自ら持つポテンシャルを引き出し念願の初優勝を「日本オープン」で飾った岩崎亜久竜選手。初めて紹介されたのは3年前の「ZOZOチャンピオンシップ」で、現在は松山英樹のコーチも務める黒宮幹人コーチからでした。
昨年は自らの力で「ZOZOチャンピオンシップ」に出場し、初日の出遅れが響き67位と悔しい結果に終わっていました。
昨季は3度の2位を含むベスト10フィニッシュが10回と着実に力をつけ、今季の欧州ツアーに参戦していましたが、レベルの高さや芝の違いなど戸惑うこともあり、4か月間予選を通過できない時期も経験していました。
自身も黒宮コーチの指導を受けプロテストに合格した湯本開史キャディは、岩崎選手を黒宮コーチに引き合わせ、キャディを務めながら欧州でも共に戦ってきました。その湯本キャディに話を聞きました。
「予選落ちが続いて少し自信を失くしていましたが、僕は今年勝てると思っていたのでそれほど気にはしていませんでした。目の前の一打に集中できるようになって9月のシンハンドンヘ(アジアンツアー、韓国、JGTO共催試合)から予選を通過できるようになってきていました」(湯本開史キャディ、以下同)
少しずつ自信を失いスウィングも崩していたところ、黒宮コーチやトレーナーのサポートもあって万全な状態で「日本オープン」をスタートできたといいます。
「3日目に(アンソニー)クエイルと回って、打つ前に目をつぶって明確にイメージする姿を見て、あれを取り入れよう、となりました」
スウィング、クラブ、キャディ、フィジカルと優勝への要素が揃い、自身のプレーも確立できたことで優勝争いの中でも終始落ち着いたプレーができたようです。最終18番パー5で左ラフからの2打目を見事にグリーンに乗せたショットは、岩崎選手の成長を表わしたショットではないでしょうか。
足の大きな力を使った効率と再現性の高いスウィング
では「日本オープン」を制したスウィングを見てみましょう。
オーソドックスなスクエアグリップで握り、スタンス、ボール位置もお手本のようなアドレスです。前傾姿勢に沿って左肩が下がりながら胸がしっかりと回っています。
そのことによってバックスウィングでは左サイドの側屈が入り、前傾をキープしたまま体幹がねじられていきます。
左足を踏み込んで切り返したら、右足を踏み込んで骨盤を回転させ、上半身へと回転のエネルギーを伝えていきます。
手先を使い過ぎず、地面を踏み込む足の大きな力を使い、飛距離と再現性の高いスウィングを身に付けています。
単なるウェイトトレーニングでフィジカルを上げてきたのではなく、コーチとトレーナーが連携し、目指す動きを作り上げてきたからこそ手に入れたスウィングだと言えます。
クラブセッティングで注目したのは、56度、60度のウェッジ構成。PGAツアーでは56度をハイバウンス、60度はノーマルかローバウンスを採用する選手が多く、岩崎選手もタイトリスト「ボーケイSM9」の56度はバウンスがしっかりと効くFグラインドの14度にし、60度はローバウンスのTグラインドを採用しています。
2年前の「ZOZOチャンピオンシップ」でコリン・モリカワにウェッジについて尋ねると「手前から寄せるアプローチ、ラフや遠いバンカーから万能に使えるハイバウンスの56度とシビアな状況ではローバウンスの60度が役にたつ」教えてくれました。もちろん飛距離に合わせて54・58度の組合わせにすることも大いにアリでしょう。
最後に2打差で敗れた石川遼選手。ドライバーを振り続け、攻めるゴルフはギャラリーを大いに沸かせました。
石川選手には、40代から50勝以上を重ね圧倒的な強さを誇ったジャンボ尾崎選手のような復活劇を望んでいるファンも多いことでしょう。私もその一人ですが、その日は着実に近づいて来ている印象を持ちました。
今週「ZOZOチャンピオンシップ」に出場しPGAツアー選手と競う岩崎亜久竜、石川遼選手にも注目していきましょう。
写真/姉崎正