主にインドアスタジオなどに設置されている弾道測定器は、今やアマチュアにとって決して縁遠いものではない。飛距離やヘッドスピードといったショットの結果の測定はもちろん、機種によってはヘッド軌道を確認することもできる。
とくにアウトサイドイン軌道に悩むゴルファーは、弾道測定器のヘッド軌道データも逐一チェックしたくなるところだが「数値だけ見てスウィングを修正しようとするのは危険ですよ」と兼濱は言う。
「数値という結果だけ変えようとして、数値基準で修正をすると、スウィングの変えてはいけない部分も変わってしまう危険があります。例えば写真A下のスウィングはインサイドアウト軌道にしたくてクラブの挙動を体の動きで無理やり押さえつけ、左サイドへ極端に体重を乗せて打ったものです。クラブパスは18度のインサイドアウト軌道になっていますが、これでは別の問題が発生してしまいます」(兼濱、以下同)
写真Aは極端な例だが、要するに弾道測定器はあくまでもクラブデータ……クラブがボールに対してどう入っていったかということしかわからない=スウィング中の体の動きは考慮されないため、計測器が出す数値自体は好転してはいるものの、それは極端な体重移動や手打ちがもたらした結果であり、スウィング自体はより悪くなっているなんてことにもなりかねないわけだ。
「そもそもの話ですが、ゴルフクラブという特殊な道具の挙動を邪魔しない“クラブが主役のスウィング”ができていて、ライ角通りに構えて振れば、ヘッド軌道は基本的にインサイドアウトになります。切り返しでヘッドの重さによってヘッドは倒れてくれますから」
したがって、弾道測定器のヘッド軌道データの扱い方は、あくまでも「クラブが主役の状態で振れているかどうかを確認するために使うのがいいですね」と兼濱。
「普段から素振りを習慣にして、腕や体の動きでヘッドの動きを押さえつけない“ヘッドが主役のスウィング”を身に付け、その成果が反映されているかどうかをチェックするために使うのがいいでしょう。クラブを主役にしてスウィングしていけば、クラブパスはプラスマイナス6度以内に収まると思いますよ。もし結果が数値に反映されていないのだとしたら、素振りの仕方、練習の仕方がずれてる可能性に気付くこともできます」
クラブ軌道の他にも、フェースのどの部分にヒットしたかなど様々なことを確認できるが、それも同様にあくまで「確認作業のために活用するのがいいでしょう」という。
「弾道測定器は言ってしまえば、感覚を数値化してくれるツールでしかありません。トウ寄り、あるいはヒール寄りに当たると距離はどのくらい落ちるのか、しっかり芯で捉えるとどれくらい飛んでくれるのか、またそれぞれの位置でインパクトしたときの感触はどうか……そういった感覚と数値の擦り合わる確認作業に活用するのはいいですね」
もちろん、自分の感覚自体が間違ってる可能性も当然あるが「スウィングの動画を撮ってみるとイメージと全然違っていたなんてことがままあるように、感覚と数値(実際の結果)が全然違うことを認識するためのツールでもあります。いずれにせよ感覚と数値の擦り合わせは大切、ということですね」と兼濱。
「まとめると、弾道測定器のヘッド軌道のデータは自分の感覚と結果を擦り合わせるための確認作業に活用するのはアリ。ただし数値だけを基準にスウィングを修正するのはNGと覚えておいてください」
協力/学芸大ゴルフスタジオ