米女子ツアーはシーズン大詰めを迎え、マレーシアでおこなわれたメイバンク選手権ではフランス人のセリーヌ・ブティエがアッタヤ・ティティクルとの9ホールに及ぶプレーオフを制し今季4勝目を挙げた。フランス史上最高のゴルファーとなったブティエは年間ポイントでもトップに立ちまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。ところで昨年のいま頃、人生の春を謳歌していたリディア・コーの名前をここのところすっかり耳にしなくなった。いったい彼女に何が起きているのか?

22年はコーにとって特別なシーズンだった。最終戦のツアー選手権に優勝しプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝き、5年ほど遠ざかっていた世界ランク1位にも返り咲いた。

私生活では「もっとも愛する人と結婚もしてまるでシンデレラストーリーのような1年だったと思います」と表現している。

しかし今シーズンは初戦で6位タイに入ったものの以降低迷。10月のBMWレディスでトップ3に入るまでポイントランクは150位台だったが現在101位まで盛り返したとはいえ昨年1位だったことを考えると信じられないほどの低調ぶりである。

画像: 世界ランク1位に返り咲いた昨年から一転、今年は苦しいシーズンとなったリディア・コー(写真は2023年の全米女子オープン 撮影/田辺安啓)

世界ランク1位に返り咲いた昨年から一転、今年は苦しいシーズンとなったリディア・コー(写真は2023年の全米女子オープン 撮影/田辺安啓)

シーズンがはじまる前、コーは「自分に大きなプレッシャーをかけていた」と打ち明ける。「たとえいいシーズンだったとしても翌年は新たなスタート。あっという間に色々なことが変わってしまう。これまで浮き沈みを経験してきたので、いいプレーを続けたくてもできないことも知っています。物事が上手くいかないときは立て直すのが本当に大変です」

4月のメジャー初戦シェブロン選手権で今季初の予選落ちを喫したとき彼女は異変を察知した。平均ストロークナンバー1だった昨年に比べ1ラウンドで3打も悪いのは「ショートゲームが機能していない」のが原因だと。「完璧を求め過ぎて迷路にハマってしまった」という。

一向に調子が上がらず「たくさんの思いが渦巻いて、もしかしたらその時期(引退)なのかな、と思いはじめていました」。

26歳の彼女はプロになって今年が9年目。この若さで誰も経験したことのないような道を歩んできた。14歳でプロの試合に勝ち、これまでにツアー通算19勝。他のプロが生涯かけても成し遂げられないことを10代でコンプリートした。

その彼女にとって転機となったのは8月カナダでおこなわれたCPNC女子オープンの3日目。その日キャリアワーストの82を叩いた後、コーはステイシー・ルイスの両親と話をした。話しているうちに感情がこみ上げ涙が止まらなくなった。

泣きじゃくるコーをルイスの母はこういって慰めた。「何があったってご主人はいつもあなたのそばにいてくれるわ。たとえ62で回っても72でも82だって同じよ」

「この言葉にハッとしました」とコー。「周囲の人たちに私がどれだけ感謝しているか。これから先どのくらいゴルフを続けられるかわからないけれど、やるからには皆のために全身全霊を傾けて頑張ろう、って改めて思ったのです」

結果はまだ十分には出てはいない。ただ直近の15ラウンドで60台が8回と上向いていることは確か。以前「30代までプレーするつもりはない」と引退について率直に語っていたコーがクラブを置く日。それは近すぎる未来ではないことを願いたい。

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