他のスポーツは“合わせて”打つ必要がある
ゴルフを始める以前、野球やテニスなどといった他のスウィングするスポーツを経験していた人も少なからずいるだろう。
同じく道具を振ってボールを打つ動作がゴルフのスウィングにもある以上、その経験が活かせる部分もあるが「それでもゴルフのスウィングはその他のスポーツのスウィングとは大きく違う部分があります」と兼濱は言う。
「ゴルフは止まっているボールに対してスウィングするわけですが、野球やテニスといった他のスウィングするスポーツでは、相手が打ってきた、あるいは投げてきたボールに“合わせて”打つ必要があります。するとボールが飛んでくる場所やタイミングに対応できるように、タメが強くなるんです」(兼濱、以下同)
もちろん他のスポーツも当てる動きだけでは効率よくエネルギーを使うことはできないが、ボールに合わせて打つ以上、“当てられるようにする”動きを残しておかないとそもそもプレーが成立しなくなってしまうというわけだ。他のスポーツで見られるこのタメの強さは、兼濱がレッスンする中でも「他のスウィングするスポーツ経験者のゴルフスウィングに多い特徴ですね」という。
ゴルフは“当てる”のではなく“当たる”ように振る
しかし、このタメの強さはゴルフスウィングにおいて必ずしもプラスに働くというわけではない。
「ゴルフスウィングって“当てる”ではなく“当たる”がスウィング作りの考え方のベースにあります。ゴルフクラブという偏重心で特殊な道具を振る以上、スウィング中の遠心力によって起こるクラブの自然な挙動に任せたほうが再現性が高くなるんです。もちろん止まっているボールに対しても合わせて打つわけなのですが、その中でもなるべく“合わせる”動きが少ないほうがより再現性が高まるというわけです」
もちろんゴルフでも合わせて打つ能力は通用する。しかしそれは「フィジカルが強い間は」という但し書き付きだと兼濱は言う。
「フィジカルが強いうちは合わせる能力だけでもゴルフクラブの特性を押さえつけてうまく打ててしまいます。しかしフィジカルが落ちたとき……例えば加齢だったり、体調の良し悪しだったりで、それが急に通用しなくなってしまうんです」
コンディションがいい時は上手くスウィングができるが、悪い時にはクラブの動きに負けてしまう。こういったことを繰り返すゴルファーは「当てる動きが強過ぎるかもしれません」と兼濱。合わせて“当てる”のではなく“当たる”スウィングを身につけるためには「連続素振りで日頃からクラブの挙動を感じながら振る習慣を付けましょう」という。
「ゴルフクラブをスウィングの主役にして、クラブの重心通りに円弧を描けるようになることが大切です。それができるようになったら、より負荷を加えて強く振れるようにしていきましょう。それに、もちろん他のスポーツで培った当てる動きも技術の一つ。それを大事にしながらいかにゴルフスウィングに近づけていくかが大切ですよ」
協力/学芸大ゴルフスタジオ