5月に受けた腰の手術からの復活優勝
5月に腰の状態が悪化し、2週連続で欠場して手術を受けることを決断した原選手。8月の「北海道meijiカップ」で復帰するまでに3か月を要しましたが、当時はあまりの痛みに「手術台が天国に見えました」と話した記憶が思い出されます。
復帰後は体力も落ちているなかで、練習場では上手く打てていても試合になると乱れるシーンを見てきました。ラウンド後の練習で話しかけると「腰は痛くないけど、まだトレーニングが十分にできていないから、振ろうとすると曲がるんですよね」と飛距離を武器にショートアイアンで攻める原英莉花のプレースタイルを取り戻そうと、復活をかけた道のりを歩んでいる姿が印象的でした。
前週の「ミヤギテレビ杯ダンロップトーナメント」で「上体の捻転と右足を使う動きが連動したことで、飛距離だけでなく、ショットの再現性も高くなっていると思います」と、それまでの力で打ちに行っていたスウィングから、余計な力感のないスムーズなスウィングへと復調したきっかけを優勝会見で話しました。
クラブセッティングも優勝の大きな要因
もう一つ、クラブセッティングも上手く機能しました。ドライバーのヘッドはいくつかのモデルを投入してきましたが、数試合前にキャロウェイ「パラダイムツアー」9度に変更。シャフトは開幕戦から使用しているUSTマミヤ「ジ・アッタスV2」フレックス5Sを46インチ仕様で使用していました。
今季は「USTマミヤ」のシャフトを使用し、ツアー担当者と細かく調整してきていました。ウッド類は「ジ・アッタスV2」、UTは「アッタスMB HY」、アイアンからウェッジまで「アッタスFF」と、すべてUSTマミヤのシャフトでセッティングしています。
原選手の入射角や軌道といったスウィングタイプ、プレースタイルに合わせたヘッドとシャフトのマッチングがハマったこともツアーで優勝するための大きな要因になりました。
長い手足がバラバラに動かない
では、アップダウンのある芦原ゴルフクラブ海コースでパーオン率3位だったスウィングを見てみましょう。
手足が長く、ともするとバラバラに動きやすい体型ですが、わきを締め体の正面から外さないようにテークバックしていきます。
右ひざを不動にし、腰の回転量や左ひざの動きが少ないので、長い足がグラつくことなく深い捻転のトップを作っています。腰から下を大きく動かしながらタイミングを合わせるタイプのスウィングもありますので、自身の可動域や柔軟性を合わせながら再現性の高い動作を選ぶことが大切です。
左足を踏み込んで切り返すと、バックスウィングで作った腰の回転量と胸(胸椎)の捻転差が大きくなり体幹のねじりが増幅されています。腕の力感やクラブを握る強さが強過ぎないことで、足、腰、体幹とねじり戻される動きの順番が整い、最終的にクラブを引っ張りながら効率良く加速させて行きます。
「右足の力を使えていなかった」状態のスウィングでは下半身から上半身へと動きの連動が悪くなっていたのでしょう。スウィング中の足裏の圧力を計測してみると、テークバックの始動で左から右、トップからの切り返しで左、ダウンで右、フィニッシュで左と5回の圧力の移動が計測できるといいます。なかなか意識できるこではありませんが、ゆっくりとした素振りであれば体感できるはずです。
原選手は、10月17日からフロリダで開催される米ツアーのQTセカンドステージに挑戦します。渡米前の大会の優勝という最良の結果を得たことで自信をつけ、ファイナルへと駒を進めることでしょう。
写真/姉崎正