海風と変化するグリーンコンディションへの対応力がスコアにつながった
練習日から最終日まで日差しと風の影響でグリーンの状況が変わる難しいコンディションでした。特に午後になるとグリーンは乾き、硬くなりスピードも増し、ラフからではグリーン周りのアプローチでも想定以上に転がりピンをオーバーするシーンが散見されました。
ポイントランク首位をゆく申ジエをはじめ、上位選手の山下美夢有、小祝さくら、稲見萌寧といった実力者が上位に揃ったのは、対応力の高さもありました。
首位の小祝さくら選手を2打差で追う神谷そら選手は、パー5でしっかりと伸ばし1打差で逃げ切りメジャー初勝利を手にしました。緊張で体が動かないような素振りは一切見せない落ち着いたプレーが印象的でした。
アンジュレーションの強いグリーン上では、乗せる位置によっても難易度が上がるだけでなく、入ったと思ったパットが思わぬ方向に曲がったり、カップをオーバーするなどメンタル面もタフさが求められました。
コースセッティングを担当した山崎千佳代プロは開催前日の会見で、「想定する優勝スコアは17アンダー、あとは風が演出してくれる」と話していました。初日の午後には、強くなった風と日差しの影響でグリーンは豹変し、選手を苦しめました。
そのなかで、神谷選手は「飛距離を生かし、短いクラブでピンのあるエリアに乗せる」という、今季3勝で凱旋出場した地元長崎出身の櫻井心那選手ともコンビを組んだ、古賀雄二キャディの言うとおりの戦略でスコアを伸ばしました。まずはその飛距離の源になるスウィングの切り返しに注目してみましょう。
可動域の広い大きなトップから大きな捻転差を作る
画像Aのようにドライバーではオーバースウィングになっていますが、本人も話すように肩回りの可動域が広いことと腰のラインを見ても回転量も大きいのでとても深いトップの形になっています。子供の頃から大人に混じって練習しているうちに自然と身に付いた「飛ばすための」スウィングが見て取れます。
その深いトップからの切り返しを見ると、深く回った腰を巻き戻す動作の中で肩のラインと腰のライン、つまり上半身と下半身の捻転の大きさの差に目がいきます(画像A中)。そこからねじられた体幹がゴムのように巻き戻す力で回転力を増していきます。このあと両足のかかとが浮くほどの地面に与えた反力を使ってクラブヘッドを加速させ振り抜くことで大きな飛距離に結びついています。
アイアンとドライバーではトップの大きさに違いが見られる
アイアンとドライバーのトップの違いを見ると、飛距離を求めるスウィングと距離感と方向性を求めるアイアンショットとの違いが見受けられます。
ストロンググリップで握り、フェース開閉を少なくしたインパクトゾーン
一方、方向性を担保する手首の使い方に注目してみると、左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握ることで、インパクトゾーンでフェースをターンさせるような動きは見られず、左手の甲がターゲットを向いたまま。インパクト直後の画像B右を見ても、左手甲側に折れるように使うことでフェースターンをおさえた動きをしていることが見てわかります。
グリップの握り方によって、縦方向に使うコックや、横方向に使うヒンジといった使い方によりフェースターンの度合いや手首の使い方は変わって来ます。スウィングは十人十色なので自分にマッチした使い方を身に付け、磨き上げることが何よりも大切です。
昨季の川崎春花に始まり、今季は櫻井心那、神谷そらとルーキー達が複数回優勝を挙げています。次のヒロインは誰になるでしょうか。
写真/岡沢裕行