初優勝を含むシーズン2勝を挙げるなど、2023年の女子ツアーを牽引した一人が菅沼菜々。人気とともに確かな実力を秘めていることを証明する1年となった。
試合中でもカメラ目線で笑顔を見せるサービス精神旺盛な一方、直ドラを多用するパワフルなプレーぶりも魅力となっている。
週刊ゴルフダイジェスト1月2日号で菅沼はサンタクロースの衣装でクリスマスプレゼント企画に登場。撮影の際、担当編集者は「これだけ被ってもらえれば」と帽子だけを手渡したが、菅沼は「あるなら着たいです」と進んで衣装をフル着用。可憐なサンタロース姿を披露したという。
最新号である1月9&16日合併号の付録「女子プロカレンダー」の撮影でも、自らポージングを提案するなど、誌面を盛り上げている。
試合中でも、知り合いのカメラマンを見つけると、指でハートマークを作ったり、カメラ目線で笑顔を見せるサービスぶり。実力や注目度があってこそだが、菅沼の組にカメラマンが集まるようになるのも自然な成り行きだろう。
プレーぶりを振り返ると、シーズン序盤はやや苦戦。開幕から出場10試合でトップ10入りは1回だけだった。それでも、徐々にスウィングを立て直し、11試合目の「ブリヂストンレディス」で3位タイに入ると、上位でプレーする機会が増え始める。初優勝は8月の「NEC軽井沢72」。神谷そらとのプレーオフを2ホール目のバーディーで制した。
この試合ではいつも以上に飛距離が出ていることから自らを“ゴリラ”と表現していたが、普段から華奢なイメージからは想像できない飛距離の持ち主。今季は平均飛距離を昨季から7ヤード以上伸ばし、246.07ヤードでツアー21位に食い込んでいる。
菅沼の前後は20位に上田桃子、22位に西郷真央という顔ぶれ。こうして見ると菅沼の飛ばし屋ぶりが分かる。セッティングには3Wは入っておらず、必要な時には得意の直ドラで攻める。フェアウェイからでも1Wでボールを上げられるのは技術とともに力強さが備わっている証拠だろう。
もうひとつの武器はパッティングを含めたショートゲーム。カラーからウェッジでチップインというのはおなじみの光景だ。ラウンドあたりの平均パット数(12位)、リカバリー率(8位)など、ショートゲームに関するスタッツは軒並み上位。
2勝目の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」では他の選手が苦しんだ高速グリーンを見事に攻略した。
「乃木坂46」の大ファンで昨オフには推しの一ノ瀬美空とYouTubeで共演。インスタではツアーに“参戦”したことを報告している。「JLPGAアワード2023」にはミニスカートのドレスで登場。
アワードやSNSで、乃木坂46の衣装を何度も担当しているスタイリストらに製作してもらったドレスだと明かしており、菅沼の推し活は新たな領域に入ったようだ。
笑顔の一方で、特定の場所で恐怖や不安を感じる「広場恐怖症」という病を抱えている。菅沼の場合は飛行機や電車などの公共交通機関で症状が出るため、プロ転向以来、北海道、沖縄の試合には出場できずにいる。
初優勝のスピーチで「私が活躍することで、同じ病気の人に元気や勇気が届けられると思う」と話したことも印象的だった。
SNSを積極的に活用して、発信を続けるなど、新たな女子プロゴルファー像を確立した菅沼が来季以降もツアーの主役として、プレーと独特のキャラクターでファンやカメラマンを魅了していくのは間違いないだろう。