R&AとUSGAがゴルフボールの飛距離制限を発表した。プロやトップアマチュアなどのエリート競技では2028年から、一般ゴルファーは2030年から、新認定球を使用しなければならなくなる。識者、アマチュアゴルファーの意見は?
画像: マキロイのようにやっぱり遠くへ飛ばしたい? 2022‒23PGAツアードライビングディスタンス TOP5:1位 R・マキロイ 326.3Y 2位 P・クエスト321.7Y 3位 B・マシュー321.3Y 4位 C・チャンプ317.9Y 5位N・ホイガード 317.7Y(PHOTO/Blue Sky Photos)

マキロイのようにやっぱり遠くへ飛ばしたい? 2022‒23PGAツアードライビングディスタンス TOP5:1位 R・マキロイ 326.3Y 2位 P・クエスト321.7Y 3位 B・マシュー321.3Y 4位 C・チャンプ317.9Y 5位N・ホイガード 317.7Y(PHOTO/Blue Sky Photos)

●いかに飛ばすかはゴルファーの夢

いかに飛ばすかは、象徴的にいうとゴルファーの”夢”なんです。私もプロを目指したときから、師匠にドライバーを持たせられて、いかに飛ばすかやってきました。残念ながら、私は飛ばし屋にはなれず、だからこそ飛距離のなさを他の技術でカバーすべく奮闘しました。とにかく飛ばすということはプロアマ問わず、ゴルファーの果てしない願望で、それを規制するのは残念と言わざるを得ません。ただ、プレーヤーはルール遵守が鉄則です。ルールのなかで、いかにいいパフォーマンスができるかを考えるのが大事だと思います。(森口祐子、テレビ解説者・プロゴルファー)

●楽しみが減る

ただ単純に、飛ぶと楽しい。楽しみが減るなーと思いました。(50代男性、千葉県)

●まさかの追い打ち?

年々飛距離が落ちてきているのに、まさかの追い打ち?(70代男性、東京都)

●遅まきながら議論沸騰でやっと規制に動いたというのが真相

この問題は、30年も前からUSGA、R&Aのルールコミッティ(競技委員会)で議題に上り、私は賛成し続けていた数少ない1人でした。R&Aのマイケル・ボナラックがセクレタリーだった時代(1983~1999)には、ぼちぼち手をつけなければいけないと言っていたのが、次のピーター・ドーソンになって議論はやっと端緒についたというくらい。計測担当も2人のみで「選手がトレーニングをしているから」などと、のんき気なものでした。

USGAでも初速計測のロボットが1台あって担当も数人だけ。対して用品・用具メーカーは200人もの技術者がNASAのハイテクノロジーを用いて24時間、開発競争。あっという間に2~3ヤードから50ヤードの距離になっていました。ようやく重い腰を上げ「全英オープン開催コースをどうするか?」などが議題になりました。折も折、米国では伝統ある名門コースの開場当時への回帰改修がブームに。遅まきながら議論沸騰でやっと規制に動いたというのが真相でしょう。(川田太三、R&A、USGAレフリー)

●ボールへの規制がなされるのは、僕は賛成です

このままではどのコースも使えなくなって、競技そのものが成立しなくなってしまいます。それにゴルフという競技がただの飛ばしっこになってしまうのを防げると思っています。やはり、プロの曲げたり、止めたりする華麗なスキルが見たいと思うのは僕だけじゃないと思いますよ。ボールの初速制限は、どういう方法でやるのかはわかりませんが、現在のボールを1ミリ大きくするだけ、ほんの少し軽くするだけでもゲームのスタイルが変わると思います。ゴルフで一番難しいのは、見えない空気(風)をどうコントロールするか、です。空気の影響を個人の技術でどう克服するか……。コースの難度も、それで浮かび上がらせることができると思います。(佐渡充高、テレビ解説者)

●どこかで規制しなければゴルフのレガシーが無になってしまう

ボール規制、大賛成です。日本人は用具の進化には寛容ですが、ゴルフ発祥の地で、レガシーであるコースが無用になるのR&Aにとっては我慢ならないことだと思いますよ。このままでは、例えば全英オープンを第1回から12回連続、合計24回も開催したプレストウィックGCなどは、どう手直ししても使えません。名門ゴルフ場のゴルフ文化の継承が不可能になってしまう状況です。あのセントアンドリュース・オールドコースだって、パー4でも毎ホール、前の組のホールアウトを待たなければならない状態です。

米ツアーでは8000ヤードのスタジアムコースで試合がやれますが、全英オープン開催地ではそうはいかない。どこかで規制しなければゴルフのレガシーが無になってしまう……ということですよ。しかし、規制がかかったとしても、メーカーはその制限のなかで、また技術革新をして"飛ぶボール"を作るでしょうね。野球もそうじゃないですか。制限と革新、これまでもそうであったように、これからもこのイタチごっこは続くと思います。ただ、本来のゴルフを見つめ直そうという意味で僕は規制には大賛成なんですよ。(タケ小山、テレビ解説者・プロゴルファー)

●プロだけじゃダメ?

プロゴルファーにだけ規制をかけるとかできないんでしょうか。私なんて大当たりして250ヤードですけれど……。(70代男性、福岡県)

●ドライブ&ウェッジばかりじゃ大味すぎて面白くない

野球もボールとバット、その時々の状況に応じて規制が変わってきました。投高打低の時は地味でつまらないから、ホームランの数を増やすために飛ぶボールとバット(圧縮バットや金属バット)を採用しました。反対に打高投低になると乱打戦ばかりでつまらないと、飛ばないボールに戻しました。プロ野球はプロスポーツの興行だから面白くするための方策なんですよ。

ゴルフも同じく興行であることに間違いありません。ボールが飛びすぎて、ドライブ&ウェッジばかりじゃ大味すぎて、スリルも何もなく見ていて面白くない。ゴルフは自身でプレーする&見るという要素があるので、それぞれ意見は違ってくるかもしれませんが、興行として面白くするという点で規制はあってしかるべきだと僕は思います。(川上貴光、スポーツライター)

●飛距離の競技になっている

ゴルフはゲームのはずですが、飛距離の競技になっている感があります。僕は今日、ヒッコリーシャフトのクラブでゴルフをしてきたんですが、ボールは飛ばないし、まさにゲームを楽しむ感覚になれました。ボールの性能開発で、プロの間ではもうすぐ”400ヤードの世界”に突入するでしょう。そうなると既設のゴルフ場がいくら距離を延ばすといっても、限界が来るでしょう。

どこかで歯止めをかけないといけない時期に来ているのでは。いったん規制をかけて、都合が悪ければ元に戻せばいいし、決めたものは絶対に変えないというのも頭が堅いと思います。とにかくこのままでは、ゴルフの持つゲーム性の破綻は目に見えています。(水巻善典、プロゴルファー)

※週刊ゴルフダイジェスト2024年1月2日号「山を動かす~飛ばないボールの導入、どう思う?」より

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