こんにちは。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さて、PGAツアーは今シーズン第二戦の「ソニーオープン・イン・ハワイ」が行われ、日本からも8人の選手が出場。松山英樹選手、久常涼選手、蟬川泰果選手、の三人がともに通算9アンダーの30位でフィニッシュしました。
長年トップレベルを維持し、日本ゴルフを牽引してきた松山選手に続いて、日本人の若手選手がどこまでPGAツアーの舞台でパフォーマンスできるのかに注目が集まりました。そこで、今回は久常、蟬川両選手のゴルフをスタッツで見てみたいと思います。
あらゆるフィールドへの対応力を持つ久常涼
久常選手は岡山県作陽高校を卒業後、21年のABEMAツアーで3勝、レギュラーツアーへの出場権を得ました。その年に美浦ゴルフクラブで行われた「ISPS HANDAガツーンと飛ばせ」に出場した際、私は最終日のラウンドについて観戦したことがあります。
印象的だったのは、非常にしなやかというか、クラブヘッドだけが動いているというか、まったく力まずにクラブを握った状態の静かなスウィングからしっかり飛距離も出ていたことと、終始マイペースに淡々とプレーをしていた点です。
その後、22年11月の最終予選を突破し23年はDPワールドツアー(欧州ツアー)にフル参戦、9月の「フランスオープン」で優勝すると、欧州ツアーのルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得するという快挙を成し遂げ、今季のPGAツアーメンバーの資格を得ました。
もともと日本ジュニアも制しているエリートですので「苦労人」という表現はふさわしくありませんが、結果から言えることは、さまざまな状況でも短期に順応して好成績を収めているという点です。このあたり海外でのインタビューに英語で対応するなどの姿勢にも表れていると思います。
パッティングに見る精神力とショットの伸び代
さて、そんな久常選手のPGAツアー参戦の初戦となった「ソニーオープン・イン・ハワイ」では、2日目の最終ホールでバーディを奪って3アンダーの予選通過圏内に入り、4日間トータル9アンダーの30位という結果になりました。緒戦の結果としてはまずまずだったと思うのですが、この成績の内訳をスタッツで見てみます。
全体としては長いパットを入れてスコアを稼いだということになり、逆にドライバーと2打目がイマイチだったというスタッツになります。パッティングのスタッツが全体で2位ってすごくないですか。しかし、ここでドライバーのスタッツを見てみます。
実はドライバー飛距離もPGAツアーにおいても遜色ないことが分かります。つまり飛んではいたけれど、あまり良い条件のところに置けなかったということになりますが、そうしたなかで勝負どころのパットを決めて今回の成績にまとめた精神力は、通年で見ると大きな武器になると思います。
飛距離は負けていない蟬川泰果
対称的なのは同じく30位で終えた蟬川泰果選手ですが、こちらはドライバーがスコアに貢献していたことがスタッツから見て取れます。ティーショットの貢献度を示す、ストロークゲインド・オフ・ザ・ティーが全体の5位を示しています。
PGAツアーのフィールでドライバーの貢献度が全体で5位ってすごくないですか! 最終日は惜しくもスコアを伸ばせませんでしたが、2打差の4位でスタートして優勝争いに加わったことは大きな成果と言えるでしょう。
「ポスト松山」に向けて
今回同じく9アンダーで30位に入った松山選手のスタッツは、前週の「ザ・セントリー」との合算になるので単純比較ができないため掲載は控えますが、やはりアイアンショットの精度とグリーン周りのアプローチを武器に、10年にわたりPGAツアーでトップレベルのパフォーマンスを維持している選手です。
今回も2日目のカットライン上から予選を通過し、終わってみれば久常選手、蟬川選手とならび30位フィニッシュという底力を見せてくれました。
この3名はスウィングもストロングポイントも異なりますが、しっかりと「手の通り道」を確保して高いボールが打てるという、PGAツアーで必須とされる能力を持っている点では共通しています。
これまでほとんど一人で日本ゴルフ界を牽引してきた松山選手ですが、今回のように若手の選手が台頭してくることで、多少はプレッシャーが弱まり、あるいは逆に切磋琢磨して日本ゴルフのレベルが上がるという効果があるかもしれません。
サッカーや野球は毎年のように若手が出てきますが、今年の「ソニーオープン・イン・ハワイ」は、男子ゴルフ界からも他の競技に負けじと、世界のフィールドで活躍できる選手がどんどん出てくる予感を感じさせてくれる大会でした。
久常、蟬川両選手は、今週の「ジ・アメリカン・エキスプレス」にも出場します。ぜひ活躍を期待したいものです。