「年間女王を取ることができてうれしいです」(山下)
貫禄さえ漂う優勝だった。
先にホールアウトした38人の出場選手と大勢の観客が特設スタンドから見守る18番グリーン。山下は1.5メートルのウィニングパットをカップ右淵から決めた。沸き上がる拍手に向かい、帽子のつばを右手で押さえてペコリとおじぎ。優勝インタビューでは
「1試合1試合というふうに考えてプレーしてきたんですけど、またこうして年間女王を取ることができてうれしいです」
と笑顔で喜びをかみしめた。
序盤は苦しい展開だった。
2位に3打差をつけてスタートしたが、3番パー4で6メートルのパーパットが入らず、ボギーが先行。5番パー3も第1打をグリーン左のバンカーに打ち込んでボギーをたたいた。
悪い流れを変えたのは8番パー3。191ヤードを4UTで手前11メートルに乗せ、このバーディパットを見事に沈めた。
「今日は前半でボギーが2つ先行して、いいリズムではなかったんですけど、8番でロングパットのバーディを決めて、そこからて立て直すことができて、後半もバーディが取れたと思います」
後半は13番パー5で手前から6メートルを入れて、通算8アンダーで並んでいた高橋を突き放し、16番パー3は6I(6番アイアン)で1メートルにピタリとつけて差を広げた。
「すごいいい1年だったなと思います」(山下)
記録ずくめの優勝だった。
2年連続の年間女王は1988年ツアー制度施行以来、15、16年のイ・ボミに次いで6人目で22歳116日の達成は史上最年少記録。
最終戦連覇は07、08年の古閑美保以来4人目。
2年連続年間5勝(以上)は不動裕理、宮里藍、イ・ボミに次いで4人目の快挙となった。
さらに2年連続で平均ストローク60台(69.4322)を達成して、年間獲得賞金も2億円台(2億1355万4215円)に乗せた。
「2年連続女王はあまり実感はないんですけど、1年間怪我なく戦えたことは、すごいいい1年だったなと思います。(今週は)海外でも成績を出していて技術もすごいジエさんといい緊張感の中で一緒に戦えたのが、一生残る試合になりました」
今季は6月のニチレイレディスで4勝目を挙げて以降はここまで優勝がなく
「今年も海外に行って、帰ってきてから自分らしいプレーができていなかった」
と振り返ったが、好調を1シーズンキープできていなくても、平均ストローク69.4322は歴代最少。
「平均ストロークを上げられた(昨年69.9714)のはひとつ成長できたかなと思います」
と自己評価した。
2年連続年間女王、同平均ストローク60台を成し遂げ、次なる目標に注目が集まる。
「今年は海外メジャーでいい成績を出せなかったので、しっかり準備して優勝争いできるように、上位でプレーできるように頑張りたいです」
来年はパリ五輪イヤーでもあり、
「五輪にはすごい出たいと思います。そこに日本代表として出たいというのもありますし、五輪は特別というか記念に残ると思う」
不動、宮里が一時代を築いたように、山下も新時代の扉を開けようとしている。