みなさんこんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野 達郎です。今回はバターフィールド・バミューダ選手権で優勝しましたカミロ・ビジェガスをスポーツボックスAIで分析してみましょう。
ボールより遠くに構えスクエアにインパクトする
パットのラインを読む際の独特の構えから「スパイダーマン」のニックネームで知られたビジェガスは41歳のベテランですが、そのスウィングは現代のスウィングの主流に沿った特徴が随所に見られます。特徴は(1)ヒールで構えてインパクトはスクエアに戻す (2)シャットフェースのトップ (3)インパクトで手元と骨盤が浮かずに後方に下がる、の3点が主な特徴です。それでは早速見てみましょう。
まずアドレスでの最初の特徴は、ヒール寄りというよりもボールよりも遠くにヘッドを置いて構えている点です。この構えだと手や骨盤が前に出てしまうとネックに当たってシャンクになりますので、体が後方に下がらないと打てません。お尻がボール方向に近づかずに後方に下がるようにスウィングすると、ダウンスウィングで両手が下りてくるスペースが確保できます。そうすると手元が浮かずにクラブのライ角に近いインパクトをすることができ弾道が安定します。インパクトで後述します。
次にトップ(P4)を見てみましょう。トップでのフェース面を見ると、ほぼ真上を向くシャットフェースですが左手首は真っ直ぐです。これは左手をストロンググリップに握ると、アドレスでは左手首は少し背屈が入り、トップで左手首が真っ直ぐになるとフェースが閉じるので、その結果フェースが上を向きます。一方で左手をスクェアグリップに握ると、同じ左手首の形ですとフェースは斜め45°ほど右を向きます。左手のグリップの種類によってトップでの左手首とフェース面に違いが出るポイントとして参考にして下さい。
続いて切り返し(P5)をテークバック(P3)と比較してみましょう。SPORTSBOX AIのデータ項目「MID-HANDS THRUST」は、両手がアドレスの位置に比べて前後にどれだけ移動したか?を表す項目ですが、P3が−38cm背中側に対して、P5が−9.8cm背中側と、切り返しはテークバックに比べて前に手が出ています。
黄色のラインがバッグスウィングのハンドパス(両手の軌道)、オレンジのラインがダウンスウィングのハンドパスです。オレンジのラインが前方に出ているのが見て取れます。この手が前に出ることで、クラブは背中側に倒れるシャローイングが起こり、シャローに下りてからP6~P7にかけてクラブが立つ結果、オンプレーンに下ろすことができるのです。
続いてインパクト(以下P7)を見てみましょう。インパクトでは両手と骨盤のTHRUST(アドレス位置からの前後の移動)に注目してみましょう。インパクトでは両手は−4.8cm後方、骨盤(PELVIS THRUST)は−5.6cm後方と、いずれもアドレスに比べて後方に下がっています。スポーツボックスAI社が独自に調査したPGAツアーレンジ(範囲)は、両手の前後移動が2.5cm〜9.1cm前方、骨盤の前後移動が−1.8cm後方〜2.8cm前方ですので、いかにビジェガスが後方に動いているかがAI分析によって確認できます。
この後方に下がる動きを、ビジェガス本人のSNSでスクワットダウンの動きを練習している動画で見てみると、骨盤や背中の前傾角が起き上がらず、両手も浮かずに体の近くを両手が通ることでインパクトライが安定する効果があります。インパクトライが安定することは、そのまま打点の安定に繋がりますのでショットの精度が高まります。このタイプはシャットフェースからフェースを返さずにパワーフェードを打つ選手に多い特徴で、今回2位に入ったアレックス・ノーレンもこのタイプです。
皆さんがビジェガスから学べる練習ドリルを考えてみると、「クラブをヒール寄りで構えて、インパクトは芯で打っている点」です。前後にボールを2つ並べて、奥側のボールにクラブをセットしてアドレスし、手前側のボールを打ちます。このドリルは両手や骨盤が浮いてボールに近づくとたちまちシャンクします。現在ヒールヒットやシャンク、アーリーエクステンション(骨盤がボールに近づいてしまう)による両手の浮きに悩んでいる人には試してみる効果があります。逆に現在トウヒットやトウシャンク、フォローで両手が縮こまってしまう人はあまり真似しないほうが良いでしょう。
今回は、カミロ・ビジェガスのスウィングを分析しました。様々な苦難を乗り越えて約9年ぶりの復活優勝を果たした瞬間、天を見上げたビジェガス。幼くして旅立った愛娘のミアちゃんも天国でパパの優勝に微笑んでいることでしょう。