女子ゴルフの今季国内ツアー第2戦、明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメント最終日が10日、高知県・土佐CCで行われ、4打差の単独首位から出た鈴木愛が4バーディ、2ボギーの70で回り、通算16アンダーで2位に6打の大差をつけて逃げ切った。4日間首位を譲らない完全優勝で昨年8月の北海道meijiカップ以来となる通算19勝目。高橋彩華、小祝さくら、藤田かれんが通算10アンダーで2位を分けた。
画像: 明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメントでツアー通算19勝目を挙げた鈴木愛

明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメントでツアー通算19勝目を挙げた鈴木愛

元女王は冷静さを失わなかった

圧勝だった。2位に5打差で迎えた最終18番。ピンの右奥4メートルのスライスラインを読み切った。最後まで攻める気持ちを失わず、見事なバーディフィニッシュ。カップインの直後、両手で持っていたパターを祈るように顔のまえに突き上げ、万感の思いに浸った。

「4日間を通してショット、パットが安定していた。(同じ組の)小祝さくらちゃんに追いつかれそうになったので、すごい緊張感を持ってできました」

画像: 最終日の小祝さくららの追い上げにも冷静に対応した鈴木愛

最終日の小祝さくららの追い上げにも冷静に対応した鈴木愛

最終日は2位に4打差でスタート。勝って当然という重圧もあったのか、1番こそ4メートルを沈めてバーディが先行も2、3番で連続ボギー。3番でバーディを奪った小祝にこの時点で2打差に迫られたが、百戦錬磨の元賞金女王は冷静さを失わなかった。

11番でバーディを奪って流れを取り戻すと、15番はグリーン右サイドのラフからのアプローチをミスし、ピンを5メートルオーバーしたが、この長いパーパットをねじ込んだ。そして続く16番はフェアウェイからの第2打をピン手前2.5メートルにナイスオン。上りのバーディパットをしっかりと沈め、スコアを通算15アンダーとして優勝を大きく引き寄せた。

今週は第1日に7アンダー65で飛び出すと、2日目からも70、67、70で周り、4日間首位を明け渡さない完全V。過去に完全優勝は5回あるが、4日間競技では自身初の快挙となった。

「2番と3番で自分のミスで連続ボギーを叩いちゃったんですけど、その後は感覚も戻ってきて、通常通り、いつも通りできたので、そこはよかったと思います」

モチベーションに変化が起きた

賞金ランク17位と不本意な成績だった20–21年統合シーズン後には「本当はゴルフをやめたかった。自分がうまくなる様子が見えてこなかった」と引退を考えたこともあったが、周囲の説得で翻意したという。

「周りに続けてほしいと言われて……。その時にコーチにもう1回年間女王だったり、永久シード(通算30勝)を目指そうという言葉をもらったので、少しずつモチベーションが変わった」

被災地に1000万円の義援金を寄付した能登半島地震と羽田空港衝突事件にも心を動かされた。

「自分も飛行機に乗ることが多いので、そこにいてもおかしくなかったなと思うし、いつ自分の人生が終わっても後悔しないようにやりたいと思ったので、そこからトレーニングや練習もしっかり取り組みたいなと思った」

今年の1月は米国で合宿をし、再現性の高いスウィング作りに取り組んだ。

画像: 今オフ、苦手だったトレーニングに挑戦し、飛距離が伸びた鈴木愛

今オフ、苦手だったトレーニングに挑戦し、飛距離が伸びた鈴木愛

「ゴルフはメンタルだと言われるけど、初めに技術がないと意味がない。(順番は)技体心。今はそれがすごくはまっているので、飛距離も伸びたし、方向性もめちゃめちゃよくなった」

並行して苦手だったトレーニングにも挑戦した。年が明けてからは毎週1度は欠かさず行い、マッサージなど体のケアにも時間を割いた。

「年齢を重ねるごとに疲れやすくなった。今までのトレーニング量では若い子たちに追いつけない。やるからには30代でも年間女王を目指したいし、やるからには1番になりたい」

元女王の意地と誇りで約半年ぶりの頂点を奪い取った。

世界ランクを上げて、目指すは全米女子オープン出場

5月9日には30歳のバースデーを迎えるが、目指すところは高い。表彰式のスピーチでは「早く20勝目をして、生涯通算記録を30勝までいきたいと思っているので、頑張って永久シードを目指したいなと思います」と宣言した。

その前に当面の目標は5月30日に開幕する全米女子オープンに置く。今年は15年に出場した時と同じランカスターCC(ペンシルベニア州)が会場で、4月3日時点の世界ランク75位以内(鈴木は3月4日時点で83位)に出場権が与えられる。

「近い目標は全米女子オープン。どうしても出たいので、世界ランクを上げときたいなというのがあった。ここまで順調に結果を残せたのは、自分でもびっくりしています」

パワーアップして復活を遂げた鈴木愛、その進化はまだ始まったばかりだ。

PHOTO/Tadashi Anezaki

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