トップ選手たちの海外進出によって、国内ツアーの情勢はどうなる?
国内女子ツアーについて語る前に触れておかなければいけない大きなトピックスと言えば、稲見萌寧、西郷真央、吉田優利の3選手が米女子ツアーに参戦することです。すでに畑岡奈紗、笹生優花、古江彩佳、渋野日向子、西村優菜、勝みなみなど多くの選手が参戦中ですが、それに続く形となりますね。
やはり海外で十全に戦うためにはスポット参戦ではなくフル参戦してフィールドに慣れる必要があります。国内で実力をつけ海外に挑むという流れはどんどん加速していくでしょう。世界最高峰のツアーで自分がどれだけできるのか挑戦したいという気持ちを持つ選手は多いですし、それには渋野選手と笹生選手が海外女子メジャー制覇を成し遂げたことも大きく影響していると思います。いずれにせよ、世界の舞台で多くの日本人選手の活躍が見られるのは嬉しいですね。
渋野選手についても少し触れておきましょう。昨年末にソフトボールのイベント「渋野日向子杯 第2回岡山県小学生ソフトボール大会」のなかで、渋野選手によるゴルフ教室も行われていました。
そこで渋野選手のドライバースウィングも披露されていたのですが、昨年のシーズン中からスウィングに少し変化が見られました。オフシーズン中にスウィング改造に取り組んでいることがわかります。昨年は結果が振るわなかった渋野選手ですが、新たなスウィングをどれだけ自分のものにして活躍できるか、改めて注目ですね。
さて、前述の通り昨季国内ツアーでトップ争いをしていた3選手が世界の舞台に進出した24年の国内女子ツアー。大まかに言えば、2年連続で年間女王の座に就いた山下美夢有にみんなが挑戦していく、という図式になると思います。
挑戦者の筆頭としてまず挙がるのは、岩井明愛・千怜姉妹、そして櫻井心那でしょう。3名とも海外志向もありますから、今年こそ年間女王の座を手にして米女子ツアーに挑戦したいという思いがあるはずです。山下選手を含めた4名が優勝争いの常連になっていくのではないかと思います。
海外メジャー出場権に、リランキング制度。スタートダッシュが重要になる
そしてもう一人注目選手を挙げるとするなら、原英莉花です。米女子ツアーのQTは失格と躓いてしまいましたが、もう1年待ってまたチャレンジするということになると思います。
多くの経験を積むために、国内ツアーで得られる海外への切符も逃したくないはず。海外メジャーなら、全米女子オープンは開催2カ月前と開催週時点で世界ランク75位以内なら出場権を獲得。AIG女子オープン(全英女子オープン)ならば、サントリーレディスの最上位2名及び同大会終了時点での国内賞金ランクトップ3、そして開催1カ月前時点での世界ランクトップ50に出場権が与えられます。
この出場機会を逃さないためにも、前半戦のスタートダッシュはかなり重要です。原選手は世界ランク97位(2023年12月28日時点)ですから、前半で一刻も早く世界ランクを上げたいと考えているでしょう。他にも神谷そらや桑木志帆など、若手にも海外の試合に挑戦したいと考える選手はいますから、彼女たちが前半戦でどれくらい活躍できるかも見どころになってきます。
もちろん海外メジャーへの出場権だけでなく、国内ツアー中盤戦以降の出場権を懸けた、女子ツアーのリランキング制度にまつわる戦いも、前半戦からバチバチです。
国内女子ツアーのファイナルQTを2位で通過した小倉彩愛、3位で通過した藤田かれん、4位で通過した河本結、6位の大里桃子、8位には脇元華。他にも岡山絵里、鶴岡果恋、新垣比菜、三ヶ島かな……誰もが名前を聞いたことのある選手たちが、中盤戦の出場権、そしてシードを目指して前半戦を争うことになります。
6月14日から開催されるニチレイレディス終了時点で、第1回リランキングが行われます。その時点で上位に留まっていないと中盤以降の出場機会がグッと減ってしまいますから、彼女たちのシーズン序盤の動向も随時チェックしていきたいですね。
プロテスト合格組やステップアップツアーの動向にも注目
そして、2023年のプロテスト合格組でファイナルQTに合格した髙木優奈、吉澤柚月の2名にも注目です。プロテストを通って翌年に活躍する選手はこれまでも何人も出てきています。彼女たちがルーキーとしてどんなシーズンを送るかっていうのは非常に注目すべきところですね。
同様に、ステップ・アップ・ツアーの動向にも目が離せません。2022年にステップ・アップ・ツアーで5勝を挙げた櫻井心那が、昨年はレギュラーツアーに昇格し4勝と、目覚ましい活躍を見せてくれました。
同じような道筋をたどる選手は今後も出てくるでしょう。2023年のプロテストを通過した21名にはステップ・アップ・ツアーの出場資格がありますから、その中から誰が上位にくるのか、“第二の櫻井心那”が現れるのかも追っていきたいですね。
下部ツアーと言えば、馬場咲希の動向も気になるところです。馬場選手は2023年のプロテストを通過するも、その後挑んだ米女子ツアーのQシリーズで残念ながら出場権は得られず。平行して開催されていた国内女子ツアーのファイナルQTは受けてないんです。
選択肢としてはステップ・アップ・ツアーか米女子下部のエプソンツアーの2つですが、彼女が一体どこのフィールドで戦うのか? もちろん、主催者推薦でレギュラーツアーで戦う姿を見る機会もあると思います。ちなみに、彼女は来季の主催者推薦は協会の規約上、3試合(QTに出場したかったのに自身の都合で不出場だった場合の上限)らしいので、ポイントの高い4日間の試合に絞ってリランキングを狙うのではないかと思います。
そのときは2019年の稲見萌寧がひとつのモデルケースになると思います。稲見は19年はQTランクが103位とステップ・アップ・ツアーが主戦場でしたが、「主催者推薦」で出場したシーズン前半にトップ10に3回入り、第1回のリランキングで上位に浮上。その資格で以降の試合に出場し、7月のセンチュリー21レディスで初優勝。以降の活躍は説明不要でしょう。このロードマップをたどるのもひとつの選択肢です。
とはいえ、19年の稲見はQTで失敗したにもかかわらず、前半のリランキング上位入りやシードを獲る気満々で試合に臨んでいました。だからこそ、前半戦に推薦出場を集中させていました。24年では先に挙げたような実力者がQT組に多くいます。馬場がJLPGAを主戦場にするのであれば、このくらいの気概は必要でしょう。いずれにせよ、どのフィールドでも注目していきたい選手ですね。