昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は「イスに座ってクルクル回る動き」がテーマだ。
画像: キャスター付きのイスに座り、床を足で押して左に回る。「①体を右に回旋させたら」「②右足で床を押したあと」「③左足で押して」「④クルクルと回ります」と坂詰コーチ

キャスター付きのイスに座り、床を足で押して左に回る。「①体を右に回旋させたら」「②右足で床を押したあと」「③左足で押して」「④クルクルと回ります」と坂詰コーチ

イスを使うと足で動かす感覚がわかる

坂詰 前回、ダウンスウィングでは足で地面を押して、左脚を伸ばすという話をしました。

O編 バックスウィングからダウンスウィングへ切り返すときには、まず右足で地面を押す。それで骨盤が左へスライドしたら、左足で地面を押して左脚を伸ばしていく。そうすると、自然に腰が回ってスピードが出るっていう話だったよね。

坂詰 そうですね。ただ、この動きって、言葉で説明すると複雑でわかりにくいと思うんですよ。頭で考えながらスウィングすると、「ん? どうするんだ?」って、わからなくなっちゃう人も多いと思うんです。

O編 あぁ、そうだね。説明された動きを全部意識してスウィングしたら、動けなくなっちゃうかも。

坂詰 こういうとき、TPIでは、キャスター付きのイスを使って説明するんです。

O編 キャスター付きのイス? オフィスにあるような、車輪の付いてるやつ?

坂詰 それです。それに座って、クルクル回ってみるんです。そうすると、自然に、足で地面を押して体を回す感覚が体感できるんですよ。

O編 なんだか面白そうだね。詳しく教えてよ。

坂詰 まず、胸の前で腕を組んで、キャスター付きのイスに座ったら、体を右に回旋させます。

O編 バックスウィングしたときの体勢を作るんだね。

坂詰 ええ。そこから、足で床をグッと押して、両足を浮かせ、左にクルクルと回ってみてください。

O編 こんな感じ?

坂詰 いいですね。そのとき、いきなり左足で床を押しても上手く回れないでしょ? 初めに右足で床を押して、それから左で押したほうが速く回れるはずなんです。

O編 あぁ、確かに。いきなり左足で床を押して回るのは難しいな。これは、体を右に回旋させて、右にウェイトを乗せたところから回るからなんだろうね。

坂詰 ゴルフスウィングもそれと同じなんです。切り返しは右足で地面を押して、それから左足で押して、左脚を伸ばす。そうすると、体を素早く回せるんですよ。

ただ、このイスに座ってクルクル回る運動は、人によって、右足を強く意識したほうが速く回れる人と、左足を強く意識したほうが速く回れる人がいるんですよね。

イスで回るくらい足で押しているか?

O編 え~と、自分は右足を意識したほうが速くスムーズに回れる気がするな。

坂詰 ボクは左なんですよねぇ。

O編 どっちのほうがいいの?

坂詰 それは人それぞれでいいと思います。右足を意識したほうが速く回れる人は、スウィングするときも、右足で地面を押して切り返したら、そのまま右足で押しながら左脚を伸ばして加速する。
 
左足を意識したほうが速く回れる人は、右足で地面を押して切り返したあと、左足で地面を押して左脚を伸ばす動きで加速していくといいんじゃないでしょうか。

O編 しかしさぁ……。このキャスター付きのイスで回る運動をやってみて思ったんだけど、実際に球を打つときには、こんなに足で地面を押す感覚はないかも……。

坂詰 ふふふ。それはまだまだ脚を使えていないというか、腕や手の力に頼って打っている証拠だと思いますよ。

O編 ううう。事実だから仕方ないけど、面と向かってズバッと言われると傷つくなぁ。

坂詰 大丈夫ですよ。Oさんだけじゃありませんから。正直、女子プロだって、全員がしっかり脚を使って打っているかといったら、そんなことはありませんからね。逆に言えば、そこがわかったら、飛距離も方向性もアップすると思いますよ。

O編 そ、そうか……。頑張って練習してみるよ。

坂詰 この脚の使い方は、ボクがプロを教えるときにはこだわりたい部分なんです。あとは、飛距離を伸ばしたい人や、高い意識を持ってスウィングに取り組む人にも、ぜひ試してもらいたい。ただ、アマチュアのプレーヤー全員が、絶対にこの動きを身につけなくちゃいけないとは考えていないんです。いつも言っているように、練習やトレーニングに時間が取れない人が、脚で打つスウィングを身につけるのはやさしくありませんからね。

でも、イスで回る運動は、脚を使う感覚がよくわかると思うので、一度体感してもらうと、いろいろな気付きがあると思うんですよね。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月24日号「ひょっこり わきゅう。第33回」より

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