ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。男子ツアー開幕戦で優勝した金谷拓実と欧州ツアーで初優勝した中島啓太とのライバル関係について語ってもらった。
画像: 15年廣野GC開催の日本アマからこの2人のライバル物語が始まった

15年廣野GC開催の日本アマからこの2人のライバル物語が始まった

JKGは「Just Keep Going」の略

国内開幕戦の東建ホームメイトカップで金谷(拓実)くんが横綱相撲で優勝。すると数時間後の欧州ツアー、ヒーローインディアンオープンでは、今度は中島(啓太)くんが初日からトップを走る完全優勝。

これまでの2人の歩みを象徴するかのような同週同日優勝で、インターネットを覗くと世界のメディアの注目を集めた快挙でした。

思えばこの2人のライバル物語は、15年の日本アマから始まりました。廣野GCで開催された第100回を数えたこの大会は、高校2年生17歳の金谷と、15歳で中学3年生の中島との決勝になりました。ともに史上最年少優勝記録のかかる対決でした。結果は10and9で金谷の圧勝。

戦いを終えて、その意味は違いますが、2人の流した涙が印象的でした。その後、2人はともにナショナルチームに選出されます。

21年には中島も日本アマを制し、アジアパシフィックアマの優勝からマスターズ、全英オープンの出場、世界アマランク1位に輝き、さらに19年の三井住友VISA太平洋マスターズでは金谷が、21年のパナソニックオープンでは中島が、それぞれ史上4、5人目のアマチュア優勝を果たします。

実は昨年最終戦の日本シリーズJTカップでは、初日から3日間、賞金王争いを演じた2人が同組で回りました。ラウンドレポーターを務めたボクは、生で2人のプレーを見た興奮を今も忘れられません。普段は仲のいい2人ですが、ラウンド中にほとんど言葉を交わすことがないのは意外でした。

ただ言葉を交わさなくても、そのプレーで会話している。それが単にライバルという言葉では言い表せない2人特有の関係性であり、また紡いできた物語なのでしょう。

同時に今回の同週同日優勝はあくまでも通過点であり、これからどんなドラマが生まれるかと思うと楽しみで仕方がありません。「JKG」は優勝した2人が、大会中にLINEで互いに送り合った言葉でした。Just Keep Goingの略で「前進あるのみ」という意味です。

前述の15年の日本アマ後、2人はナショナルチームのチームメイトになりますが、この時期にコーチに就任したガレス・ジョーンズ氏が好んで使う言葉だそうです。ゴルフの技術やマネジメント、最初から海外志向であるだけでなく、考え方や精神面でもジョーンズ氏の影響を強く受けている2人。

JKGは、ナショナルチームで一緒に戦ったときの合言葉でもありました。歴代最長の世界アマランク1位だった中島くんに対しては「やはりただ者じゃないぞ」が、今回の優勝での欧米メディアの評価でした。海外で少し苦労した経験のある金谷くんに関しては、その経験で一回り強くなった、という感じでしょうか。

いずれにせよこの優勝は、2人のドラマにとってはまだ序章。4月最終週の太平洋C御殿場でのISPS HANDAの出場はともに決まっており、早くも楽しみです。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月23日号「さとうの目」より

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