こだわり抜いたバランス設計と、様々なニーズに対応するウェイト機能を搭載
21世紀初頭のゴルフクラブを語るうえで、忘れてはいけない重要人物のひとりが、ショーン・トゥーロン氏だ。テーラーメイドでは「300シリーズ」や「スパイダー」をはじめ、多くの画期的なプロダクトを世に送りだした。
なかでも特徴的なのが、ヘッドのウェイト位置を変更して弾道を調整する「r7」。そして、現在は各メーカーで完全に主流となったネックでの“カチャカチャ”の弾道調整機能を備えた「R9」で、現代のドライバー開発にも大きな影響を与えている。これはトゥーロン氏がかつて手がけていたカスタムフィッティングを特徴とするブランド「ジーボ」の経験が活きたプロダクトと言えるだろう。
「テーラーメイドでは、エグゼクティブ・バイス・プレジデントとして、商品開発に関わるすべての部門に携わっていました。開発の方向性やデザインはもちろん、本当に詳細なところまで手がけていました」(トゥーロン氏)
現代のゴルファーにとって馴染み深いのは、2016年にキャロウェイに参画して展開したトゥーロンデザインのパターだろう。多くのプロたちが使用し、ツアーで活躍したことも記憶に新しい、オデッセイとは一味違った高価なラインナップだ。
そのトゥーロン氏が昨年、キャロウェイから離れて、自身のブランドであるトゥーロンゴルフを立ち上げた。その主要な商品はパターになるのだという。テーラーメイドでは、現代も人気の「スパイダー」を開発しているが、ウッドやアイアンよりもパターのデザインのほうが得意なのだろうか。
「キャロウェイに移ってからも、テーラーメイドにいたときとほとんど同じ仕事をしていました。全てのクラブの製品戦略とデザインを担当し、オデッセイブランドのパターも直接関わっていました。やはり、パターは一番デザインの自由度があり、よりクリエイティブな仕事になりますね」
キャロウェイとは完全に離れたわけではなく、今後もパートナーシップを継続するとのことだが、第一線を退き、自身のブランドに注力するという。
「大きな会社で働くということは、どうしても人事とマネジメントにエネルギーを費やすことになる。それはそれで素晴らしい経験なんだけど、自分のブランドであれば、その情熱をクリエイティブなものづくりに向けることが出来るんです。そのことに喜びを感じています。正直に言うと、キャロウェイでの仕事はちょっと失望したこともある。というのも、キャロウェイという会社はとても大きくて、ほとんどの労力はオデッセイに集中してしまい、トゥーロンデザインのパターには十分な注意を払うことが出来なかったんです。でもトゥーロンの名前が知られたのは良かったですね。今は私も息子たちを含めたスタッフも我々のブランドに集中できています。これから急速に成長していけると思っていますよ」
新たに登場するトゥーロンゴルフのパターは、過去のトゥーロンデザインをベースにしながら、より洗練されているという。特徴のあったソール部のプレート形状のウェイトは、トウとヒール部に分散され、重量の異なるウェイトを入れ替えることでフィッティングも可能になる。
「パッと見て、感情が湧くものを作るというのが、すごく難しいところでもあり、デザインで私が一番大切にしていることでもあります。打感や打音が良くなり、プロモーションも調和の取れたものにすることで、使う人の感情を大事にしてデザインしています。以前、デザインしたパターと一見同じ形状に見えるものも細かく改良を加えています。2022年に発売した『ラズベガス』というモデルは、見た目から冷徹なイメージを感じていたので、ブレードの広さや高さなど微妙に改良し続けて、より安心感が生まれました。デザインにちゃんとした整合性が生まれなくては、美しいものにはなりません。そこにはすごく力を注いでいます」
トゥーロンゴルフでは、パターの他にCNC加工によって作られるアイアンのラインナップもあるという。これから日本でも少しずつ展開していく予定だ。
トゥーロンゴルフのパターシリーズの日本発売は4月中旬~下旬、価格は13万2000円(税込)を予定。取扱店はDouble Eagle、PGA TOUR SUPERSTORE、一部のVictoria Golfになる見通し。なお、スモールバッチというハンドメイドの限定生産モデルもあり、そちらは40〜50万円くらいになるのでは、とのことだ。
PHOTO/コヤマカズヒロ