「練習を積み、実戦で試し、また練習する。その繰り返しだよ」
「練習だけで何かをマスターできるものではない。練習し、実戦でも練習と同じ結果を出した時に、初めてマスターしたといえる。しかし実戦で成功する確率は50%ほどしかない。だから練習を積み、実戦で試し、また練習する。その繰り返しだよ」(尾崎)
この実戦でスキルを獲得していく格好の例がある。1992年、全米オープンはペブルビーチGLで行われた。名物の18番ホール、584ヤード、パー5。ティーショットは海越えで、その海は左側をフェアウェイに沿ってグリーンまで続く。ティーショットが海サイドぎりぎりに打てれば、2オン、イーグルも狙えるホールだ。安全にと右サイドへ打つと、グリーンまで遠くなり、かつクラブに絡みつくラフが待ちかまえて、ボギーもありうる。トーナメントで追いかけるほうはリスク覚悟で、冒険するだろうし、追いかけられるほうは安全に右サイドへ。とはいえ、行ったからとて、絶対安全とはいえないのだが……。そんなシチュエーションゆえ、この18番は数多(あまた)の名勝負を演出してきた。ただいえることは、ロングヒッターでないと2オンは困難だということ。つまり裏を返せば、日本でのパワーヒッターが、米国でも飛ばし屋だということを証明するいい機会だということでもある。
キャディの佐野木計至によれば、「その年の春にロスでキャンプした時、ペブルビーチもラウンドした。その時18番は絶対に2オンを狙おうと2人で決めたんだ。実際練習ラウンドでは1回も失敗していないからね」と、練習では100%、成功しているわけだ。
しかし本番ではそうはいかなかった。初日、ボギー、2日目はティーショットを海に入れてダブルボギー。3日目はパー。3日目までは2オンは1回もなし。そして迎えた最終日、ナイスドライバーショットで、残り218ヤードを3番アイアンで見事、2オン。イーグルパットは外れたが、ギャラリーは大歓声をあげ、賞賛の拍手で、日本のジャンボここにあり! を大いにアピールした。練習でやれることが本番ではこれほどの確率であることを、身を持って知ったわけである。通算、7オーバー、23位で終わったが、得たものは大きかった。
TEXT/Masanori Furukawa