緊張のツアーデビュー戦
昨年、4度目のプロテストに合格し、史上初のママさんルーキーとなった神谷和奏が、富士フイルム・スタジオアリス女子でツアーデビューを果たした。アマチュア時代を通しても、JLPGAツアーでの出場は初めてだという。
今季のQTランキングは105位で、ステップ・アップ・ツアーが主戦場になる。今大会は推薦での出場となった。
スタート前は「緊張してるかどうか、自分でもよくわからなくて。緊張してるかもしれない」という神谷だったが、スタートホールは無難にパーで発進したものの、11番では早くもトラブル。
3打目のバンカーショットが、雨で締まった砂に弾かれてホームランしてしまい、ダブルボギーと
してしまった。
「スタートから間もない、まだ地に足がついていないときに、大きなトラブルになって、正直ドキドキでした」(キャディで夫の幸宏さん)
伸ばしたい12番パー5では、3打目を木の真後ろに打ってしまったが、6番アイアンで低く打つトラブルショットでパーセーブ。13番、14番もグリーンを外す、苦しい展開だったが寄せワンでしのいだ。
神谷本人もキャディの幸宏さんも、ともにターニングポイントだったと話したのが、左ドッグレッグの15番ホール。ティーショットを左のフェアウェイバンカーに入れてしまったが、クリーンにボールを捉えた見事なショットでグリーンをとらえた。
「7番アイアンだったんですけど、あそこで難しいバンカーから良いショットが打てて、
流れが変わったかなという感じがありました」(幸宏さん)
後半のチャージで、アンダーパーフィニッシュ
小雨が降り止まず、8.8℃という気温以上に肌寒さを感じるなか、後半は神谷のショットが冴えはじめる。
1番、2番で連続バーディーを奪って、スコアをイーブンに戻すと、4番と5番もバーディーチャンスにつけ、5番をバーディーとした。
後半唯一のピンチだったのが、6番のパー5。セカンドを大きく左に引っかけてしまい、暫定球を打たねばならない状況だった。
幸いボールは見つかったが、ライも悪く、目の前の木が気になる3打目。幸宏さんのアドバイスで、
PWを選択してグリーン奥まで運び、パーセーブした。
最終ホールの9番では、ピン手前の絶好のバーディーチャンスにつけたが、決めきれず。
「上り傾斜がきついのはわかってて、しっかり打とうねと話してたんですけど、打つ前に隣ホールの歓声が聞こえて、ちょっと緊張してしまいました。これは次への課題にします」と神谷も悔しさをにじませた。
しかし、トータル1アンダーとまずまずのデビュー戦となった。
練習日にテストしたパターを即デビュー戦に投入
前半から、しびれる距離の微妙なパットを入れ続けた神谷だが、その要因には今週急遽変更した新しいパターの存在があるようだ。
「水曜の練習日までは、これまでのエースパターでラウンドしていたんですが、その日にテストしたパターが、第一印象から“いいかも”と思えて、長さを調整してもらったものをすぐ投入しました」と神谷が話すのは、ピンの「クッシン4」というモデル。「2023パター」というシリーズで、より感覚的に扱える形状だ。
「以前のマレット型は、少し右に逃がしてしまう事があったのですが、このモデルだとしっかりつかまえて打ち出せるようです。本人がこちらのほうがイメージが良さそうというので、急遽使用することになりました」(幸宏さん)
コーチでもある幸宏さんからの、試合中のアドバイスは心強かったという。
「雨の影響もあってか、朝からドライバーが当たってなくて。距離も出ていなかったんですが、後半に入る前に、少しカチあげたスイングになっていると指摘されて、そこを意識すると後半は当たりが良くなってきました。もっと早く言って、と思いましたけど(笑)」
同伴プレーヤーの宮田成華、藤田かれんとは10ヤード以上おいていかれることが多く、ラウンド中は「これから、この飛距離面を詰めていかないといけないね」
と幸宏さんに指摘されたという。飛ばないタイプではないが、雨の影響が大きく、思うような飛距離が出なかったのは今後の課題だろう。
「デビュー戦初日は、いい雰囲気の中、楽しくできました。応援している人も多くて、とてもありがたかったです」
ショットが特徴なので、良いショットでバーディーを取るところを見ていただきたいという神谷のツアー挑戦は始まったばかりだ。
TEXT・写真/コヤマカズヒロ