グリーン攻略には経験を積むことが必須
「みんゴル」読者、および稲見萌寧ファンであれば、当サイトで2024年米LPGAツアーの開幕戦と第2戦の前に稲見のコーチである柳橋章徳氏に、開催コースの特徴や稲見プロの近況を聞いた記事を確認いただいているだろう。取材者として、2回とも印象に残っているのは「練習ラウンドをしていて、萌寧の調子、とくにショットは良いと思う。あとはパッティングがあえば!」という言葉だ。柳橋コーチは基本、スウィングがメインなので、「パッティング」の重責を担っているのは、橋本真和コーチ、小暮広海コーチ、須藤大和コーチと3人いるパッティングコーチ陣だ。なかでも、英語も話せて、同年代の女性でもあるため、一番身近にいるのが今回話を聞いた小暮コーチになる。
まず初戦と2戦目から得た米LPGAツアーの印象を聞くと、「柳橋コーチも話していましたが、グリーンは日本の芝質とかなり異なり、また細かな傾斜が入り組んでいて、どこからカップを狙っても“スネークライン”になっているイメージです。また、初戦の会場であるレークノナG&CCは日本のトーナメントクオリティで整備されていたのに対し、第2戦のブレイデントンCCは河川敷グリーンという印象です。それでもグリーンスピードだけはどちらも10.5~11.5フィートくらいはある。とくに第2戦は風も強かったので、地面が乾いてグリーンは締まっている状態だったので萌寧さんをはじめ選手は大変な様子でした。同じフロリダでもこれだけ違うので、米LPGAツアーのグリーン攻略にはある程度の“経験”が必要だと感じました。やはり何年も米LPGAツアーで戦っている選手はグリーンに合ったストロークをしてきますので。この理由からJLPGAツアーでやっている選手が、スポットで米LPGAツアーに出ても苦しむのはすごく理解できました。
とはいえ、1年目から何とかしなければならないのも事実。第2戦の最終日はボールへのエネルギーの与え方を少し変えてもらいました。それでバーディが5つ取れて8位フィニッシュにも繋がったのではないかと思います。あとは、コース毎の芝質などを前もって調べておいて、日本国内で似たような状況のグリーンを探して、そこで練習することも考えています。でも、そう簡単には見つからなそうですが……」と語る。米LPGAツアーのグリーン攻略に向けて、実行できる環境を整えるにはもう少しかかりそうだが、手法が見えているのは朗報だろう。
米LPGAとJLPGAに圧倒的な差はない
コーチ業だけでなく、キャディとしても稲見を支える小暮コーチ。早速、第2戦の「LPGAドライブオン選手権」でバッグを担いだわけだが、米LPGAとJLPGAの選手を間近で見て、どんな差があるかを聞くと、「まず米LPGAは“職場”というイメージがありますね。選手同士は一緒にご飯を食べたりしていますが、JLPGAの選手ほど和気あいあい感はないですね。選手だけでなく、コーチもキャディも、黙々と自分のやるべきことをやっている。ツアー会場はその場だと捉えていそうです。
選手の技術の違いとかは、1戦しか担いでいないので、断定はできませんが、飛距離や技術で米LPGAとJLPGAの選手にすごい差があるかといえば、そうは思いません。もちろん萌寧さんが飛ぶプロだからというのはあるかもしれませんが。ただ、第2戦で一緒に回ったアリヤ・ジュタヌガーン選手は凄かったです。そもそも1Wを入れてなくて、ティーショットは2Iなのに、他の選手のドライバーショットとあまり変わらない飛距離だったので。
あとは米LPGAツアーのドライビングレンジで聞くインパクト音は驚愕です。第2戦にはレジェンドクラスの選手も多く出場していたのですが、そのなかに37歳になったポーラ・クリーマー選手もいました。そのポーラ選手は誰が見ても『あれは振った』と一目でわかるほどのスウィングでしたね。おそらく芝に負けないようにだと思うのですが、世界のトップ選手は持っている力をしっかり使っている印象で、みんな一様に強く振り抜いています。日本人だと(畑岡)奈紗さんがあのインパクト音にいちばん近いですね」とのこと。
最後に次戦に向けての準備を聞くと、「パッティングについては、先ほど話したように我々コーチ陣がしっかり芝質などを予習して、萌寧さんのアジャストを助けることが重要です。また、次はシンガポール、中国と続きますが、2戦とも寒い日本とは違い、暖かい気候です。この気候への対応も必要だと思います。初戦、第2戦ともにショットはバチバチにピンについていたので、バーディパットさえ決まれば、JLPGAのときのようにいつも優勝争いできる位置に萌寧さんはいると思いますので、その手助けができればいいですね」と話してくれた。
「LPGAドライブオン選手権」では8位タイと、2戦目にして早くもトップ10に入った稲見萌寧。準備に抜かりがないコーチ陣のサポートで、2月、3月のアジアシリーズでも活躍が期待できそうだ!