飛距離と勢いのある若手の壁になる44歳の谷原秀人
好スコアが続出した4日間でしたが、若手に飛距離で劣る谷原秀人選手は持ち前のショット、パットの技術、そして冷静なプレーで勝利を手にしました。長野泰雅、蝉川泰果選手とプレーした予選ラウンドでは40ヤード、50ヤードとおいていかれる場面もあったといいます。その中で自分のプレーに集中できた理由を優勝会見では「音」を追い求めないと話しました。
「昔PGA行った時には『音』を理解していなかったので、練習場でも(外国選手と同じ)その打球音が出せるものだと思っていたので、強く振ってしまっていた。その音を出そうと自然と振ってしまっていたし、音を出そうとして調子を崩してしまったこともありました。今ではそういうことは一切ないですし、それこそが経験だと思っている。マイペースに自分のゴルフだけをするところにいますね」(谷原秀人)
海外ツアーでの経験を積み選手会長としてサポートしながら「上手くなりたい一心」という谷原選手ですが、サポートする吉田直樹コーチは「やりきる力」がすごいと話します。年齢とともに現状維持をするだけでも難しいところ、ドロー、フェードを操るスウィングに進化させる向上心、情熱が谷原選手の強さの秘訣だといいます。
現地取材した女子ツアー「アースモンダミンカップ」では、岩井明愛選手をプレーオフで退けた申ジエ選手もショットが荒れ決して調子が良いとは言えない状態でも、最後まで諦めずに厳しいパーパットをねじ込み、得意な距離を残しバーディを奪う姿にベテラン選手の強さを見せてもらいました。
何度倒されても向かっていくボクサーのようなタフさが求められる場面を目の当たりにし、改めてスポーツは格闘技だと思い知らされた両者の優勝シーンでした。それでは谷原選手のスウィングを見てみましょう。
レイドオフから前傾姿勢をキープして振り抜くニュートラルな軌道
谷原選手はトップのシャフトの向きをターゲットよりも左に向ける「レイドオフ」の状態を作り、入射角を浅くしクラブ軌道をストレートに近づけるよう改善したことで、ドローもフェードも操るスウィングへと進化させています。
画像はフェードボールを打った連続写真ですが、トップではレイドオフの位置から(左)、腰のラインがボール方向に近づかずにややカットに振り抜いています(中)。ちょうどウェアの背中にデザインされたラインが前傾姿勢をキープしてターンする様子を見せてくれています(右)。
前傾させた骨盤が伸び上がることなく、ターンしていく過程で右の体側が縮み側屈が、側屈が入ってフォローへと抜けていく様子が見て取れます。このときに足裏の圧力を計測すると、左足は前に右足は後ろに引く"前後の力"が加わることで骨盤から体幹をターンさせる力を作っていると解明されています。ダウンで右のひざが前に出てしまう人は、ダウンで右足を後ろに引くように動かすドリルが改善のヒントになるでしょう。
今週は北海道の千歳に舞台を移し「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップゴルフトーナメント 2023」が開催されます。5週連続で優勝争いを続ける中島啓太、復調の兆しを見せる河本力、20歳の長野泰雅、蝉川泰果など若手の台頭著しい彼らがどんなプレーを見せてくれるか、期待は膨らみます。