久しぶりに賞金王を狙えるプロに出会えた
清水キャディはこれまで、谷口徹、上田桃子、イ・ボミとのコンビで賞金王&女王を獲得してきた。そんな名バディの目に、22歳とフレッシュな蝉川はどう映ったのか。蝉川の優勝翌日に話を聞いた。
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ーー若いプロとは思えないような戦いぶりでした。
清水 そうですね。完璧にやったと思います。
ーー開幕時は左肩が痛いと言っていました。その影響はなかったですか?
清水 まだちょっと痛みはあったらしいんですよ。開幕の時は私も現場にいなかったんでわかんないですけど、そのときよりはましだったようで。でもまだ違和感はあるっぽくて、完璧な状況ではなかったのかなあ、というのはありました。
ーーそれでも勝てる。清水さんから見てどういう選手ですか?
清水 ほんとにもう、久しぶりにトップを狙えるといいますか、賞金王を狙えるプロと出会えたかなあっていう感じで。
ーー最終日は同組に河本力選手もいる中で、飛距離では負けていませんでした。
清水 ドライバー上手いっすね。飛ばし屋って飛ばすことは長けてるじゃないですか。逆に言うと飛ばさないことが難しい、というのは聞いてたんです。飛ばせって言われたら、7番アイアンで180でも190でも打てるんですけど、7番で160打てと言われたら打てないっていうような感じの人が多かったんですけど、(蝉川は)飛ばさないこともできる技術を持ってる子なので、びっくりしましたね。
プレッシャーを少しでも取り除けたらと、いろいろ声かけした
ーー試合中の雰囲気も落ち着いていました。ベテランの清水さんから見て、去年2勝しているとはいえまだ若い蝉川選手のゲーム運びはどうでした?
清水 アマチュア時代に優勝し、なおかつ日本オープンという大会でも優勝している選手なので、間違いなく力はあると思うんですけど、おそらく彼なりにプロになって、優勝するまではプレッシャーはあったと思うんです。期待されることが多いので。なので、そのプレッシャーを少しでも取り除いてあげられるように、私はいろいろとたくさん声かけしたりしながらラウンドしていました。
ーーたとえばどんなふうに声をかけましたか?
清水 調子もよかったんで、なかなかグリーンを外す機会ってなかったんです。最終日の前半でも5番ホールでグリーンを初めて外して、アプローチを寄せてパーを取ったんですけど、その時も「前半で1回くらいグリーン外しとかないと、終盤になってグリーン外してアプローチするっていうのは緊張もすると思うし、前半で1回2回外しておくほうがいいんだよ」みたいな感じで言ったりして、グリーンを外したことに対しては忘れられるっていうか、気楽に打っていけるように。そういう話をしたりとかですね。
ーー最終ホール(18番・552ヤード・パー5)のセカンドは250ヤードぐらいあったでしょうか?
清水 249ヤードですね。
ーー奥のバンカーに外したのは想定内?
清水 それは完全に想定内ですね。3番ユーティリティ(U)にしたんですけど、ちょっと大きいんですね。260ヤードぐらい飛ぶので。250ヤードのピンに対して、250ヤード以上飛ぶクラブって大きいんですけど、手前に外すよりは奥に外すほうが、あの(奥の)ピンに対して寄せやすい。バンカーでもそうですし、ラフからでも奥からのアプローチのほうが打ちやすいという話で。
3Uと4Uと迷って3Uですけど、4Uだと220〜230ヤードなんです。足らないし、当たりが薄いと手前のバンカーに入ると嫌なので。あと、ちょっとダウンヒルっていうのもあって、球が上がりにくい状況だったんで、大きめのクラブを持って打ったんですけど、結局オーバーして。オーバーは想定内で、バンカーも想定内で、バンカーからなら比較的寄せやすいっていう話もして打っているので、ある意味計算通りといいますか。もちろん本人もそれはわかっていて、それを再確認するという感じでしたね。
堀川未来夢に出した3つの条件を蝉川泰果は完璧にクリア
ーープロデビュー当時の堀川未来夢選手に「これくらいできるようになっておいてほしい」と3つの条件を挙げたとか。それをクリアしたことで今では国内メジャーも獲る選手に成長していきました。
清水 ドライバーは(セカンドが)打てるところに(置く)というのと、とりあえずOBとか1ペナとかバンカーのアゴ、バンカーでもいいんですけどアゴだとセカンド狙えないとかあったりするので(避けること)。
あと、セカンドは長いミドルアイアン以上はピンに絡ましてくれとは言わへんから、とりあえずショートアイアン、9番8番くらいまででしたらそこそこピンに絡ませるように打ってほしいっていう話と、あとはパターの距離感を合わせるようにしてくれ。ってプロになった当時の堀川君には話したんですけど、実際その3つは(蝉川)プロは完全に先週はクリアできてました。
ーー蝉川選手と事前に打ち合わせたことはありますか?
清水 今の若手のプロってけっこうイケイケなゴルフするって聞いてまして、攻め一辺倒でガンガン来るっていうのが今、主流的な感じになってるじゃないですか。
私も古い人間なんで、そういうのもどうなんかって思ってたんで「そういう攻め一辺倒じゃなくて、攻めるにも理由があったりとか、無謀すぎる攻めはダメだ」って話もさせてもらって。
ビジネスでもそうなんですけど、挑戦がないとなかなか新しい人生は展開していかないと思いますし、ゴルフもそう。でも、10回やって1回2回しか上手くいけへんのに、それでも攻めるのかと。確率は7割8割ないと攻めていけないというのもありますし、そういうのもうまく彼は納得してくれて、やらせてもらいました。
蝉川泰果、中島啓太、河本力のトップ争いで男子ツアーの盛り上がりに期待
ーーこれから楽しみな選手です。
清水 ほんとに間違いなく楽しみな選手で、国内で言いますと賞金王は獲っていくような選手でしょうし、今すぐじゃなくても何年後かには海外に行って、海外のツアーでも優勝できるような力は持ってそうな感じですね。
ーー一緒に回っていた河本選手も「今年は賞金王を狙う」と公言しているし、そこに中島啓太選手も入ってきて、男子ツアーも盛り上がりそうです。
清水 そうですね。昔のAON(青木功・尾崎将司・中嶋常幸)じゃないですけど、河本、啓太、蝉川っていうその3人に石川遼選手も加わって、トップを争っていくんだろうなあって感じですかね。
今回、久しぶりに男子ツアー来まして。今年、私は初めてなんです。ギャラリーも、場所的に大阪で来やすいっていうのもあって、すごい多かったですし、最終日だけで言いましても、女子の熊本のギャラリーより多かった。私は、女子のギャラリーがすごい多かった時を知ってるので、それを彷彿させるような感じの、次のホールに行く時に歩けないぐらいのギャラリーがいたので、ちょっとびっくりしましたね。「えっ!?」って驚いたぐらいのギャラリー数だったんで、いいことですよね。
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今後は、ともにディフェンディングチャンピオンとして連覇に臨むパナソニックオープン、日本オープン、そしてシーズン終盤戦の三井住友VISA太平洋マスターズ、ダンロップフェニックスと計4試合でコンビを組む予定。蝉川を「賞金王を狙えるプロ」と見る清水キャディが、王座獲得を自らサポートする。
Photo/Hiroyuki Okazawa