プロゴルファーやジュニアゴルファーをはじめさまざまなスポーツ選手のメンタルアドバイザーを務める丹波幸一氏。元プロ野球の審判という異色の経歴を持つティーチングプロ、丹波氏がゴルファーに役立つ”心の操作法“を連載形式で語っていく。第7回のテーマは「メンタルトレーニングの大切さ」だ。
画像: ダンロップフェニックスで大会史上初のアマチュア優勝を果たした杉浦悠太(Photo/Hiroaki Arihara)

ダンロップフェニックスで大会史上初のアマチュア優勝を果たした杉浦悠太(Photo/Hiroaki Arihara)

なぜアマチュアが"アレ"を達成できたのか?

ここ数年、男子プロツアーでアマチュアの選手が優勝するケースが目立ちます。過去の男子ツアーの歴代優勝者を見てもその傾向は明らかです。

1980年 倉本昌弘 中四国オープン
2007年 石川遼 マンシングウェアオープンKSBカップ
2011年 松山英樹 三井住友VISA太平洋マスターズ
2019年 金谷拓実 三井住友VISA太平洋マスターズ
2021年 中島啓太 パナソニックオープン
2022年 蝉川泰果 パナソニックオープン・日本オープン

そして、

2023年 杉浦悠太 ダンロップフェニックス

近年、ゴルフ界では何が起きているのでしょうか? 実は、日本ゴルフ協会は2014年にナショナルチームのヘッドコーチにオーストラリア人を迎え入れ、世界水準の強化プログラムに添ったチーム強化を目指しました。

その中で着手されたのがショートゲームの強化と、もう一つは専門家によるメンタルアドバイスでした。ロングゲームの飛距離重視が目立っていた傾向に、スコアの65%をショートゲームが占めることから、練習量の65%をショートゲームに割く意識改革が行われました。

世界水準の中には分業制も含まれています。日本ではコーチが全てを抱え込むのに対し、海外では分業制が成り立っています。ロングゲーム、ショートゲーム、パッティング、フィットネストレーナー、メンタルトレーナー、管理栄養士など、それぞれ専門分野のスペシャリストが個を伸ばすようにチームワークで1選手を支えています。

2014年当時のナショナルチームメンバーには金谷拓実プロが在籍していました。そしてそのプログラムの下で育ったプレーヤーが、プロの試合でアマチュア優勝を果たしたケースは今回の杉浦悠太選手で5勝目になっています。

技術的な向上やレベルアップもあると思いますが、元々潜在能力のあるレベルの高い選手らが、心の部分、心の土台をメンタルトレーニングによって備えることで、大きく飛躍している結果と言えるでしょう。2014年以降のナショナルチーム入りメンバーは、世界レベルで戦える選手も増えてきました。

メンタルの部分が、どれだけ選手の可能性を引き出しているのか?

スウィング改造や飛距離アップ、フィジカルトレーニングの成果というのは、見た目やデータを比べれば、どれだけ向上しているのかは、すぐにわかります。しかしメンタルの部分は、他人から目に見えない部分であり、取り組もうとしても、どこで学ぶべきなのか? 何から始めるべきなのか? 誰から習うのか? など、最初につまずきます。そしてメンタルは結果が目に見えないことで、継続性もなかなか難しいものです。

ゴルフの4大要素、技術・道具・自然・メンタルで、メンタルは全ての土台で基礎となる部分です。 しかし、ジュニア時代からこの土台にフォーカスしたレッスンは欠けてきました。心の部分は、ほとんどが経験論や根性論などに頼ってきたため、本当の心の操作方法を学んだ上でゴルフをしている人には出会ったことは少ないです。

これはゴルフに限ったことだけではなく、日本のプロスポーツ界のメンタルへの意識と勉強は、世界レベルと比べると大きな遅れをとっています。

日本と韓国のゴルフ界だけを比べても、ここには大きな差があります。韓国ゴルフ界はジュニア時代から、心の操作方法を学ぶのは当たり前になっていて、プロになった時点では既に備わっているという環境です。

スポーツメンタルの歴史を振り返る

メンタルトレーニングの発祥は実は古く、旧ソ連が宇宙飛行士用に取り入れたことが始まりと言われています。

宇宙飛行士のプレッシャーや不安を解消するトレーニングとして統計学が採用され、その効果を見て旧ソ連がスポーツ界に導入しました。

1957年に旧ソ連のオリンピック強化チームがメンタルトレーニングを開始し、1960年のローマオリンピックでは、金メダル43個、銀メダル29個、銅メダル31個、トータル獲得メダル数103個という成績を収めました。

その後開催された五輪でも、旧ソ連はめざましい活躍をしており、各国に影響を与えました。

スポーツ心理学は一気に世界に広がり、1984年のロサンゼルスオリンピックではアメリカやカナダも本格的に導入しました。その活躍を目の当たりにした日本では、1985年から日本代表選手にメンタルトレーニングを導入しましたが、なかなか根付かなかったそうです。

1989年ソウルオリンピックでメンタルトレーニングを採用した国が一定の成果を挙げた結果を受けて、1994年ようやく日本でもスポーツ心理学の研究が始まりました。

メンタルトレーニングは、今でもオリンピック強化選手限定みたいな広がりがあり、プロゴルフ界やプロ野球界ではなかなか浸透していないのが悲しい現状です。

超一流のメンタルとは?

現在ナショナルチーム入りしているメンバーに世界レベルで通用する予備軍が育ってきているのは事実です。私のメンタルキャンプのセミナー受講生の実績から見ても、メンタルの重要性が結果に出てきています。

・三流は、メンタルが大切とわかっていても根性で乗り切ろうとします。

・二流はメンタルを知っているふりをして本番で試そうとしても通用しません。

・一流はメンタルを勉強して、コツコツと実践していきます。

そして

・超一流は心構え、挨拶、日常の会話、感謝、笑顔、整理整頓から変えていきます。

今シーズンだけでも日本ジュニアチャンピオン、女子プロテストトップ合格者、日本オープンを制した選手、男子ツアーでアマチュア優勝した選手などに携わってきました。心の土台を理解することが、どれだけ選手の可能性を引き出しているかに注目していただけることを願ってます。 

This article is a sponsored article by
''.