「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はフルチタンドライバーのポテンシャルについて今一度考察をお願いした。
画像: フルチタンの「スリクソンZX5 MkⅡ」を使う全米プロ優勝のB・ケプカ(Photo/Blue Sky Photos)

フルチタンの「スリクソンZX5 MkⅡ」を使う全米プロ優勝のB・ケプカ(Photo/Blue Sky Photos)

いまの鋳造と研磨の技術ならチタンも薄く作れる

みんゴル取材班(以下、み):カーボンコンポジットとフルチタン、どちらのドライバーが優れているかというテーマは20年くらい前からたびたびゴルフメディアで取り上げられてきました。カーボン比率の高い「ステルス」や「パラダイム」が登場し決着がついたかと思いきや、フルチタンに回帰した「スリクソンZX Mk II ドライバー」を使うプロが大活躍していて、土俵の真ん中くらいまで押し戻した感じがしないでもありません。

宮城:ブルックス・ケプカなら何を使っても勝つと思いますが、松山英樹がフルチタンを選んだ理由は気になりますね。

み:カーボンクラウンとフルチタンで同じ重心設計のプロトタイプを作ってテストしたところ、フルチタンのほうが初速が出て飛んだらしいです。それを踏まえて製品もフルチタンになったのでは。

宮城:ほほう。実は石川遼がヨネックスと契約した当初、カーボンクラウンとフルチタンでヘッドを作り分けて試してもらったことがあります。そのときは本人のフィーリングもトラックマンの数値もフルチタンが圧倒的に上回っていました。カーボンの技術に長けたヨネックスとしてはカーボンを前面に出したかったところですが。

み:なぜフルチタンのほうが飛ぶのですか。比重が軽くて設計自由度の高くなるカーボンクラウンのほうがスピンを減らして飛距離を出すには有利なはずですが。

宮城:いまの鋳造と研磨の技術ならチタンも薄く作れます。「ステルス」や「パラダイム」のようにカーボン比率の高いヘッドは別ですが、クラウンだけカーボンにしてもさほど優位性はないと考えています。

み:では、カーボンとチタンの違いはどこにありますか。

宮城:カーボンは軽さがフォーカスされていますが、もう一つの特徴は剛性の高さです。

み:剛性は高いほうがいいのでは。

宮城:チタンで薄く作ったクラウンはたわみやすく、フェースもたわむのでボールが潰れすぎず、打ち出し角も上がる利点があります。片やカーボンはたわまないのでプロのヘッドスピードだとボールが潰れすぎて飛ばない現象が起きます。

み:松山英樹もフルチタンヘッドのほうが押し込めると言っているそうです。

宮城:ハイスピードカメラで撮影しても違いは出ませんが、プロはフルチタンヘッドのほうがフェースに球が乗る感じがするといいますね。コンポジットは球離れが速く感じるので、松山のようにドローを打つ選手は怖いと思います。

み:なるほど、安心して振れるからスウィングスピードが上がるわけですね。

宮城:これは推論ですが、チタンは人工骨や関節にも使われる素材なので人体になじみやすいのかもしれません。自分でクラブを組み立てるときもチタンは手触りがいいけれど、カーボンは触ると冷たいというかゾクッとした感じがしますから。

み:チタンと骨の硬さが同じという話を聞きました。

宮城:振動の伝わり方が心地よいのかもしれませんね。

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