ペブルビーチの名物であり難関ホールの、距離わずか107ヤードの7番打ち下ろしのパー3。モントレー半島の小さく突き出た岬の端に位置しているため、海の上を吹き抜ける風がゴルファーを惑わせる。7月7日金曜日、女子ゴルファー世界一を決める全米女子オープン2日目、18人の選手がどんなティーショットを放ったのか定点観察を決行した。

わずか107ヤードの難ホール。攻略法はスピンを抑えた低い球

画像: 「ペブルビーチの7番パー3は、低い球が攻略の基本です。番手を上げれば、弾道が低くなるだけでなく、スピン量も自然と抑えられます」(吉田直樹コーチ)

「ペブルビーチの7番パー3は、低い球が攻略の基本です。番手を上げれば、弾道が低くなるだけでなく、スピン量も自然と抑えられます」(吉田直樹コーチ)

(米国へゴルフ留学経験もあり)これまでに何度もペブルビーチを回ったことがあるという吉田直樹コーチに、まずは7番ホールの攻略法を聞いた。谷原秀人、小祝さくら等を教えるプロコーチであり、米国ゴルフ通でもある。

「ここは、距離が100ヤードちょっとで、さらに打ち下ろしがあるので、風がなければエッジまで85ヤードくらいの計算でオンできます。でもやっかいなのが、太平洋を吹き抜ける強い風です」

「たとえば、少し内陸にある12番パー3が無風の時でさえも、7番では必ず風があります。世界一を争う女子プロなら、おそらく球の高さをコントロールした球筋で臨んでくるはずです」

「もし、みなさんがペブルビーチを回る機会があるならば、番手を1番手か2番手上げてハーフスウィングで打つ方法をおすすめします。たとえば、PWを持ってゆっくりハーフスウィングするつもりで90ヤードを打つと、自然と弾道が低くなり、バックスピン量も少なくなるため、風の影響を受けにくく、距離感を合わせやすい弾道になるわけです」

観測18選手、高さを抑える方法は2つに分かれた

画像: 2日目のピンポジションはやや右。ティーマークからの距離は105ヤード。この日の風は、海上から西風が吹いていたため、やや右からのフォローの風となった

2日目のピンポジションはやや右。ティーマークからの距離は105ヤード。この日の風は、海上から西風が吹いていたため、やや右からのフォローの風となった

もしも、このホールが岬の先端ではなく、カリフォルニアのもっと内陸地にあったなら、SW本来の高弾道で攻める選手が多いかもしれない。でも、ここに掲載した選手以外でも、高弾道で攻める選手は誰ひとりなかった。

選手たちが選択した球の高さを抑える方法は、大きく2つに分かれた。一つ目は、番手をロフト54度のウェッジかそれ以上に上げる方法。この作戦で7番を攻略しようとしたプレーヤーは、18人のうちの12人、約7割を占めた。

残りの約3割の6人が、SWでボール位置や体重の掛け方、ヘッドの入れ方などを工夫して弾道を抑えていた。たとえば、58度を使ってグリーンを狙った古江彩佳は、素振りのときから、いかにもフックボールをイメージしているようだった。

グリーンにオンさせたプレーヤーが12人、外したプレーヤーが6人。オンさせた12人のうち、バーディを奪った4人の番手選択を見てみると、西郷真央、岩井明愛、リディア・コーの3人が54度を使用。

画像: 番手を上げれば低弾道&低スピンが手に入る、とばかりにアプローチでもするかのように54度のハーフショットで寄せて、バーディを奪ったリディア・コー。SWをインから入れる低弾道で狙った古江彩佳

番手を上げれば低弾道&低スピンが手に入る、とばかりにアプローチでもするかのように54度のハーフショットで寄せて、バーディを奪ったリディア・コー。SWをインから入れる低弾道で狙った古江彩佳

コ・ジンヨンだけがSWを使っていた。ただし、もっともピンに寄せていたのは、なんとこの試合で2度目の現役引退を発表したアニカ・ソレンスタム。アニカは54度を使って、2メートルに寄せていた。

際立ったリディア・コーの低い球を打つ技術

見た目でもっとも低いライナー性の球を打っていたのは、西郷、山下、リディア・コーの3人。中でももっとも簡単に低い球を打って、ピンに寄せている印象を受けたのは、リディア・コーだった。

リディア・コーは、手のフィーリングを使って“感じ”を出していく雰囲気はまるでなく、54度をゆっくりと、ただアプローチでもするかのように振って乗せた。このシンプルさこそ、世界トップの技術なのだろうとの印象的だった。

画像: 7月3日の練習日、一緒に回った渋野日向子、申ジエ、馬場咲希の3人で記念撮影。この日の風はまだ穏やかだった

7月3日の練習日、一緒に回った渋野日向子、申ジエ、馬場咲希の3人で記念撮影。この日の風はまだ穏やかだった

全米女子オープン2日目 7番ホール定点観測(18選手)

勝みなみ
状況:7時の方向からの弱いフォロー
使用クラブ:58度
弾道の高さ:中弾道
結果:右バンカー
(フックめに打って右に抜けた)
スコア:パー

渋野日向子
状況:7時の方向からのフォロー
使用クラブ:50度
弾道の高さ:やや高めの中弾道
結果:手前バンカー
(思ったよりもフォロー風に乗らず)
スコア:ボギー

岩井千怜
状況:6時の方向からの弱いフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:中弾道
結果:左手前6.4メートルにオン
(狙い通りの低めの球を打った)
スコア:ボギー(3パット)

西郷真央
状況:6時の方向からの弱いフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:低めの中弾道
結果:左2.7メートルにオン
(ハーフスウィングでナイスオン)
スコア:バーディ

岩井明愛
状況:6時の方向からの弱いフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:高めの中弾道
結果:左手前3.7メートルにオン
(高さを少し抑えて打った)
スコア:バーディ

キム・ヒョージュ
状況:5時の方向からのフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:高めの中弾道
結果:左奥11.3メートルにオン
(計算よりも少し風に乗った)
スコア:パー

山下美夢有
状況:5時の方向からのフォロー
使用クラブ:52度
弾道の高さ:低めの中弾道
結果:手前バンカー
(計算よりも少しキャリーが足りなかった)
スコア:ダブルボギー(3パット)

古江彩佳
状況:5時の方向からのフォロー
使用クラブ:58度
弾道の高さ:高めの中弾道
結果:手前バンカー
(計算よりも風に乗らなかった)
スコア:パー

ローズ・チャン
状況:4時の方向から強めのサイドフォロー
使用クラブ:AW
弾道の高さ:高めの中弾道
結果:奥のラフ
(風に乗って飛び過ぎた)
スコア:パー

リディア・コー
状況:4時の方向から強めのサイドフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:低めの中弾道
結果:左手前3.5メートルにオン
(ハーフスウィングでナイスオン)
スコア:バーディ

アニカ・ソレンスタム
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:中弾道
結果:左手前2.0メートルにオン
(球の高さを抑えてナイスオン)
スコア:パー

ミッシェル・ウィ
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:56度
弾道の高さ:やや高めの中弾道
結果:左3.7メートルにオン
(高さを抑えたコントロールショット)
スコア:パー

チョン・インジ
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:やや高めの中弾道
結果:左奥10.4メートルにオン
(少し風に乗って飛んだ)
スコア:パー

畑岡奈紗
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:56度
弾道の高さ:中弾道
結果:手前バンカー
(計算よりも風に乗らなかった)
スコア:ボギー

コ・ジンヨン
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:56度
弾道の高さ:やや高めの中弾道
結果:左2.4メートルにオン
(計算通りに風に乗せられた)
スコア:バーディ

ネリー・コルダ
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:54度
弾道の高さ:中弾道
結果:奥9.7メートルにオン
(計算より少し風に乗った)
スコア:パー

レキシー・トンプソン
状況:5時の方向から弱めのフォロー
使用クラブ:56度
弾道の高さ:中弾道
結果:左手前9.7メートルにオン
(計算より風の影響が小さかった)
スコア:パー

西村優菜
状況:4時の方向からのサイドフォロー
使用クラブ:52度
弾道の高さ:やや高めの中弾道
結果:左3.3メートルにオン
(ゆったり振ってナイスオン)
スコア:パー

(PHOTO/Yasuhiro JJ Tanabe)

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