ビートルズを輩出した街にある会場ロイヤル・リバプールから車で1時間北上するとトミー・フリートウッドの故郷サウスポートがある。1969年のトニー・ジャクリン以来54年ぶりとなるイングランド勢の全英オープンチャンピオンの誕生を待ちわびる地元のファンの声援はこの日フリートウッドの好プレーの後押しをした。
「いつも自分にプレッシャーをかけすぎてしまいます。でも良いショットにも悪いショットにも声援と励ましを送ってくれてそれが僕の背中を押してくれました。故郷のすぐ近くで全英に出場できるのはとても幸せなこと。自分ができるのは良いプレーを続けて居るべきポジションをキープする。近いうちに勝つ順番が巡ってくることを願っています」
ヨーロッパで7勝を挙げ世界ランク21位につけているが未だ米ツアーでは未勝利。先月のRBCカナディアン・オープンではプレーオフに進出しながら惜敗。全米オープンでは最終日に63のチャージで5位タイ。前週のジェネシス・スコティッシュ・オープンでも6位タイと勝利の扉をノックし続けている。
勝てない理由を帯同キャディのイアン・フィニスは「礼儀正しすぎる」と指摘する。どちらかというと自己中のプロが多いなかフリートウッドは“いい人すぎる“というのだ。
「彼は人に頼まれるとノーといえません。ここでも多くの人の要望を叶えようと頑張ってしまう。彼にはもっと利己的になって欲しい。悪い人になれということではなく、もっと自分を大切にして欲しいのです」
そんなフリートウッドを公私ともに支えているのが愛妻クレアさんだ。スポーツマネージメントの会社に勤めていた彼女との出会いは8年前。前夫との間に2人の男の子を持つ彼女と恋におち2人は17年バハマで結婚。程なく2人の間に長男も誕生しフリートウッドは現在16歳、14歳、5歳の父親だ。
プライベートと仕事を分けようとしたこともあったようだがマネジャーとしてのクレアさんの手腕が長けており他に任せられないと現在も妻はフリートウッドのエージェント。結婚6年のいまもツイッターに「最高の女性」とコメントするなどアツアツだ。
年の差について聞かれるとフリートウッドは「2人の間で問題になったことはまったくない」。現在32歳と54歳だが「クレアがその年齢にしてはすごく若く見えるし、僕は年の割に老けているから釣り合っていると思う。彼女は本当にカッコよくて僕はカッコ悪いけれど、僕の中身はかなり成熟している」と語っている。
昨年セントアンドリュースでの全英オープン直後、フリートウッドは最愛の母をガンで亡くしている。享年60歳、若すぎる死だった。そのときもフリートウッドはこんなコメントを残している。
「(母の死といった)辛い思いをすると、人は他人に対してもっと優しくなれる。自分に与えられた試練を受け止め、そこからより良い人間になれると思う」
やはりフリートウッドは抜群にいい人だ。