ゴルフに関する様々な理論に精通するインストラクター・大庭可南太がPGAツアーで採用されているショット分析システムの「ShotLink」について解説する。

こんにちは。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。今年もハワイからPGAツアーが始まりまして、大会名も「ザ・セントリー」とシンプルになって(以前は「ザ・セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」)シーズンがスタートしました。

今回はPGAツアーの中継を見ていると必ず出てくる、ショット分析システムの「ShotLink(ショットリンク)」について、その仕組みとゴルフ界に与えている影響について紹介したいと思います。

画像: 画像A 「ザ・セントリー」でのスコッティ・シェフラーのドライバーショット。PGAのShotLink公式データでは打ち出し角度1.6°だったとのこと PGAツアー公式X(旧Twitter)より引用 twitter.com

画像A 「ザ・セントリー」でのスコッティ・シェフラーのドライバーショット。PGAのShotLink公式データでは打ち出し角度1.6°だったとのこと

PGAツアー公式X(旧Twitter)より引用
twitter.com

「ShotLink(ショットリンク)」とは何か?

PGAツアー中継では、パットのシーンになると、カップまでの距離とカップインの確率とかが表示されますが、要はあの仕組みを提供しているシステムが「ShotLink」です。

画像: 画像B グリーンを囲むように専用のカメラを設置することで、カップまでの距離を極めて正確に算出することができる PGAツアー公式サイトより引用 www.pgatour.com

画像B グリーンを囲むように専用のカメラを設置することで、カップまでの距離を極めて正確に算出することができる

PGAツアー公式サイトより引用
www.pgatour.com

PGAツアーではこうしたカメラをホール周辺に多数配置して、ボールの着弾を感知して自動で計測することを全選手の全ショットで行っています。すると大会あたり約3万2000ショットの計測になるようです。

原理としてはそれほど難しくないように思えますし、事実この取り組みそのものは2003年にスタートしていますので、「日本の中継でもやればいいのに」などと簡単に思ってしまうわけですが、どうも調べると結構大がかりな仕組みであることが分かってきます。

リアルタイムで計測を行い、そのデータをライブ中継で表示するためにはデータの送受信が迅速かつ確実に行われる必要がありますので、すべてのカメラとデータセンターを有線のケーブルでつないでいるというのです。思えば日本の大会会場でもテレビ中継では有線ケーブルをかなり使用していますので、電源の確保やデータ送受信の確実性という点では、まだまだ無線では難しいということだと思います。

画像: 画像C すべてのカメラで計測された情報が、リアルタイムでデータセンターのトレーラーに送られ、テレビ中継に統計データとして表示される PGAツアー公式サイトより引用 www.pgatour.com

画像C すべてのカメラで計測された情報が、リアルタイムでデータセンターのトレーラーに送られ、テレビ中継に統計データとして表示される

PGAツアー公式サイトより引用
www.pgatour.com

その状況で全選手の全ショットを記録するとなると、各ホールのグリーン周りと各ショットの落下地点での計測で、カメラが1ホールあたりおそらく5〜6台は必要になって、それを全部ケーブルで配線する必要があるということですね。

日本の中継であればティーショット地点とグリーンを見下ろせるカメラを固定で設置して、中間点ではハンディカメラでという対応になると思いますが、それも全ホールではなく、また全選手でもありません。

よってPGAの中継ではこのShotLinkのカメラと、中継用のカメラも合わせると途方もない台数のカメラを用意する必要があります。そのため大会の8日前から設置準備を行う必要があるとしています。

「おもしろさ」と「統計」の両立

こうしたシステムで全ショットを記録できるようになったことで、ゴルフ界にどのような影響を与えてきたと言えるのでしょうか?

PGAツアーではかれこれ20年にわたってこうしたデータを蓄積しているわけですが、その中であきらかにティーショットの飛距離が伸びている一方で、「8フィート(約2.4m)のパットが入る確率は50%」なのはずっと変わらず、また「グリーンオン確率が50%を超えるのは、ラフからだと145ヤード以内、フェアウェイからだと205ヤード以内」といった普遍的な統計データがあることも分かってきます。

そう考えれば「松山英樹選手が250ヤードをウッドでベタピンしてイーグル」させることが、どのくらい難しいことだったのかも想像できます。つまり中継を見ている側の「おもしろさ」に貢献していることは間違いありません。

また以前の記事でも紹介したように、「その選手は何が優れているのか」をショットの部門別に数値化できる「ストロークゲインド」という指標も、このシステムがあるからこそ計測できるわけです。

またグリーンに着弾するボールの弾道も全て記録できていますので、ボールの落下角度によってどの程度ランが変わるのかも分かってきます。

画像: 画像D グリーンに着弾するボールの弾道が全て記録されることにより、バーディチャンスにつけるためには「何が必要なのか」を把握できる PGAツアー公式サイトより引用 www.pgatour.com

画像D グリーンに着弾するボールの弾道が全て記録されることにより、バーディチャンスにつけるためには「何が必要なのか」を把握できる

PGAツアー公式サイトより引用
www.pgatour.com

最近の記事でもPGAでは「高いボールは稼げる(Height is Money)」ということを紹介しましたが、仮にパー5でツーオンができるとしても、グリーンに止まる高いボールで届かなければ意味がないわけで、そうした選手はレイアップの精度を高める必要があります。

逆に仮にラフに行ったとしても、150ヤード以内であれば十分チャンスにつけられる可能性があるのであれば、ドライバーを振りちぎるという戦略もありでしょう。まぁ、そういう戦略が「飛ばないボール議論」を引き起こしたとも言えるのですが……。

日本は日本のやり方を

このように統計を重視する考え方はいろいろ興味深い点は多いのですが、これをすぐに日本のゴルフ中継に導入するというのも簡単ではないことが想像できます。

ただいきなりお金をかけてそのようなシステムにしなくても、例えば選手個人に何らかのGPS機能搭載のデバイスをつけてもらって、各ショットを記録していくなんてことは可能かも知れません。

逆にアマチュアのほうが、昨今いろんなデバイスが登場していますので自分の飛距離や、各ショットの成功確率などをこまめに記録できるようになってきました。最初のうちは「コースでは思ったほど飛んでいない」と感じるかも知れませんが、こうした「統計的」視点を持つことでゴルフの楽しさの奥行きが拡がっていくと思います。

This article is a sponsored article by
''.