逃げないゴルフを最後までやり続けた
櫻井心那選手に競り負けた「楽天スーパーレディース」でのことを「先週も優勝争いして負けていたので、今日はセーフティなゴルフだけは絶対にやめようと決めていた。逃げないゴルフで最後までやり続けること」を意識したと優勝会見で話しました。
2019年に7勝を挙げ二度目の賞金女王となった鈴木愛選手ですが、コロナの影響で中断した20年にスウィングを改造していました。7勝もして賞金女王も獲ったのになぜ?と思うかもしれませんが、「もうこれで良い」ということがないのがトッププレーヤーの宿命なのでしょう。それ以降、無観客試合が続いたこともあり19年のようなプレーはなかなか見られていませんでした。
それでも昨年は、南秀樹コーチと再タッグを組みスウィングをしっかりと進化させたことで、好スコアで囲み取材に呼ばれることも増えていました。スウィングが整理整頓できたタイミングでタッグを解消し、昨年後半はスウィングだけでなく、トレーニングも含めて自分で考えて取り組み、成長を感じていたといいます。
先週の「楽天スーパーレディース」で鈴木選手のキャディを務め、「北海道meijiカップ」では、最終組の同組で川崎春花選手のキャディを務めた河戸映プロキャディは、「改めて強い選手だと実感した」と話してくれました。
「今日の愛ちゃんはスキがなかった。唯一のピンチと思ったホール(6番)も得意のアプローチとパットとここぞの集中力でパーセーブ。元々ショートゲームのレベルは高いのに、ショットの安定感が益々出て来たので、いつでもスコアを出せるとんでもないレベルに上がっています」(川戸映キャディ)
左右の移動幅が少ないのに重心移動はしっかり
では安定感が増したスウィングを見てみましょう。2019年と2023年のスウィングを比較してみました。画像A左が2019年3月で右が2023年3月のスウィングですが、見た通りテークバックで右への移動が少なくなっています。
20年からは、特に上体の移動幅を少なくしていましたが、なかなか上手くハマっていませんでした。しかし改善を続けること3年、ショットの安定感につながるスウィングへと進化してきました。改善点は、移動幅が少なくなったことで、切り返しで頭の位置を元に戻す踏み込む度合いが少なくなったこと、移動幅が少なくなっても重心の移動はしっかりと行われているので、ボールへ力はしっかりと伝わっている点です。
それと、トップでのシャフトの向きがクロスせずにターゲットラインと平行かややレイドオフ気味になっている点です。そのことによって、軌道が安定し左右のブレも少なくなり、上体を揺さぶらなくなったことで距離感も合わせやすくなっています。
画像Bのインパクトを比べてみても、2019年(左)よりも体の傾きが少なくなっていることで、クラブヘッドの軌道の安定感につながっています。
コロナが明けて観客が制限なく入れるようになり、声援も送られるようになったこともプロスポーツ選手の彼女たちにとっては非常に大きなこと。多くの声援を力に変え、「ファンの皆さんに優勝を届けて恩返ししたい」と鈴木選手。ポイントランク争いに波乱を起こしそうな強者の復活で、女子ツアーは益々面白くなりそうです。