ラウンドの前半は良いスコアで回れたのに、後半で崩れてしまう。そんな経験をしたことがあるゴルファーは少なくないだろう。折り返し以降で崩れないためには「まず休憩時の昼食の摂り方に気を付けてください」と兼濱は言う。
「スコアを重視するなら、昼食では血糖値の上昇に気をつけることがすごく大事ですね。食事で血糖値が急激に上がると、血糖値スパイクが起きて集中力の低下につながってしまいます。あまり消化に時間がかかるものを食べない、サラダなどの食物繊維から先に食べる、白米は小盛にするなどの対策で、血糖値の急上昇を抑えましょう」(兼濱、以下同)
加えてメンタル面で「ひとつの知識として頭に入れておいてほしいことがあります」と兼濱は続ける。
「例えば、走って体が熱くなったら汗をかいて冷やそうとしたり、心拍数が上がると息も上がり自然と口呼吸になったりしますよね。こういった、自分の体内の状態を一定に保とうとする働きを『ホメオスタシス(恒常性)』と言います。このホメオスタシスは心理面にもあると言われていて、要するに『普段より調子が良い』と思っていると『いつもの調子に戻ろう』という心理的な働きが起きてしまうんです」
調子が良いと感じている時点で、それはいつも通りの自分ではないということ。すると無意識のうちにいつも自分へ戻ろうとして「調子の良い状態ではなくなってしまう」わけだ。これを防ぐためには「良い意味で調子に乗り続けることが大切です」という。
「『前半良かったから後半は守ろう』ではなくて『前半くらいの良いゴルフができる自分にもうなってきたんだな』と思えるかどうかですね。調子が良い状態を『いつもの自分』にすればいいんです。そのためには、なかなか日本人のマインドでは難しいとされているところだと思うんですけど『良い意味で調子に乗り続ける』ことが大切です。意識的に『このくらいはもうできるよね?』と無理やりにでも思ってあげて、目の前の一打に集中しましょう」
実際に兼濱がラウンドで初めて70台のスコアが出せたときも「良い意味で調子に乗れていた」ときだったという。
「中学1年か2年のとき、春の九州の大会で、当時全然ゴルフが上手くないのに、小心者で舐められたくないから、所作を真似て『上手い人のフリ』をしていたんです。で、ラウンド前半の調子がめちゃくちゃ良くて、他の上手い同級生たちが『兼濱くんって上手いんだね。今までずっと試合出てなかったの?』みたいな感じで言ってくれたんです。僕は内心ではすごく嬉しかったんですけど、周りには『このぐらいできるよ』と上手い人を演じ切ったんですよ、最後まで。そうしたらそのまま波に乗り切れて結果が伴ってきたんです。このケースはたまたま周りが勝手に自分のことをすごいと感じてくれたから、という外部要因もあるんですけど、同様の心理状態をいかに自分で作れるかっていうことは大事だと思います」
この心理的なホメオスタシスは、前半の調子が悪いときも同様で、いつもの自分に戻ろうとして後半は良くなっていくものとのこと。
「前半の調子が良いときはそのまま良い意味で調子乗ってあげること、前半が悪かった場合は『どうせ後は良くなる』と思えるようになること。そうやって人間の特性を意図的に使ってみてください」
協力/学芸大ゴルフスタジオ