台風の影響で悪天候に見舞われた「BMW日本ゴルフツアー選手権」でしたが、水はけのよいコースコンディションやスタッフのコース整備の甲斐あって4ラウンド72ホールでの決着となりました。
試合展開は、最終日の15番ホールをボギーとし中島啓太、ソン・ヨンハンに並ばれると、16番パー3で並んだ二人が3パットのボギー。1打差で迎えた最難ホールの17番パー4で金谷選手は、右のラフから値千金のOKバーディに寄せるスーパーショットを放ちます。
あの17番のつま先下がりのラフから振り抜いたショットこそ、金谷選手のスウィングの特徴を表わしています。その特徴は、プレッシャーのかかる肝心な場面でも力まないスウィングです。それではじっくりと見てみましょう。
左手の甲が正面から見えるストロンググリップで、右手もやや下から握り、左腕は左胸に乗せるようにわきの締まった状態で構えています。ヘッドを浮かせてから始動するのは、クラブの重さを感じやすくしますし、力まないための工夫でもあります(画像A左)。
そしてもう一つ、トップで左のひじに余裕が見えます。それは、左わきを締めてはいても、左手のグリッププレッシャーは強くないから。体に近い部分は締まっていても末端は力んでいないことで、下半身や体幹部の大きな筋肉を使うことができています。
ドライバーでも、17番の2打目もグリーンを外した18番の3打目のアプローチもそうですが、とにかく振り抜きが良いのが金谷選手のスウィングです。画像Aの右のトップでは右の股関節にズボンのしわが寄り、画像Bの左のダウンスウィングでは左の股関節にしわが入っています。この股関節の使い方が体の起き上がりを防ぎ骨盤のターンを促します。
そしてフォローにかけて、足首、ひざ、股関節のトリプルアクションが揃うことで、体が起き上がらずに大きな力を発揮できていることが見て取れます。立ち幅跳びや箱の上に飛び乗るボックスジャンプといったトレーニングが飛距離に直結するのは、このトリプルアクションが揃うことで下半身の力を使ってクラブを加速させることができるから。
金谷選手は、グリップを強く握らないことで指先の感覚を研ぎ澄まし、力まないから振り抜けるし、テンポも狂わない。まさに実戦で作り上げたスウィングと言えるでしょう。
今季初めのアジアンツアー、「インターナショナルシリーズオマーン」を制し、4月の「インターナショナルシリーズベトナム」でも4位、そして「BMW日本ゴルフツアー選手権」の優勝と、松山英樹の背中を追いかける金谷選手のチャレンジは続きます。世界ランキングを上げ、同じフィールドで戦える日はそう遠くないのではないでしょうか。