まるでプレッシャーがないかのような見事な5連勝。しかし本人は「風が強かったし今日(最終日)のバック9は人生で一番長い9ホールでした」と重圧から解き放たれ笑顔を見せた。
荒天で順延になった第3ラウンドの残り7ホールを消化してからの最終ラウンド。序盤でトップの座を奪うとバック9で2つボギーを叩いたものの17番であわやホールインワンのスーパーショット。18番をバーディで締めくくり後続に2打差をつけ21年のKPMG全米女子プロ選手権以来のメジャー2勝目、ツアー通算13勝目を達成した。
優勝賞金120万ドル(約1億8000万円)を加え史上最速で200万ドル(約3億円)の大台を突破。正確には240万ドル強だから3億6千万ドル以上を稼ぎ、生涯獲得賞金もヤニ・ツェンを抜いて23位に浮上した。
ESPNのインタビューに応えた姉・ジェシカは「2人でいるときはゴルフのことは喋らない。ゴルフ以外のことで盛り上がっています」と語り、「彼女がどうやってメンタルをコントロールして体調を維持し本番で実力を発揮しているのか、私にもわかりません」。
その点についてネリー本人は「シンプルが一番重要」と答えている。「ゴルフは考え過ぎると複雑になってしまう。シンプルに1打1打に集中することだけを考えるんです。複雑なゲームだからこそシンプルが鍵」。
5連勝を達成した先輩アニカ・ソレンスタムも現役時代「目の前の1打に集中することだけを考えている。ミスしたらどうしようなどと結果については全く考えていません」といっていた。
アニカの場合はショットを打つ前に「シンクボックス(考える場所)」と「プレーボックス(ショットを打つ場所)」の2つの場所を作りまずボールの後方の「シンクボックス」で風やライの状況を把握しどういう球を打つかを考えて決定。そして一旦「プレーボックス」つまりアドレスに入ったら一切考えることを停止。「シンクボックス」で青写真を描いた弾道に実際の打球をトレースするだけだと説明していた。
いまのネリーは考えなくても体が自然に動いて思ったような球筋を描ける状態なのだろう。
3年前まで今大会はカリフォルニアのミッションヒルズで開催され勝者が18番脇のポピーポンドに飛び込むのが恒例だった。テキサスに舞台を移したシェブロンでもその伝統は踏襲され小さな桟橋からコルダご一行様(チームの面々)は茶色がかった水に次々と飛び込んだ。季節外れに肌寒いこの日、それでもコルダの笑顔は形状記憶のようにいつまでも続いていた。