「手がしびれて、緊張してるんだなって……」
最終18番パー4、グリーン奥からのアプローチを寄せ切れず、パーパットが入らない。残ったのは80センチのボギーパット。外せばプレーオフという場面だった。
「手がしびれて、緊張してるんだなって……。しびれを止める方法を知らなかったので、リズム良く打つことだけを心がけました」
初優勝のプレッシャーのなか、しびれた手をそのままに、冷静な判断で、ピンチを乗り切ることに成功した。
単独トップでスタートした神谷のショットは前半から安定していなかった。
ティーショットでフェアウェイキープできたのは5ホールだけ。9、11、12番でボギーを叩き、安田祐香らに逆転を許し、一時は2打を追う展開となった。
しかし、女子ツアーで最も難しいパー3のひとつである17番(180ヤード)でバーディをもぎ取り、再び首位に立った。
「7番アイアンで当たりが良くなくて……。(ピン奥3メートルの)パットは少し強かったので、カップに蹴られたらかなりオーバーしていたんじゃないかと思います。入ってくれてよかったです。キャディさんからも『強かったよ』って……」
「我慢の一日になる」と神谷が覚悟を決めていたとおり、苦しみながらも、ツアーデビュー8試合目で初優勝。日本人選手では5番目のスピード記録を達成した。
「私、小さい頃から飛んでたんです」
神谷の武器はパワフルなスウィングから繰り出されるドライバーショット。
167センチの身長を生かした270ヤードを超える飛距離は、ジュニア時代に磨かれた。
「私、小さい頃から飛んでたんです」と笑う神谷は、最初に入ったゴルフスクールで、大人を相手に「飛距離勝負」を繰り返していたという。
練習の9割がドライバーだったおかげで、「振る力」が身に付いた。ドラコン競技では312ヤードを誇り、同級生には敵なしだったという。
ゴルフの飛距離と"親和性"が高い「そら」という名前は母・あゆさんが「大空のように広い心を持つ子に育つように」と名付けた。
女子プロ選手の名前の由来では、両親が音楽家で「セレナーデ」から取った青木瀬令奈、漫画「タッチ」のヒロイン浅倉南から取った勝みなみ、両親が美しい夢を持ってほしいという思いを込めてつけた山下美夢有らが知られるが、神谷も先輩たちと同じように大きく成長していくに違いない。
そんな話題性も十分な大型新人は18日に、20歳になったばかり。
「こんなに早く優勝できるとは思ってなかったけど、2勝目を目指してまた頑張っていきます」
飛ばし屋のニューヒロイン「神谷そら」は、大空を味方につけて、今季の女子ツアーを盛り上げていく。
※2023年4月24日17時2分、一部文章を修正しました