菊地絵理香選手は、シン・ジエと同い年の35歳。昨年も北海道で開催された「大東建託・いい部屋ネットレディス」で優勝、「ミネベアミツミレディス」でも2位タイの成績を残しているので、北海道出身だけに芝に慣れているせいかと思えば「本人は、北海道の芝も得意ではない」と今季7試合でキャディを務めた川口大二キャディは話します。北海道出身とはいえ高校は東北高校に進学したこともあり、芝に対する優位性で勝利しているのではなく、北海道に対する思い入れがあるに違いありません。
菊地選手はショット、アプローチ、パットとオールラウンドなプレースタイルが印象的なプレースタイルですが、「意外にも本人がパターは得意じゃないというんです」と川口キャディ。「パットがあまり得意ではないからこそ、ショットを近くにつけていかなくてはバーディが獲れない」と狭いエリアに切られたピンに対しても積極的に攻めるプレースタイルになっているといいます。
北海道らしからぬ猛暑や雨の影響で過酷な1週間となった「ニトリレディス」ですが、グリーンの状況を把握しピンまで打つ戦略が奏功したようです。プレーオフになった17番パー3では、グリーン手前にミスをしましたが、「グリーンを見に行くとローラーをかけた跡が見えたので、ある程度スピードはありそうだと感じました」と川口キャディ。それを知ってか知らずか、パーオンし優位に立っていたシン・ジエ選手は奥からオーバーし、まさかの3パット。左のバンカーに目玉になった岩井明愛選手もパーパットを外し、アプローチで寄せた菊地選手が川口キャディとのコンビで優勝を手にしました。
会場となった小樽カントリー俱楽部は、木や池の配置によりホールによってフェアウェイの右サイドや左サイドに置かなければピンを狙えないホールも多く、グリーンの傾斜も強いコースです。その小樽でシン・ジエ、上田桃子選手から10ヤードほど飛ばない菊地選手のスコアメイクの要になっているのは、ショット力とアプローチです。誰もが認めるアプローチの名手ですが、これまた本人はそれほど上手いとも思っていないと川口キャディ。
スタート前の練習でも、他の選手に比べて特にアプローチの練習時間が多いということはないといいます。練習グリーンで少し球を転がしてから、練習はウェッジから初めてPWか9番を打ち番手を上げながらも、途中で8番に戻ったり、UT、5Wと打ってもUTに戻ったりしながらドライバーまで打っていきます。仕上げはパー3の距離に合わせたクラブを打って終了。アプローチ練習のあとパット練習をしてスタートするというのがスタート前のルーティンになっているそうです。
スウィングを見てみると、左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握り、フェースの開閉をあまり使わないタイプのスウィングをしています。そのフェースの使い方が、方向性の良さやアプローチのうまさにつながっている可能性は大いにあります。
ポイントは、フェースを開かないようにして上げ、つかまる状態を作って切り返し、左手の甲がアドレスと同じ向きでインパクト。手が返るのは、フォローでシャフトが地面と平行になる位置くらいからで、スクェアやウィークグリップよりもタイミングが遅くなるというところです。
ストロンググリップのメリットと自分のプレースタイルをマッチさせている点が菊地選手の強さに結びついています。自分のプレースタイルを貫く菊地選手の姿が後半戦でも見られることでしょう。