「趣味をすべて封印してゴルフのためにやってきた」(青木)
青木瀬令奈は勝負どころを逃さなかった。
通算12アンダーで西郷真央、原英莉花と並んで迎えた17番パー5。
重圧のかかる場面だったが、ピンまで残り55ヤードの第3打を58度のウェッジで80センチにピタリとつけた。
これが事実上のウィニングパット。ど真ん中からしっかり沈めて、スコアを通算13アンダーに伸ばすと、右手を挙げてギャラリーの声援にこたえた。
最終18番も集中力を維持して勝ち切った。第2打でグリーンをとらえたものの、ファーストパットは1メートルオーバー。カップを過ぎると左に流れる難しいフックラインを読み切って、返しを決めた。
右手の拳に力を込めて小さくガッツポーズ。二人三脚で戦ってきたキャディの大西翔太コーチから労いを受けると、ようやく晴れやかな笑みを浮かべた。
「小さなガッツポーズ? 私の中では結構渾身のガッツポーズだったんですけど……。趣味の宝塚とか漫画とかゲームとかお酒とか、趣味をすべて封印してゴルフのためにやってきたので、今日はちょっと飲みたいなと思います」
「飲み過ぎるとトップで手の位置が下がると言われて、禁酒しました」(青木)
得意の小技が切れまくった。
首位の岩井千怜に2打差でスタート。1番で4メートルを入れて流れを呼び込み、2番も3メートルを決めて連続バーディ。5番も3メートルを決めた。
大西コーチは勝因をこう分析する。
「やっぱり17番の3打目です。あれが寄っていなかったら優勝は難しかった。18番は距離が長いので、飛ばない青木プロには不利。プレーオフも18番を使いますから、プレーオフにはしたくない。17番で決められたのは本当によかったです。今週は勝負どころのパッティングを決めることができ、5メートル以内はほとんど入った。1、2番のバーディも大きかった。このコースは飛ばし屋が有利ですが、シード選手で一番飛ばない青木プロが優勝した。ゴルフの面白いところですよね」
この優勝は青木にとっては初めての年間複数回優勝となる。
「複数回優勝を今年こそはという気持ちでやっていたのですが、トレーニングの成果だと思っています」
優勝インタビューでは禁酒に話が及んだが、優勝記者会見でも禁酒のきっかけなどについての質問が出た。
「お祝いの席だったり、実家に帰った時に父と晩酌するくらい飲んでいたのですが、コーチからお酒を飲んだ翌日はトップで手の位置が下がると言われて、禁酒しました」
ストイックな生活も原動力となっての通算5勝目を達成し,次なる目標にはメジャー優勝を掲げた。
「次はメジャーで優勝したいのが一番です。去年のサロンパス(ワールドサロンパスカップ)で2位だったのも悔しいです。メジャーは実力を積み重ねてきて、何年かして勝てるものだと思っています」
次戦は今週宮崎で開催されるメジャー大会の最終戦、「ツアー選手権リコーカップ」。2週連続優勝でのメジャー初戴冠にも可能性が広がる。
「来週も苦手意識が強い大会ですが、去年より成長したなって感じられるようにしたいです」
ベテランの域に達しても、なお挑戦し続ける青木の今後に注目だ。