラームは−44.6°と標準的なのに対して、ケプカは−59.6°とより捻転差が非常に大きいのが特徴です。両者のトップの手の高さや長さの違いは、この胸の回転と捻転差の違いと関連していると言えます。

例えばオーバースウィングでトップが安定しない人ならラームのように胸の回転と両手の位置をコンパクトに収めるのを参考に、逆に体が硬くてスムーズに胸が回せない人ならケプカのように胸を90°以上しっかりターンする点を参考にすると良いでしょう。

ラームはロードタイプ、ケプカはフィックスタイプ

続いてダウンスウィングですが、このP5(胸が地面と平行)のポジションでも両者の違いを表す面白いデータがあります。LEAD WRIST ANGLE(左手首の角度)は、いわゆる手首の縦コックの大小の角度を表しており、角度が小さくなればなるほどコックの量は大きく、逆に180°に角度が近づくにつれて左腕と手首の角度が一直線に近くなります。

この左手首の角度がラームの場合は、トップ(P4)88°→切り返し(P5)85.8°とトップから切り返しにかけて左手首の角度がより鋭角になっているのに対して、ケプカの場合はトップ(P4)72.2°→切り返し73.5°と、トップで手首の角度が最も鋭角になっている事が分かります。

画像: ラームはトップからの切り返しで左手首の角度が深くなるロードタイプ

ラームはトップからの切り返しで左手首の角度が深くなるロードタイプ

この違いは、アメリカのゴルフスイングの3D分析の専門家であるフィル チーサムによると、ラームはトップ〜ダウンスイングにかけて左手首の角度が鋭角になり続けるロードタイプ(より角度が鋭角に増える)、ケプカはトップ〜ダウンスイングにかけて左手首の角度が維持されるフィックスタイプ(角度が固定される)というそうです。

画像: ケプカはトップで作った左手首とクラブの角度をキープするフィックスタイプ

ケプカはトップで作った左手首とクラブの角度をキープするフィックスタイプ

余談ですがこの左手首の角度の作り方のタイプは4種類あり、その詳細はまた機会があればご紹介させて頂きます。正面からのP5の写真だけで両者を比較すると左手首とクラブの角度は一見よく似ていますが、データ化すると角度差や、いわゆるタメの作り方も異なるのが面白いですね。

二人に共通するインパクトポジション

最後に両者のインパクトもご紹介させて頂きます。こちらは両者の違いではなく共通点になります。頭・胸・骨盤とインパクト(P7)でのSWAY(左右の移動)のデータを見ると、

①頭(FOREHEAD)はアドレスより僅かにマイナス(右サイド)に残り
②胸は0に近い=アドレスから左右のズレが少ない
③骨盤は5インチ(約12.7cm)アドレスより左へ移動している

画像: 二人に共通するインパクトポジションは、頭が右に残る、胸の位置はアドレスと同じ、骨盤は12.7センチ左へ移動していること

二人に共通するインパクトポジションは、頭が右に残る、胸の位置はアドレスと同じ、骨盤は12.7センチ左へ移動していること

この3点が両者のインパクトでの共通点になります。この3つのポイントは、両者いずれもスポーツボックスのデータベースでのツアーアベレージ範囲内に収まっており、世界のトッププロの両者に共通しているインパクトポジションと言えます。

この共通点の中で、特に記事をご覧頂いているゴルファーの方に参考にして頂きたい点は、「骨盤が左に移動している点」です。頭と胸をアドレスの位置のまま、骨盤だけを左に動かしてみて下さい。そうすると上半身が少し右に傾くのが感じられると思います。

この骨盤が左に移動した分、上半身が右に傾く事でクラブヘッドのアタックアングル(入射角)はアッパーブローになりやすくなります。これがアイアンショットになると胸も頭もドライバーショットに比べると左へ移動しますので、ダウンブローのインパクトになりやすくなります。

クラブの特性によってアドレスのボール位置や、スウィングも微妙に異なる点がある事を理解しておくと、ドライバーもアイアンも上手く打てるようになりますので、参考にしてみて下さい。

今回はマスターズ優勝のラームと、決勝ラウンド最終組で2位タイに入ったケプカの両者をスポーツボックスで分析しました。PGAツアーのラームVS LIVゴルフのケプカの一騎打ちは実に見応えがあり、これぞメジャーという試合でしたね。今は普段の試合で揃い踏みができない両者ですが、次のメジャーの全米プロでまた再び出揃うのは本当に楽しみです。

This article is a sponsored article by
''.