こんにちは。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さてPGAツアーではLIVゴルフの高額賞金大会に対抗して今年からシグネチャーイベントというものが導入され、ランキング上位選手がそちらの大会への出場を優先する結果、一般大会ではこれまで無名だった選手にもスポットライトが当たるようになってきました。
そうした選手のスウィングを見ていると、本当に「100人いれば100のスウィングがある」というくらい、スウィングは人それぞれだと感じるわけです。そのいっぽう、アマチュアには難しくてもプロならば必ず共通してできている動作があります。その代表例がダウンスウィングのいわゆる「タメ」ではないでしょうか。今回の記事ではなぜアマチュアが「タメ」を作れないのかと、その改善ドリルについて紹介したいと思います。
「タメ」の反対語=「アーリーリリース」
個々のプレーヤーでスウィングの外見は違っても必ずプロならばできているこのダウンスウィングの「タメ」です。アマチュアの場合は早期に左腕とクラブシャフトの角度が広がってしまう「アーリーリリース」になりがちです。そもそもこの「タメ」があることでどのような効果が期待できるのでしょうか。
ダウンスウィング時に両腕とクラブシャフトが角度(およそ90°くらい)を保った状態になっていると、角運動(円運動)をしている物体(クラブヘッド)の半径が最小になるため、少ない力で運動を行うことができる、つまり両手を速く下ろすことができ、ついでインパクト直前に両手が減速してクラブヘッドがリリースされることで両手のエネルギーがクラブヘッドに伝達されるため、クラブヘッドの速度が最大化できるので飛距離が伸びる……と説明をしてみると思ったより小難しいのですが、早い話が「タメ」をつくるとヘッドスピードを最大化できるということです。
なぜアマチュアはできないのか?
プロが共通して行っている動作であれば、おそらくはやったほうがいいはずのこの「タメ」ですが、なぜアマチュアの多くはうまくできないのでしょうか。プロのスウィングで何が起きているかをもう少し詳しくみてみます。
画像Bのザラトリス選手のダウンスウィングを見ていると、切り返しからクラブシャフトが地面と平行になるハーフウェイダウンの位置まではしっかりと「タメ」が維持され、インパクト付近ではそれがリリースされてボールに届いてインパクトを迎えます。
問題は、写真B(中央)のハーフウェイダウンから、写真B(右)のインパクトまでどのくらいの時間があるかということです。ぱっと見クラブヘッドは1メートルほどは動いているように見えますが、プロのヘッドスピードは50m/sを超えているはずですから、単純計算で0.02秒未満になると思われます。このわずかな時間にリリースを行ってボールを正確にインパクトさせるって神技で、とてもアマチュアにマネできるものではないと思うわけです。
アマチュアはそのように考えて、インパクトに間に合うように早めにリリースを開始しているわけです。まさにこれが「アーリーリリース」です。
プロは自分で「リリース」していない
実はこの「リリース」はプレーヤーが自分で操作して起きているモノではありません。つまりプロでもわずか0.02秒ほどの間にリリースの量を調整して当てるということはできません。
逆にずっと「リリース」をさせない意識でクラブを下ろしていくと、ダウンスウィングの後半でクラブヘッドにかかる遠心力その他の影響でリリースが発生してしまうというのが真相です。「『リリース』をさせなかったらクラブヘッドがボールに届かないじゃないか」と思われがちですが、しっかりとダウンスウィングで地面方向にエネルギーをかければクラブは地面まで下りるのです。
アマチュアの多くは「ダフる」ミスをしますが、これはリリースを操作して地面に届かせようと考えて、結果届き過ぎになっている場合が多いです。そしてそれを緩和しようとしてインパクト直前で「伸び上がる」動作を入れたりして余計複雑になったりします。まぁそれで当たっている人も結構多いのですが。
リリースさせずに下ろすクセをつける「ポンプドリル」
ということは、プロっぽいダウンスウィングにするには「タメ」をつくったままクラブを下ろすトレーニングをする必要があります。その一つに「ポンプドリル」というものがありますので紹介したいと思います。
これは非常に古典的なドリルですが、コツは「仮にボールに届かなくてもかまわないので、タメをキープしたままダウンスウィングしたらどうなるのか」と考えることです。ボールにうまく当てようと思ってはいけません。
また上半身が目標方向を向いていくとインパクトが窮屈になりますので、写真C(右)のインパクトの状態まで下ろしたら終わりくらいのイメージでやっていただくと良いでしょう。
アーリーリリースで当てている方は、はじめのうちは当たる気がしないと思いますが、やっていくうちに「ボールに届いてしまう」感覚がつかめるはずです。ぜひお試しください。