2023年、マスターズトーナメントはジョン・ラームの優勝で幕を閉じました。ラームの4日間安定したゴルフを支えたシャフトは長年愛用しているアルディラの「ツアーグリーン」、これは2013年に発売された中調子のシャフトです。カウンターバランス設計のもつ操作性の良さが特長で、中間部分から先端部分にかけてしっかりしたツアーシャフトです。
「アルディラ」は現在三菱ケミカルグループの傘下に入っていて、PGAツアーでは同社の「テンセイ」、「ディアマナ」に並ぶシャフトブランドになっています。そのアルディラの新製品が「ローグ インフィニティ」です。
今回はアルディラのこの新シャフトがどんなシャフトかを検証してみたいと思います。
日本では2023年2月に発売、アメリカでは昨年から展開されており、すでに日本のツアープロにも使用者がいます。
最近のドライバーヘッドのトレンドに合わせた設計で特長としては、アルディラとしては初めて全長に超高弾性80tカーボンファイバーを採用しています。50~80グラム台までラインナップしており、フレックスはS(TS) とX(TX)を基本フレックスとしていますが、50にはRがあり、80はXのみになっています。今回は50~70g台をテストしてみました。
外観は手元側がマットブラックで中間から先端は艶のあるブラック仕上げで精悍なデザインです。
まずは50グラム台から。さすがアルディラのツアーモデル、イメージ通り手元側に剛性感のあるしっかりしたシャフトです。グリップして感じるバット部分の剛性の高さは振っていても感じられます。振動数はRが252cpm 、S で262cpm、 Xは276cpmと、手元側の剛性が高いため、数値も高く出ますが、中間部分から先にかけてはやや軟らく、しなりを感じれないシャフトではありません。R、 S 、Xの順に打っていきましたが、その動きはフレックスが硬くなっても変わらず、ボールのつかまりも悪くありません。むしろイメージよりボールのつかまりも良く、ドローボールで狙いやすいシャフトだと思います。インパクトエリアでは押し込む動きでしっかりとボールをとらえるイメージです。バックスピン量は少なめでボールの吹け上がりはありません。
Rはしなりも感じられ、トルクもありハードさは感じません。先端部分の動きはボールをとらえやすく、多くのゴルファーに使いやすく感じられるでしょう。Sはしっかりしたフィーリングですがなめらかな挙動で、ほどよくつかまった吹け上がりのない力強いボールが打ちやすい。打ち手によってはやさしくさえ感じるでしょう。Xは全体が締まっていて一体感のある動きが印象的で、硬めの中調子シャフトらしいフィーリングです。
次に60グラム台。60Sは65グラムで50Sと重量は4.5グラムしか変わらないのですが、重量差以上にシャフトの重厚感がアップして、フィーリングも違いますね。振動数は265cpm、60Xは285cpmと手元側が硬いので振動数の数値は高く出ますが、振ってみると印象は変わります。スピード感を感じる50グラム台に比べてマイルドなフィーリングがプラスされスムーズでおだやかなシャフト挙動。とくに60Sは不思議とハードに感じません。カウンターバランス設計と80tカーボンファイバーによる復元力の高さは、しなり戻りのスピードをアップし、加速感は50グラム台よりもあり、爽快に振っていける印象ですね。
動きはあるものの、ねじれを感じない先端剛性は分厚いインパクトを実現し、当たり負けないのは当然、ボールをしっかりと押し込み、つかまりも良い感じです。操作性もよく、設計バランスが非常に良い感じです。特に弾道の安定性は抜群で、すでにアスリート系シャフトの60グラム台のSを使用されているゴルファーなら難しいシャフトに感じないと思います。
Xは飛距離300ヤードを越えてくるUSPGAのプレーヤー対応のフレックスですのでハードなのは間違いありませんが、同社のテンセイやディアマナブランド同様、強い切り返しのプレーヤーが感じとることができる「バット部分のしなり」を感じられ、切り返しのタイミングがとりやすいという方もいるでしょう。シャフト振動数だけで判断しないで実際に打って試して欲しいフレックスです。
70グラム台は60グラムで物足りなさを感じるようなパワーのある方に良いでしょう。トルクが少なくなっている分、よりしっかりしたフィーリングで、さらに強いインパクトにも負けない強さを持っています。シャフト振動数は70Sが263cpm で70Xは282cpmと60グラム台同様にシャフト振動数だけみると1フレックス以上の差がありますのでスウィングに合わせてしっかり選ぶ必要があるでしょう。ヘッドスピードが速いだけでなく、パワーがないと弾道に伸びがなく失速気味になります。60グラム台だとボールの吹き上がるような方でも低スピンボールとなりブレにも強いですし、着弾ポイントのバラつきも少なくなるでしょう。
アメリカ発のアルディラブランドに三菱ケミカルの持つ高い技術が融合された「ローグ インフィニティ」はパワーヒッターにとって非常に魅力的なツアーモデルのシャフトに仕上がっていました。アスリート系シャフト使用者に是非試して欲しいと思います。