開催まで2カ月に迫った「パリオリンピック2024」(以降「パリ五輪」)。開催コースはル・ゴルフナショナル。男子が8月1~4日、女子が7~10日に行われる。熾烈な各国の代表争いに注目!
画像: 東京五輪2020(霞ケ関CC )の日本代表。松山英樹、星野陸也、畑岡奈紗、稲見萌寧

東京五輪2020(霞ケ関CC )の日本代表。松山英樹、星野陸也、畑岡奈紗、稲見萌寧

男女ともメジャー戦績がカギに

パリ五輪ゴルフ競技は男女各60人が出場。国際ゴルフ連盟(IGF)によって定められるオリンピックゴルフランキング(OGR)に基づき決定される。OGRは世界ランキングをもとにしており、男子は6月17日、女子は24日時点のランキングで決まる。開催国のフランスには男女各1名の出場枠があり、残り59名の出場枠を争う。出場権は上位15人の選手に与えられ(各国最大4選手で)、その後各国2人を上限に(上位15位までの選手を含む)、16位以降の選手から59人に達するまで選手が選ばれる。辞退した場合は再分配予備リストの公表がある。

ランキングは各選手が2年間で得たポイントの平均で決められ、直近13週間のポイントは100%で加算され、それ以前の91週間は1週間ごとに1.1%ずつポイントが減らされた状態で加算される。平均ポイントは、総獲得ポイント数をその期間に出場したトーナメント数で割って算出される。この分母の数(試合数)には試合数の少ないプレーヤーが有利にならないように制限があり、女子の場合は少なくとも35(1試合の出場でも35で割る)、男子の場合は最小で40、最大で52となる。

表彰式&メダルは格別

画像1: 代表選出のカギは“メジャー戦績”? 開催まで約2カ月に迫った「パリオリンピック2024」男子・女子ともに熾烈な代表争いに注目!

東京2020はコロナ禍でメダリスト全員マスク姿。金はザンダー・シャウフェレとネリー・コルダ、銀はローリー・サバティーニ(スロバキア)と稲見萌寧、銅はパン・チェンツェン(台湾)とリディア・コー

男子は世界で24のツアー、女子は11のツアーが対象。ポイントはフィールドの強さによって試合ごとに変わる。メジャー大会の勝者には100ポイント入るし、たとえば男子でいうと、各ツアーの23年の優勝者平均獲得ポイントは、PGAツアーが43.79、コーンフェリーツアーが12.57、DPワールド(欧州)ツアーが22.44、日本ツアーが6.67である。今回のデータは6月4日時点のもので、この後の対象試合は、米男子が3試合(全米オープン含む)、欧州男子が2試合、日本男子が3試合(ツアー選手権、日韓共催含む)、米女子が3試合(全米女子プロ含む)、日本女子が4試合。男女ともメジャーの結果が大きく反映しそうだ。

男女とも、世界ランク上位を占めるアメリカ勢が4名の枠を獲得できそうだし、日本は2番手争いがもっとも熾烈な国と言える。世界の男子ツアーに詳しい解説者の佐藤信人は、「男子は全米オープン終了後のランキングで決まる。久常くんはPGAが主戦場でポイントも高い。でも全米オープンには金谷くんも出場するので、まだまだわかりません。星野くん、中島くんは欧州ツアーが主戦場ですからPGAよりポイントはかなり低いですが、優勝したり2位に入れば……1試合1試合が大事です」。

日本男子オリンピックランキング(6月5日現在)
松山英樹●3.5426(159.41686/45)
中島啓太●1.4151(67.92607/48)
久常 涼●1.3133(68.29183/52)
星野陸也●1.1163(58.04974/52)
金谷拓実●1.0159(50.79498/50)

世界の女子ツアーに詳しい解説者のレックス倉本は、「アメリカでプレーしているほうが有利。世界ランキング上位選手が多いので、必然的にフィールドが強くなりポイントが大きくなる。もう1つ、日本女子は試合が多く、日本を主戦場にしている人は70近い分母になる。米女子の選手たちは50前後です。メジャーで同じポイントを獲得しても分母が少ないぶんだけ平均ポイントが大きくなる。畑岡さんなら2年間で52、山下さんは70 。古江さんは63出ているけど、笹生さんが50で岩井千怜さんが75。20近くも違う。そこで有利不利というのはあります」。

日本女子オリンピックランキング(6月5日現在)
笹生 優花●4.80(239.85/50)
畑岡 奈紗●3.43(178.53/52)
古江 彩佳●3.26(205.32/63)
山下美夢有●3.20(224.22/70)
竹田 麗央●2.23(151.49/68)
岩井 明愛●2.20(158.59/72)
岩井 千怜●2.12(158.84/75)

「オリンピアンの楽しみを感じる選手が多いんです」(佐藤信人)

日本は松山くんが出るとすればほぼ決まりで2番手争いが熾烈。今回の全米プロとDPワールドツアーの成績で中島くんと久常くんの世界ランクは5つ(ポイントは0・1)差になりました。久常くんはフランスオープンで勝ったコース、中島くんはプロ転向する前の世界アマで彼の実力からしたら不甲斐ない成績となりリベンジしたいコース。星野くんは東京五輪でオリンピックの雰囲気を味わい今度は有観客で本当の雰囲気を感じるためもう1回! という思い、金谷くんは東京で惜しくも次点となったので悔しい思いがあるはず。皆それぞれにアツい思いがあり、出たいと公言しているので楽しみです。松山くんも東京五輪で銅メダルのプレーオフで敗れた悔しさはあるでしょうし。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
1S・シェフラー(アメリカ)1
2X・シャウフェレ(アメリカ)2
3R・マキロイ(アイルランド)3
4W・クラーク(アメリカ)4
5V・ホブラン(ノルウェー)5
6L・アバーグ(スウェーデン)6
7J・ラーム(スペイン)7
8P・カントレー(アメリカ)8
9T・フロートウッド(イギリス)13
10松山英樹(日本)15
11M・フィッツパトリック(イギリス)17
12J・デイ(オーストラリア)20
13S・ストラカ(オーストリア)21
14M・パボン(フランス)22
15アン・ビョンフン(韓国)24
男子オリンピックランク1-15位(2024年6月5日現在)

アメリカは、シェフラーと全米プロで優勝した前回金メダリスト、シャウフェレは当確でしょう。2人とも五輪出場を明言。残り2枠は、その後に僅差で続くので、メジャーなどの結果で変わる可能性があります。シャウフェレは父が五輪を目指していたしフランスは父の半分の血の土地でもある。相当思いはあるはず。東京で銅メダルのプレーオフで敗れたモリカワも今度こそという思いでしょう。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
16トム・キム(韓国)26
17N・テイラー(カナダ)30
18S・ローリー(アイルランド)33
19ミンウ・リー(オーストラリア)37
20N・ホイガード(デンマーク)40
21S・イェーガー(ドイツ)41
22C・コナーズ(カナダ)49
23E・グリジョ(アルゼンチン)51
24T・デトリー(ベルギー)53
25A・ノレン(スウェーデン)54
26C・ベゾイデンハウト(南アフリカ)57
27R・フォックス(ニュージーランド)63
28E・ファンローエン(南アフリカ)65
29A・メロンク(ポーランド)69
30T・オーセン(デンマーク)79
男子オリンピックランク16-30位(2024年6月5日現在)

今回は、毎年欧州ツアーを開催する、また18年のライダーカップのコースでもあるので、欧州勢は思いが強いはず。マキロイは、リオは興味ない感じでしたが東京に出て「やっぱりすごい。これから先も出たい」と言っていましたし、母国開催のフランスはマチュー・パボンが当確で、2番手争いが熾烈。2番手のビクトル・ぺレスはPGAで戦っているし、3番手4番手のアントワン・ロズナーとロマン・ロンガスクは前回の東京五輪の代表でもあり絶対に出たいでしょうから、残りの試合は気合いが入っているでしょう。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
31中島啓太(日本)84
32J・ニーマン(チリ)90
33S・バリメキ(フィンランド)97
34A・トスティ(アルゼンチン)100
35V・ぺレス(フランス)109
36ユ・チュンアン(台湾)113
37D・プージ(スペイン)115
38M・シュミット(ドイツ)128
39パン・チェンツェン(台湾)137
40J・ラウテン(オランダ)141
41カール・ユアン(中国)146
42C・ビジェガス(コロンビア)166
43M・マナセロ(イタリア)171
44D・ヒラー(ニュージーランド)184
45A・シャサート(ベルギー)187
男子オリンピックランク31-45位(2024年6月5日現在)

韓国のトム・キムは兵役免除のためメダルが欲しいはず。昨年わざわざフランスオープンに出たのは下見だと思います。アン・ビョンフンも両親が五輪選手ですからアツい思いのはず。続くイム・ソンジェとキム・シウは、東京五輪に兵役免除のため全英をスルーしてまで出て結果が出ませんでしたが、昨年のアジア大会で優勝し目的は達成。これがどう気持ちに影響しているか。最近活躍する選手が多いカナダも超激戦。ニック・テイラー、アダム・ハドウィン、コーリー・コナーズ、テイラー・ペントリス、マッケンジー・ヒューズ、アダム・スベンソンまでは可能性アリ。彼らは今年、母国開催のプレジデンツカップに一番モチベーションがあるでしょうが五輪人気の高い国ですからね。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
46G・ミリオッツィ(イタリア)207
47S・シャルマ(インド)214
48R・カンボス(プエルトリコ)221
49C・オルティス(メキシコ)229
50K・アフィバーンラト(タイ)232
51C・デルソラール(チリ)237
52G・グリーン(マレーシア)239
53D・バンドリール(オランダ)244
54G・ブラー(インド)258
55P・コンワットマイ(タイ)271
56A・アンサー(メキシコ)283
57N・エチェバリア(コロンビア)286
58F・サノッティ(パラグアイ)304
59K・ベンチュラ(ノルウェー)309
60ドウ・ズーチェン(中国)320
男子オリンピックランク46-60位(2024年6月5日現在)

コースは広くない。ラフが深くて、池が多くてとにかく難しいコースだと皆言います。設計者はロバート・ボン・ヘギーで、西那須野CCやホウライCCと同じで、正確性が求められます。

オリンピック種目としてのゴルフの位置付けは、日本で感じているより欧米ではすごく高いです。リオは期待されていませんでしたが視聴率がマスターズに次いでよかったですし、現在もNBCが一生懸命、普段のPGAの中継で五輪のことを口にしています。

アダム・スコットなど一部の選手は欠場を表明していますけど、選手も熱は高い。自分がオリンピアンになって、オリンピックの内側に入ることが特別で幸せだという意識が高いんです。選手村にあえて泊まる人も多い。他の種目のアスリートと交流を持てて、命がけで取り組んでいる姿を見てインスパイアされたり元気をもらえるということもあるようです。ゴルフ会場に応援にきてくれたとSNSなどで発信したり。僕もリオ五輪のとき、解説者同士の交流でもそう思いました。今回もまた解説で行くのでそのへんも楽しみです。

パリの街は五輪の装いに

画像2: 代表選出のカギは“メジャー戦績”? 開催まで約2カ月に迫った「パリオリンピック2024」男子・女子ともに熾烈な代表争いに注目!

パリの街には、いたるところにオリンピックフラッグ、協賛企業の広告などが飾られている。ル・ゴルフナショナルはヴェルサイユ宮殿から車で数分の場所にある

「韓国は出場人数を増やすことも目標でしょうね」(レックス倉本)

今年は例年になく熾烈な争い。若手も出てきているし、今回3回目ということもありオリンピック自体がより浸透し始めて皆興味を持ち始めたというのもあります。名誉なものととらえて、オリンピアンになりたいと公言する選手が増えていますよね。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
1N・コルダ(アメリカ)1
2L・ヴ(アメリカ)2
3C・ブティエ(フランス)3
4イン・ルオニン(中国)4
5H・グリーン(オーストラリア)5
6笹生優花(日本)6
7コ・ジンヨン(韓国)7
8R・ジャン(アメリカ)8
9C・ハル(イギリス)9
10ミンジー・リー(オーストラリア)10
11キム・ヒョージュ(韓国)11
12A・ティティクル(タイ)12
13リン・シユ(中国)13
14B・ヘンダーソン(カナダ)14
15L・コー(ニュージーランド)15
女子オリンピックランク1-15位(2024年6月5日現在)

日本女子は、笹生さんがほぼ当確で、その次は畑岡さん、古江さんと続きます。全米女子オープン優勝というのはもちろん、大きいのですが、笹生さんは分母が少ないのもジャンプアップの理由です。大きい試合も強いですしね。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
16M・スターク(スウェーデン)17
17畑岡奈紗(日本)19
18P・タバタナキット(タイ)26
19C・シガンダ(スペイン)29
20L・マグワイア(アイルランド)31
21L・グラント(スウェーデン)32
22G・ホール(イギリス)34
23A・ブハイ(南アフリカ)38
24A・フォルスターリング(ドイツ)55
25A・アショク(インド)56
26G・ロペス(メキシコ)62
27E・ヘンセレイト(ドイツ)67
28A・バレンズエラ(スイス)69
29P・デラコワ(フランス)76
30E・ぺダーセン(デンマーク)85
女子オリンピックランク16-30位(2024年6月5日現在)

アメリカは、前回金メダリストで今絶好調のコルダは決まりで、4人出るでしょうね。リリア・ヴは25歳の苦労人。今年は背中を痛めているのでそこは心配です。3番手のローズ・ジャンは期待の新星。ツアーに本格参戦1年目だから分母が26なんです。メーガン・カンは中堅どころでステディなゲームをする。コンスタントに成績はいいだろうし、次のアリソン・リーは昨年大復活したので勢いはあるし、人気もあるので、まだまだわかりません。母国開催のフランスのセリーヌ・ブティエは、ショットも正確性がすごくあって、飛ぶようにもなったしショートゲームが上手い。開催コースを得意にしています。コースはインランドリンクスタイプで、地面は硬く、池も絡んでくる難しくセッティングできます。風も吹いてきたらより難しくなると思います。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
31チェン・ペイユン(台湾)90
32A・バンダム(オランダ)96
33A・ムニョス(スペイン)100
34N・K・マドセン(デンマーク)105
35B・パクダンガナン(フィリピン)118
36S・メドウ(アイルランド)120
37M・メトロー(スイス)143
38M・デローイ(ベルギー)155
39D・ダガー(インド)163
40W・チャイエン(台湾)166
41K・スピルコバ(チェコ)175
42C・ボルゲ(ノルウェー)180
43M・ユリベ(コロンビア)181
44E・スピッツ(オーストリア)183
45M・ファッシ(メキシコ)200
女子オリンピックランク31-45位(2024年6月5日現在)

最近増えている中国選手のイン・ルオニンとリン・シユ、オーストラリアのハンナ・グリーンとミンジー・リー、イギリスとの仲良しチャーリー・ハルとジョージア・ホールはほぼ決まりでしょう。争いが熾烈なのはタイ。アタヤ・ティティクルとパティ・タバタナキット、チャネッテ・ワナセンの若手と、次ぐ中堅のアリヤ・ジュタヌガーンの戦い。スウェーデンは1番手が負けん気の強いマヤ・スタークですが、飛ばし屋のリン・グラント、マデリン・サグストロムも1発ボンとくる可能性はある。

オリンピックランク名前(国籍)世界ランク
46S・タン(シンガポール)201
47P・リト(南アフリカ)209
48A・ファナリ(イタリア)215
49A・ラウ(マレーシア)253
50A・シャープ(カナダ)267
51S・コウスコパ(チェコ)272
52A・ベラック(スロベニア)279
53モモカ・コボリ(ニュージーランド)283
54M・スタブナー(ノルウェー)294
55D・アルディナ(フィリピン)295
56D・ウェバー(オランダ)300
57I・ラクラレック(モロッコ)307
58S・ショパー(オーストリア)316
59D・ダルケア(エクアドル)317
60N・オーン(マレーシア)319
女子オリンピックランク46-60位(2024年6月5日現在)

韓国はいま、コ・ジンヨンとキム・ヒョージュですが、エイミー・ヤンと申ジエが続きます。これまで4人出ていたので、ここから何人15位以内に入れるか、出場人数を増やす戦いでもある。韓国勢のメジャーの戦いぶりも見どころです。そういう意味では日本勢も頑張って3人、入ってほしいですね。

撮影/姉崎正、BlueSkyPhotos、有原裕晶
※週刊ゴルフダイジェスト2024年6月11日号より抜粋し、一部加筆しています。

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